異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第三十七話 サソリの王

 島の北側。

 入り江に赤いセルケティスの船が停泊している。

 サソリの帆、赤い船体、各所にサソリの意匠を施したそれは、俯瞰で見るとディフォルメした赤いサソリに見えなくもない。

 

「・・・陛下達うまくやってるかな」

「大丈夫だろ。陛下が負けるわきゃねえ。きっともうすぐ生命の実を・・・まて、あれはなんだ?」

 

 見張りの兵士達が思わず立ち上がる。

 山の方から飛んできたのは黒い雲のような何か。

 近づくにつれ、それがサソリのような形であること、そしてその中央にセルケティスの顔が浮かんでいることに兵士達は気付く。

 

「せ、セルケティス様!?」

『生命の果実は・・・いまだ我が手に入らぬ。お前達の力を私に捧げよ・・・』

「・・・」

 

 普段の兵士達なら一も二もなく従っていただろう。

 だが今のセルケティスには、普段の彼にすらなかった人ならざる何かの恐怖がまとわりついていた。

 

「え・・・!?」

 

 そして気付いたものが一人、そして二人。驚愕はさざめきのように広がる。

 

「おい、あれ・・・クメト様じゃないか?」

「あっちはバスティスだ!」

 

 黒い雲のサソリに浮かんでいる顔はセルケティスだけではなかった。

 セルケティスと共に出発したはずの精鋭部隊の顔が、苦悶と共に浮かんでいる。

 

『こやつらは我を裏切って逃亡した・・・お前達も、栄誉ある我が使命の礎となるがよい』

「うわ、うわ、うわああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 入り江に百を越す絶叫が響く。

 それはしばらく続いた後、唐突にやんだ。

 

 

 

「あいててて・・・何も本気で殴ることないじゃんか」

 

 殴られてボコボコに腫れ上がった顔。

 傷薬を飲みながら、俺はみんなと一緒に洞窟を下っていた。

 

「知らないね」

 

 つーん、とそっぽを向くカオルくん。

 

「そーよ! いつ出てくるかと思ったら最後に雑に二人まとめて出番消費して、しかもこの扱いの悪さってなんなのよ! 私たちヒロインなのに!」

 

 メタいなおい!

 後出てくるなりマストを折られて退場したラファエルさん程じゃないと思います!

 

「だめ! 今回は私がヒロインなんだから!」

 

 いつの間にかアカフクから俺の肩の上に移動してきているリタが二人を睨みつける。

 君もメタいな!?

 

「それは否定しないけど、ボクたちだってもう少し良い役を貰ったっていいじゃないか!」

「そうよ! 敵として登場して戦いの末にわかり合うヒロインとか、そう言うの好きでしょ!?」

 

 な、何故それを!

 ・・・いや、俺のロボットアニメ結構見てるから普通にわかるか。

 

「今はお兄ちゃんはわたしのなの!」

「おっと、控えめなお姫様が本性を現したぞぉ」

「たとえリタでもハヤトは渡さないわよ!」

 

 そんなことを考えている間に文字通り俺の頭上で言い争いが激しくなっている。

 こう言う時は首を引っ込めて嵐をやり過ごすのが一番だな、うん。

 なんか後ろの仮面の人も怖いし。

 

「なあボウズ。そう言う半端な事やってると後でもっと後悔するもんだぜ?」

 

 年かさの船員さんが妙にしみじみと忠告してくれるが、しゃーないんや!

 だってオラは彼女いない暦=年齢の童貞だから・・・

 

 

 

 洞窟の入り口。

 日の光にまぶしさを感じ、眼を細めた瞬間、「それ」が来た。

 ずん、と腹に響く縦揺れの衝撃。そして感じたのは・・・

 

「これって・・・」

「ボクも感じたよ!」

「魔力の波動だ。それも・・・何と禍々しい」

 

 俺の魔力感知はまだ慣れてないこともあり、かなりあやふやだ。

 それでもはっきり方角がわかるほどの強大な、もの凄く嫌な感触。

 

「あ・・・あれ、サソリキングたちの船が泊まってたあたりじゃないか?」

「何だと!?」

 

 山の陰に隠れて入り江は直接見えない。ラドゥーナさんが翼を広げて飛ぼうとした瞬間、まさにその方角に黒い竜巻のような柱が立った。

 

「む・・・見ろ! 竜巻のてっぺんだ!」

「うおおおおお!?」

 

 竜巻の上。

 柱の上に鎮座するようにいるのは禍々しい黒褐色のサソリ。

 ちょっと待て、あれ何メートルくらいあるんだ・・・?

 

『 そ こ か 』

 

 うおっ!?

 耳に・・・いや、多分精神にずんと来た!

 間違いない、あのサソリがこっちを睨んでる・・・まさかサソリキングか!?

 

「念話だな。それも死霊のものだ。途中にあった私の・・・あれが魔力を放っていないので気になったが、あいつが魔力を吸収して怨霊となったのだろう。

 ・・・部下と、あの体の元になっているのは古代の魔法の戦船か。吸収して合体したのだな」

 

 何その無茶苦茶!

 奇跡も魔法もある世界だからって無理を通して道理を蹴飛ばしすぎだろう! ドリルロボアニメの主人公ならともかく、悪玉がやるんじゃねえ!

 

「まがりなりにも奴は勇者並の実力者・・・間違いなく英雄と呼ばれるだけの器の持ち主だ。

 それだけの強い意志の力があればないことではない」

「くそっ、往生際の悪い!」

 

 いやまあドラゴンのウ●コに埋もれて死ぬとか、死んでも死にきれないだろうなあと言うのはちょっと理解出来るがそこはそれ!

 

「リタ、離すんじゃないぞ! ええと・・・忘れた! アルテ、カオルくん、リタを頼む!」

「お兄ちゃん!?」

 

 リタを下ろし、生命の樹の果実が入った背負い袋を押しつけると、俺は駆け出した。

 

『 よ こ せ  そ れ を よ こ せ 』

 

 竜巻が傾く。コマが地面を滑るように、巨大な黒サソリが竜巻と共に迫る。

 それを見上げる俺、全身にみなぎる決意と魔力。駆けながら俺は呪文を唱える。

 俺にしか扱えない、最強の力を呼び出す呪文。

 

「マシン・オン! パイルビード・ゴォーッ!」

 

 俺の体が光に包まれる。魔力の光でもあり、豪子力の光でもある。

 

■■■■■■■■■(な・・・なんだと)!?』

 

 思わず真の言葉(トゥルースピーク)で驚愕の声を漏らすラドゥーナさん。

 駆ける光のシルエットが見る見る巨大化し、18mの鋼鉄の巨人の姿を現す。

 今俺は、無敵の魔神デモゴディΣとなった。

 

『 小 細 工 を ! 』

 

 時速360kmで疾走する俺と、竜巻を駆って同じくらいの速度で空を滑る巨大蠍・・・いわばギガント・セルケティス。

 それらが洞窟から1km程のところで激突する。

 

『ぐおっ!』

『 ぬ う ! 』

 

 身長70mを越す巨体。それにたっぷりのスピードをつけた、上空からのギガント・セルケティスのぶちかまし。

 だがデモゴディのパワーと頑丈さを甘く見て貰っては困る!

 足をすねまで山腹にめり込ませながらも、俺は巨大サソリの突撃をがっぷり四つに受け止めた。

 

(・・・よし)

 

 後部カメラでリタ達が洞窟の中に退避しているのを確認。

 ラドゥーナさんがその盾になってくれている。

 ならば遠慮は無用!相手と組み合って、パンチもはさみもキックも使えない状態でも、俺にはここから出せる必殺技がある!

 

『 む ! ? 』

 

 俺の意図を察したか、ギガント・セルケティスがみじろぎする。だが遅い!

 

『ブレストヴォルケイノ!』

 

 俺の胸から発せられる三万度の熱線が、ゼロ距離で巨大サソリの体に浴びせられた。




ちなみにもう死んだのでばらしてしまいますが、セルケティス達はカモメに変身できる獣術師と念話の術師を使ってハヤトたちの動きを偵察していました。
考える事は同じですな。
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