異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第十話 ブルー・レイン

「国王陛下暗殺未遂犯である!」

「大変危険な人物ゆえ、見かけたら近づかず、すぐに屯所に知らせるように!」

 

 カオルくんの部下?の兵士達が立て札を立てて大声を張り上げている。

 やべえ! 野次馬の顔を改めながらこっちに来る!

 服装こそこっちの世界のものだが、こんな事になるなんて思わなかったから、変装も何もしてない!

 

「ど、どうするの? あたしがハヤトのことをポイって街の外まで放り投げる!?」

「と、鳥さんたちにお願いして騒ぎを起こしてる間に逃げるとか・・・!」

 

 小声で相談するアルテとリタだが、彼女らもいきなりのことで冷静さを失っているのがわかる。特にアルテ、数百メートルも投げられたら着地するときに人は死ぬからね?

 

「・・・・!」

「え、どうしたの?」

 

 いきなりしゃがむ俺。

 これからやることをなるべく気付かれないようにするためだ。

 

「・・・!?」

 

 短い時間の後、さっと立ち上がると、アルテとリタが揃って目を丸くした。

 

 

 

「知ってるものはおらんか? 隠すとためにならんぞ・・・おお?」

「どうしたんだい軍曹・・・へえ」

 

 こちらを見て目を見開く兵士の人と、ちょっと感心した顔のカオルくん。

 口笛を吹いている兵もいる。

 

「知りませんねえ。プルフィールドから西にずっと渡ってきましたけど、そんな人は見覚えありませんよ。あ、ハスキー一座、明日より町外れにて公演予定ですので、よろしければごひいきに」

 

 俺の喉から出てくるのはハスキーな女性の声。

 外見も紫色のロングヘアのスマートな成人女性、ピンク色の肩スカーフとレオタードみたいな青の上下という、ビジュアル系バンドの女性ボーカルみたいな恰好になっている。自分で言うのもなんだが美人だ。

 

 「創世機動兵ワスピーダー」。

 バイクから変形するパワードスーツと飛行機から変形するロボを主役メカに、人類と異星人との戦争の中で繰り広げられる様々な人間ドラマを描いた作品だが、その中に「ヤマブキ」というキャラクターが登場する。

 軍人で絶世の美青年なのだが、異星人の占領地での軍人狩りを避ける為に女装し歌手として各地をさすらう。女装している間は女性声優が声を当てているのだ(歌も)。

 

 日本のアニメでは割とギャグにされがちな女装ネタだが、この作品ではやたらガチである。

 アニメ雑誌の人気投票で、男なのに女性部門で上位に食い込んだと言うからパねぇ(本当)。

 

 ともかくそれを思い出して咄嗟に《加護》で変装・・・変身?したというわけだ。

 どうもこの《加護》、できるかできないかが単純に「使うエネルギーの量」で決まるらしく、巨大ロボに変身するような事は難易度が高く、アニメを映したり水を出したりするようなことは難易度が低い。

 今回のこれも(設定上は)ただの変装なのでぶっつけ本番でも成功したのだろう。顔立ちや骨格は女性(のど仏もない)になってるが、服の下は男のままだし。

 

 閑話休題(それはさておき)

 

 服装に日本っぽさを感じたのか、カオルくんが興味深げに馬上から身を乗り出してくる。

 

「へえ、芸人さんか。歌手のひと?」

「いえ、魔術師ですよ。オリジナル冒険者族ホッチョ・ペッパーの大魔術! めくるめく神秘の世界をお見せいたしましょう!」

 

 大げさに一礼してみせるが、正直内心はどっきんバグバグタイプレッドって感じだ。

 何せこちらは国王暗殺犯のテロリスト、見破られたら即逮捕拘留からの処刑間違いなしぞ!

 ん? さっき暗殺未遂犯って言ってなかった?

 そんな俺の内心はお構いなしにカオルくんがすげえ驚いてる。

 

「オリジナル冒険者族? キミが!? というかホッチョ・ペッパーってなにさ!」

 

 あ、オリジナル冒険者族なんつったら驚かれるか、そりゃそうか。

 隣の軍曹さん?が苦笑して首を振った。

 

「あー、勇者様。もちろん勇者様みたいな本物は滅多にいらっしゃいませんが、芸人の一座にはこういう『オリジナル冒険者族』がちょこちょこいるんですよ。

 盛り場を回っていると年に一回か二回は見ます。そう言うことだろ、姉ちゃん?」

「さて、ご想像にお任せしましょう。とは言え私の魔術は本物ですよ?」

 

 笑みを浮かべて肩をすくめて見せる。

 なお何か凄い場慣れてるように見えるが、アニメ本編で似たような展開があっただけの話である。そうでなきゃこんなやりとりができるもんかい。自分で言ってて情けないが。

 

「ああそういう・・・」

 

 納得したのか、軍曹さんと同じような苦笑を浮かべるカオルくん。

 

「ともかく彼を見つけたら、手出しをせずに僕達に知らせてくれ。報奨金も出るからね」

 

 手渡してくれたのは粗末な印刷っぽい、俺の似顔絵と特徴を描いた紙。

 しばしそれを見つめてから馬上を仰ぎ見る。

 

「そんなに危険な人なんですか?」

 

 悩ましそうに首を振るカオルくん。

 

「違う・・・と僕は思うんだけどね。ともかく会って話を聞いてみないことには始まらない。よろしく頼むよ」

 

 それじゃ、と言ってカオルくんたちは去っていった。

 手を振ってそれを見送ると、逆方向に歩く。

 そして次の角で路地に入り、表通りから見えなくなると、俺は地面にへたり込んだ。

 

「あ~~~~、緊張した・・・! ほんとマジで緊張で死ぬかと思った!」

「よしよし、がんばったがんばった」

「えらいえらい」

 

 苦笑しつつアルテとリタが頭と背中を撫でてくれる。

 とはいうものの俺は緊張の糸がぶっつり切れてしまい、しばらく立ち上がれなかった。

 

 

 

「・・・で、どしよっか」

 

 何とか再起動を果たして立ち上がったはいいが、まだ頭がうまく働いてくれない。

 今の一幕はそれくらい衝撃的だった。

 ちなみにまだ女装姿である。

 

「とりあえずみんなの所に戻ろう。みんなと相談しないといけないよこれ」

「うん・・・」

 

 アルテの発言に残念そうな顔をするリタ。その頭を今度は俺がなでてやった。

 

「カオルくんたちがいなくなったらまた遊びに来よう。取りあえずは屋台の物片っ端から買って帰ろうぜ」

「・・・うん!」

 

 リタが嬉しそうに頷いた。

 

 

 

 野営地に帰るとみんなが滅茶苦茶驚いていた。

 カオルくんの話をするとこれもやっぱり驚いていた。

 

「しかし、国王暗殺犯じゃなくて暗殺未遂犯かい?」

「あ、やっぱりそこ引っかかりますか」

「話を聞く限り、生き残れる状況ではあるまいが・・・魔法やら何やらがあれば不可能ではないからの。何とも言えん」

「ですか」

 

 溜息をつく。まあシルヴィアさんやペトロワ師匠にわからない物が俺にわかるとは思えん。

 ・・・ちょっと待って。何でアーベルさんこっち見て鼻の下伸ばしてるんですか。

 

「いやー、いい女だからさあ・・・ハヤトちゃん、いっそずっとそのままでいない?」

 

 ぞぞっ、と背筋に悪寒が走る。

 思わずアルテの後ろに隠れると、アルテがアーベルさんを睨みつけた。

 

「アーベル! ハヤトをいやらしい目で見ない!」

 

 やだ、この子すごく頼りになる・・・! 胸キュンしちゃう!

 

「まあ、ずっとかどうかはともかく、しばらくはそのままでいた方が良かろうの」

「見かけだけでも女の方が客受けもいいしねー!」

 

 シルヴィアさんがケラケラ笑って酒をあおった。




ブルー・レインは機動創世記モスピーダのED。
くだんのヤマブキのモデルであるイエローさんが作中で歌ってます。
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