異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
第二十九話 宝島
「天国なんてあるのかな」
――ガンダムX――
プロペラと風の音。
どこまでも広がる青い海と、わずかにカーブした水平線。
(ああ、やっぱり地球は丸いんだな)
そんな感慨を抱きながらも、俺は超視覚センサーで彼方を睥睨する。
今俺がいるのは高度3500m、富士山よりちょっと低いくらい。
遥か足元には南に向かって航海中の「ケリュネイアの牝鹿」号。
これまでにも何度かやっているが、俺はミストヴォルグの飛行能力と超視覚センサーを用い、超高空から偵察していた。
何しろ船から見えるのは高さ30mのマストの上からでもせいぜい20km。
対してこの高さからなら200km以上を一望できる。
高度な魔法でも使わない限り、海上での情報戦においては絶対的なアドバンテージだ。
「・・・ビンゴ」
180kmほど先の島。その沖合に赤いサソリの帆の船があった。
「船は地図の島のこのあたりにいました。帆は畳んでました。さすがにサソリキング(仮)がいるかどうかはこの距離だとわかりません」
ただいま作戦会議中。
俺の持ってきた情報を聞き、船長たちの視線が地図に集中する。
「お宝はこのしるしの部分なんだよね? じゃあ裏側から回って、奴らの見えない場所に上陸するのがいいんじゃないかねぇ」
「うーん・・・それでもいいと思うんですけど、時間はどれくらいかかります? 結構ぐるりと回っていかないといけないんじゃ?」
「奴らに見えないようにとなると・・・風呼び連中のケツを蹴り上げて半日くらいかな」
うむう、とちょっと考え込む。島自体はそこまで大きくはないが、サソリキングみたいなフィジカルお化けがいたらあっという間に踏破されそうだ。
風呼び12人という過剰戦力を抱えた今の「牝鹿」号は最高20ノット、時速で言うと36km。
まっすぐ180kmならほぼ五時間だ。普通の帆船ならこの四倍から五倍はかかるので十分常識外の速度なのだが、それでもスクリュー船のようには行かない。
「俺が透明になって先行した方がいいでしょうか?」
「でも一人だと危ないよ!」
反対したのはリタ。
何しろ彼女はサソリキングのとんでもなさを俺と一緒に目の当たりにしている。心配するのも当然といえた。
「わかってるけど、今回は大詰めなんだ。ここを逃したらリタのお母さんを助けられない」
「お兄ちゃん・・・」
リタを抱きしめておでこにキス。
船長が口笛を吹いた。
「行ってくる」
「うん・・・無事で帰ってきてね」
ひざまずく俺と視線を交わすリタ。
「何を姫君に仕える騎士みたいな空気出してるでチュか」
「最近チョーシ乗ってるでチュ」
「チョーシ乗ってる奴と嘘つきは何より嫌いでチュ!」
うるせえな、この畜生ども! いいシーンなんだから邪魔すんなよ!
後、少なくとも今はリタに仕える正式な騎士だよ!
プロペラの音と共に空中を駆ける。
本来ヘリのプロペラというのはもの凄くうるさいらしいのだが、ミストヴォルグは忍者ロボだけあって、ヘリの方もステルス静音ヘリらしい。どういう理屈かよくわからないけど。
俺は雰囲気でロボットアニメをやっている――!
長距離をミストヴォルグヘリで飛ぶのは久しぶりなので気付かなかったが、なんかメッチャ早くなってる。前は時速百キロかそこらだったが、体感で倍くらい速度がでてる気がする。
吸血クソ野郎ルイスくんから「天国と地獄」したヴィラン・コアのおかげだろう。
実にRPGっぽいな!
そんなことを考えつつ、俺はなるべく見つからないように海面スレスレを飛ぶ。
一時間経たず、俺は島に到着した。
「・・・おかしいな?」
光学迷彩をまとって島に侵入し、なるべく山の陰になるように飛行。
途中サソリキングやその手下と出会うこともなく、無事宝の場所・・・金のリンゴの成る魔法の木の場所についたのだが・・・。
「枯れてるじゃん!?」
島の中央にそびえる山。
そのてっぺんの開けた平地には巨大な木があったが既に枯れていた。
そりゃもう、素人の俺でもわかるくらい見事に。
「これをどうにかすればまた金のリンゴが生えるのか? それとも本当に枯れちゃったのか?」
そもそも金のリンゴ自体伝説の中の話だからなあ・・・ペトロワ師匠がいればなんか調べてくれるだろうけど、魔女さんは遠い海の向こうだからどうしようもない。
取りあえず俺はサソリキングたちが現れる事を警戒して、近くの岩の影に隠れた。
「誰も、通らない」
などと、チーキュに来た宇宙ポリスマンみたいな事を言ってみるが、誰からも返事は返ってこない。
六時間後。
日が沈んだがサソリキングもその手下も、もちろんリタや船長たちもこなかった。
「・・・合流するか」
六時間が過ぎたら島の裏側の停泊地点で合流するよう、あらかじめ申し合わせてある。
俺は諦めて光学迷彩を発動させると、プロペラを回転させて空に飛び上がった。
「さて、向こうの方は・・・むぐっ!?」
一瞬心臓が止まるかと思った。
停泊している船にボートが近づいて行く。
そこにサソリキングが乗っていた。
夜で数キロ先でも間違いない。巨体と筋肉の張り詰め方は、あのサソリキング以外の何者でもない。
「まさか、もう黄金のリンゴを手に入れたのか!?」
そのまましばらく観察していたが、船上は静かなままだった。
リンゴを手に入れたとしたらすぐ出港するはずだが、船長の船で何度も見た、出港前後の慌ただしさが全く感じられない。
「リンゴを手に入れていないか・・・あるいは出港できない理由がある?」
どちらにせよ、手遅れと言う事はなさそうだ。
僅かに安堵しつつ、俺は合流地点に飛んだ。