異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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一の巻「空にそびえる異世界の城」
第一話 驚異の勇者誕生!?


 夜の電車。

 遅くまで塾で勉強して、コンビニ寄った後に家に帰る。

 流石にこの時間なら座るのもそう難しくはない。かばんを膝の上に置いて大あくびを一つ。

 

「・・・あれ?」

 

 その瞬間、俺は異世界にいた。

 

「痛っ!」

 

 座っていた座席が無くなり、しりもちを突く。

 その時、自分がいるのが石床の上に描かれた光る紋様・・・いわゆる魔法陣の上であることに気付いた。

 

「え・・・あ?」

 

 そして数メートル離れたところにいたのは、俺と同じように魔法陣の上でしりもちを突いている俺と同じ高校生くらいのイケメンの兄ちゃん。

 服装はだぼだぼのパジャマ、手にはスマホ。

 

(もう寝られるのか。いいなあ)

 

 そんなことを考えていると目が合った。

 互いに何かを言おうとして、ボハボハボハと――何と言うか、豚とカバの鳴き声を掛け合わせたような?――笑い声。二人揃って正面を向く。

 

「やったワッ! 成功ヨ! ワタシの理論は正しかったワッ!」

「「・・・・・・」」

 

 俺達は揃って絶句していた。

 石造りの大きな広間、一方には金や宝石でキラキラ光る豪華な玉座があり、王様っぽい人が座っている。

 しかし俺達が絶句したのは王様や玉座ではなく、その隣でボハボハ笑っている物体だった。

 

「見タ、陛下!? 紛れもなくオリジナル冒険者族ヨッ! それもいっぺんに二人ッ! 大成功だワッ!」

 

 それは人間と言うには 余りにも肉肉しかった

 大きく 丸く 重く そして大雑把すぎた

 それはまさに肉塊だった

 

「・・・なんて言ってる場合じゃねえよ!?」

 

 端的に言い直そう。それは多分人間だった。

 ただしぜい肉の塊というかぜい肉だけでできたような姿で、直径は2メートルほど、体重はたぶん500キロから一トンくらい。

 顔と腕は何とか確認できるが、足は垂れ下がった脂肪に隠れて見えない。

 それが魔法の円盤というか反重力マシンみたいなものに乗って、玉座の王様の横にふよふよ浮いているのだ。

 

「おほん」

 

 それを呆然と見ていた俺達の意識を、王様の咳払いが現実に呼び戻した。

 

「よくぞ来てくれた異世界の勇者たちよ。その力を今、我らに貸して貰いたい」

「「・・・・・・」」

 

 俺達はもう一度顔を見合わせた。

 

 

 

「~~~~」

 

 なんかえらそうな大神官みたいなおじいちゃんが呪文を唱えながら俺達に手をかざしてる。

 なんでも《加護》とかいう異世界スキルみたいなものを調べてるらしい。

 取りあえず椅子を用意され、それぞれに座って俺達は王様の話を聞いていた。

 

「我が国は今邪悪な魔族との戦いの渦中にあり、民は苦しんでおる。お主らの力を是非借りたいのじゃ」

「わかりました、僕の力でお役に立てるなら」

「えっ」

 

 思わず横を振り向く俺。

 隣のイケメンくんはあくまで真剣な顔で頷いていた。

 視線に気がついて、イケメンくんがこちらを向く。

 

「人によるとは思うけど・・・困ってる人達がいて、それを助けられるなら僕はそうしたいと思う」

「うおっまぶしっ!」

 

 思わず目をそらしてしまった。

 こいつ顔だけじゃなくて魂もイケメンだよ!

 でもどうかなあ、ちょっとうさんくさい気もするんだけど・・・。

 そんなことを考えていると、おじいちゃんが頷いて俺達から離れた。

 

「お喜び下さい、陛下。カオル殿の《加護》は《魔剣の加護》にございます。古今東西のあらゆる魔剣を召喚し、その力を我が物とすることができましょう」

「なんと!」

 

 大喜びする王様。ちなみにカオルってのはイケメンくんの名前だ。立花薫。俺より背が高いしイケメンだし頭良さそうだし《加護》とやらも何かすごくつよそう。

 なお俺は弾隼人。何か主人公っぽい名前だが、どっからどう見ても凡人・ザ・凡人である。

 世の中ってのは不公平なもんだ。

 それはともかくカオルが首をかしげる。

 

「魔剣の召喚ですか、それはどういう・・・」

「そうですな、手を伸ばして強く念じて見て下され・・・そうですな、試しに『サンダースウォード』と」

「うーん・・・サンダースウォード!」

 

 カオルが半信半疑で呟いたその瞬間、広間に雷鳴が轟いた。

 稲光と共にその手に現れたのは、黄金に彩られた漆黒の剣。

 大広間を照らす魔法の光にも負けないほど強く、剣は光り輝いている。

 

「サンダースウォードが!」

「黒騎士姫の剣だ!」

 

 大広間の兵士達は大騒ぎだし、王様はもうテンション絶頂の大喜びだ。

 

「素晴らしい! 素晴らしいぞ! それで、ハヤトの《加護》はなんなのじゃ?」

「は、それが・・・」

 

 口ごもる大神官のおじいちゃん。

 

「どうした! 申せ!」

「その、《ロボットアニメの加護》と・・・」

「は?」

「は?」

「はああああああ!?」

 

 王様と、カオルと、俺。一番声が大きかったのは俺だった。

 

「何故!? カオルがメッチャかっこいい《魔剣の加護》で俺が《ロボットアニメの加護》なのよ!? いや好きだけどさあ!」

 

 今時ロボットアニメもないだろうと思うが、親父がオタクで子供の頃から洗脳されてしまったのである。それはともかく。

 

「い、いやまだだ・・・マシン・オン!」

 

 手を伸ばし、ロボットアニメジャンルの元祖にして俺の一番好きな作品、「神魔鉄人デモゴディΣ(シグマ)」の出撃シーンのセリフを叫んでみる。

 カオルが魔剣を召喚出来たんだし、俺もひょっとしたらデモゴディを・・・

 

『天にそびえる くろがね巨人 ウルトラロボット デモゴディΣ・・・♪』

 

 空中にぱっと開いたのはSFであるような半透明の平面モニター。

 そこに映し出されているのはまぎれもない、「神魔鉄人デモゴディΣ」のオープニングだ。

 兵士達はどよめいているが、王様と大神官はかくーんと顎を落としている。

 

「「・・・」」

「その・・・気を落とさないでね?」

「・・・」

 

 困ったような笑顔で俺を慰めてくれるカオル。

 

『マシンオン! マシンオン! デ・モ・ゴ・ディ・Σ!』

 

 俺はそれに返す言葉もなく、大広間にはデモゴディの勇ましい主題歌だけが流れていた。

 

 

 

『くっ、こうなったら超雷轟剣を使うしか・・・』

『やめろ! あれはまだ試作品なんだぞ!』

 

「・・・」

 

 一ヶ月後。

 カオルが歓声の中、魔族との戦いに出陣していた時、俺は部屋に閉じこもりロボットアニメを見ていた。

 カルト作品『鉄鋼巨将S-ONE-VINE(ソンヴァイン)』。

 

『超雷轟剣が爆発しない可能性は1%! ならば俺はその1%に賭ける!』

 

 ヤシガニ怪獣との戦いで必殺剣を失ったソンヴァインが危険を覚悟して新兵器を繰り出す燃える展開で、人気の高いエピソードだ。

 その燃える展開を死んだ目で見ている俺。

 

 ――結局、俺の《加護》はロボットアニメをいつでもどこでも見られると言う、ただそれだけの代物だった。

 巨大ロボットを呼び出すこともできないし、一部の作品の登場人物みたいな超人的能力を発揮できるわけでもない。

 せいぜい人を楽しませるくらいだろう。

 ノックの音がした。

 

「勇者ハヤトさま。お時間でございます」

「・・・ああ」

 

 映像を消し、立ち上がる。

 呼びに来た兵士の後に従い、廊下を歩き始めた。

 元の世界に戻して貰うためだ。

 

 まあ剣も魔法もだめ、《加護》もだめとなったらそうなるだろうな。

 この一ヶ月、召喚された修道院で訓練を受けていたが、俺は両方とも駄目駄目だったのだ。

 むしろ一ヶ月で両方身につけたあいつ(カオル)がおかしい。

 

(いざ帰るとなると名残惜しいな)

 

 何の役にも立たなかったけど、折角の異世界召喚で、折角の勇者なのだ。

 どうせなら活躍してみたかった気持ちは否定できない。

 帰ったところでまた受験勉強が始まるだけだし。

 

(まあ、もう終わったことだ)

 

 修道院の広間に入る。

 初日に見たように王様が玉座に座っていた。

 

「来たか、勇者ハヤトよ」

「どうも」

 

 進み出て、ぺこりと頭を下げる。

 その瞬間、ガツンと来た。

 

「!?」

 

 後頭部に衝撃。

 後ろの兵士に槍で殴られたんだと理解する間もなく、俺は前のめりに倒れてそのまま取り押さえられた。

 

「な、何が・・・」

「この役立たずめ! あの肉達磨に高い金を払って呼び出したのに何だそのザマは!

 剣もダメ魔法の才能もない、オリジナル冒険者族なら持っているはずの強力な《加護》もない! このできそこないめが!」

「・・・」

 

 王様の罵倒。

 そもそもお前らが勝手に呼び出したんだろうという言葉は出てこない。

 しばしの沈黙の後、代わりに出てきたのは懇願だった。

 

「だったら元の世界に戻してくれよ・・・俺だってこんな世界にいたくない・・・」

「ばかめ。そんな方法など、元からありはせん」

「・・・え?」

 

 多分この時の俺は、人生で一番愕然とした表情をしていたと思う。

 

「だ、だって、魔族を倒したら帰してくれるって・・・カオルだってその条件で・・・」

「あんな便利な道具を手放すわけがなかろう。使い道などいくらでもあるし、人を従わせる方法もいくらでもある」

 

 その時気付いた。

 俺達がこっちの世界に来た時にあった魔法陣っぽい物が今はない。

 

「じゃあ、本当に・・・」

「だがわしは慈悲深い。お前は一足先に自分のつまらぬ世界に帰るがいい」

「え?」

 

 混乱する俺。その表情を見て、王様はニヤリと笑った。

 

「魂になれば、運が良くば元の世界に戻れるだろうて。《慈悲の法廷》で霊魂の神(スィーリ)に懇願してみるがよいぞ」

「・・・!」

 

 俺を押さえつけてる兵士達とは違う、えらそうな騎士が剣を抜いて俺の方に近寄ってきた。

 

「嫌だ! 死ぬのは嫌だ! ・・・がっ!」

 

 もがく俺の後頭部を兵士達が殴り倒す。

 

「ははははは、無様よのう! 無駄金を払った溜飲が多少は下がるというものよ!」

 

 ゲラゲラ笑う王様。無表情で近づいてくる騎士。無言でまた俺を殴る兵士。

 痺れる頭の中で思考が走る。

 

(俺ここで死ぬのか? こんな目に会わされて? 何も出来ずに?)

 

 騎士が剣を振り上げる。

 

「いやだ!」

 

 声が出た瞬間、何かがはじけた。

 俺を押さえつけていた兵士達、剣を振り上げた騎士が吹き飛ばされる。

 王様が目を見開いて俺を見上げている。

 その視線は自身の遥か頭上、大広間の天井近く。

 

『これは・・・!』

 

 金属製の巨体。それが自分の今の肉体。

 手足しか見えないが間違いない。何度も見た、何度も夢見た鋼鉄の巨体。

 デモゴディΣ。

 

 拳を握り、軽く右手を振るう。

 大広間の壁が積み木細工のように砕け、石が降り注いで兵士達が逃げ惑った。

 

『動く! デモゴディの手が俺の手のように! 俺は今デモゴディになったのだ!』

 

 思わず叫んでしまったが、高揚感に包まれる俺を誰も否定できまい。

 そこで足元の王様に気付いた。

 玉座から滑り落ちて腰を抜かしている。

 俺が見下ろしているのに気付くと、笑みを浮かべて両手を広げた。

 だが、今の俺の「目」にはその笑みがこわばってるのと、こめかみに冷や汗が浮かんでいるのが見える。

 

「いやあ、すばらしい! お前を呼んだワシの目に狂いはなかった、勇者ハヤトよ!」

『・・・』

 

 憧れの巨大ロボになった高揚感がすっと消えていく。

 

「最初からわしにはわかっていた! 今までの事もお前の力を引き出すための試練だったのじゃ! お前はワシに感謝すべきじゃぞ! これほどの力を与えてやったのじゃからな!」

『・・・』

 

 バチバチッ、と火花が散った。

 俺の体が帯電している。

 心が怒りに支配されていく。

 

「そうじゃ、その力ならば邪魔な魚人どもなど一網打尽じゃ! これでセリス海の利権は我が国の物に・・・」

 

 そこで何かがぶつりと切れた。

 

『ふざけるな・・・ふざけるなよ! 俺を殺そうとして! カオルをいいようにだまして! 国を滅ぼす魔族なんていうのもデタラメだったんだな!』

 

 鋼鉄の咆哮が轟く。それが自分の口、デモゴディの口から出た物だとはその時は気付かなかった。

 

「ひ、ひいいいいいいいい!」

 

 調子に乗って立ち上がっていた王が再び腰を抜かしてへたり込む。

 

「ま、待て! 頼む、助けてくれ! ワシは、ワシは死にたく・・・!」

 

 悲鳴を上げて必死の命乞いをする王。

 俺の記憶はそこで途切れた。

 

 

 

「・・・知らない青空だ」

 

 気がつくと、どこかの廃墟の中で寝転んでいた。

 石畳の残骸のような物があり、周囲には元は壁や柱だったんだろうなと思われる石塊がごろごろしている。

 

「あれ? あれ? あれれれー?」

 

 違う。どこかの廃墟じゃない。

 高い山の頂上、ふもとの方にはここ一ヶ月見慣れてしまったお城と城下町。

 

「ここ修道院の広間だー!?」

 

 さっきまでいた場所だと気付いて絶叫する。

 右を見ても左を見ても残骸ばかり。王様も、騎士も、兵士達も影も形も無い。

 お城と城下町に被害が及んでなさそうなのがせめてもの救いか。

 けど(多分)俺がここを吹っ飛ばしてしまったのは間違いないわけで・・・

 

「どうしよう、これ」

 

 呆然と俺は呟いた。




初めましての人は初めまして、
お久しぶりの人はお久しぶりです。
ケ・セラ・セラです。

前作の後新しいのを十万字ほど書いてみたのですがどうもしっくり来ず、全破棄して新しく書いてみました。
ご笑覧下さればもっけの幸い。
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