異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
『ブレストヴォルケイノ!』
三万度の熱線が発射されると同時、巨大サソリの尻尾が異常に伸びた。
『ぐっ!』
針こそ刺さらなかったものの、インドの棍棒のような丸く膨らんだ先端が俺――デモゴディの顔面を強打する。その拍子に組み合いがほどけ、奴は素早く上空へ離脱した。
三万度の熱線を浴びたのも一瞬のこと、そのボディに目だったダメージは見られない。
『ちっ! ミサイルラッシュ!』
『 ぬ る い 』
機関銃のように乱射されるミサイルを、竜巻を足場にした巨大サソリは空中をするする滑るように全て回避する。嘘だろバーニィ!
その隙にギガント・セルケティスは更に上空へ。
あ、やばい。尻尾の先とハサミの中に黒い光が。
『 死 ね 』
俺が足の裏面のロケットを起動して大ジャンプするのと、黒い閃光が山腹を叩くのがほぼ同時。自分のロケット噴射と黒い爆発の反動で上空にはじき飛ばされた。
『くそっ!』
洞窟の斜め上、山のてっぺんに着地する。
宝の地図の偽のしるしがついていた辺りだ。
そうしている間にもさらにギガ・セルケティスは高度を上げる。
『ミサイルラッシュ! ミサイルドリル! 豪子力ビーム!』
弾幕で命中率をカバーしようとしてみるが、悔しいことにすいすいと空中を滑るように移動し、一発も命中しない。
逆に黒い魔力のビームが連射され、こっちが逃げ回るハメになる。
『くそっ! 空を飛べれば・・・!』
デモゴディΣは基本的に陸戦ロボだ。足裏のロケットでジャンプは出来ても飛行は出来ない。
だがオプションパーツと合体することによってマッハ3で飛行することも可能になる。
真紅の翼、スカーレットスクランダー。
だがしかし、俺はこれを未だに再現できていない。
師匠曰く、魔術でも自分の体の中のものを変化させることに比べ自分の体の外に、しかも一から作るのは難易度がぐんと上がるのだそうだ。
恐らく物理法則的な何かで難易度が高くなっているのだろう。
デモゴディの姿のままでミストヴォルグの能力が使えるなら・・・いや、それでもヘリの速度ではあいつには恐らく追いつけない。竜巻が滑るように移動するのはまだしも、それが素早く左右に揺れてこちらの攻撃をかわすのだ。
まるでボクサーのダッキング。ヘリは戦闘機に比べて小回りの利く機種だが、それでも前後左右にスピードを落とさず移動できるかと言えば無理だ。
『 死 ね 』
『!』
尻尾の先が蓮華の花のように展開する。
一際太く、濃い魔力のビーム。
くそっ!
『ブレスト・・・』
最悪足元を貫通してリタ達に被害が及ぶ。迎撃するしかない。
だが発動が僅かに遅れた。自分の身を盾にしてリタ達を守るしかない。そう思った瞬間、真紅の炎が広がった。
『!』
『 ぬ 』
それを見て最初に思ったのは「美しい」だった。
太陽のコロナフレアの様な輝きと内包するエネルギーを感じさせる魔力の光。
それが融合した完全なる炎。この世の全てよりなお熱いそれ。
いつの間にか登ってきていたラドゥーナさんが吐きだした、真なる竜の吐息。
それが大魔獣と化したセルケティスの黒い魔力の閃光とぶつかり、大爆発を起こした。
『ぐっ!』
『
双方の火線に込められた魔力が反応し、爆発する。
その魔力風だけでも、デモゴディの体を揺らすには十分なほどの威力。爆心地点の直下の森がめくれ上がり、木々が吹き飛ばされる。
山の頂上にあった巨大な枯れ木も、否、山の頂上そのものが大きくえぐれていた。
黒いサソリの背中に浮き上がる、セルケティスの顔が哄笑する。
『 ふ 、 は は は は は は は ! 死 ん だ 死 に お っ 』
哄笑が途切れた。
濃密な、魔力を帯びた煙の中から浮かび上がる影が一つ。
『誰が、死んだって』
巨大サソリに勝るとも劣らぬ体躯の赤い巨竜。
そしてその背中、腕組みをして立つ鋼鉄の巨人。
100mを越す巨竜に比べれば小さくとも、その鋼の体躯からは圧倒的なオーラ。
『これで五分と五分だ』
赤き真の竜の背に立つ鋼鉄の騎手。
竜巻を駆る人面の黒い巨蠍。
両者が対峙した。
僅かな沈黙の後、熾烈な空中戦が始まる。
流星の如く天を駆ける紅の竜。
竜巻を駆り、円を描いて空を滑る漆黒の蠍。
最高速度では竜。小回りでは蠍。
鉄巨人の放つ熱線、光線、ミサイルの嵐、時折鉄拳。竜のブレス、すれ違いざまの一撃。
蠍の方も黒い魔力の閃光やハサミ、伸縮自在の尾による物理攻撃。バネ細工のように前後左右にフラフラと揺れる竜巻は、回避に力を与えるほか思わぬ方向からの奇襲も強い。
『 お の れ 』
セルケティスの顔がいらだちを吐き出す。
先ほどまでは翻弄していた相手が、空という同じ土俵に立った途端に互角の戦いを挑んでくる。そんな事実に怒りを隠し切れないんだろう。
『 何 故 邪 魔 を す る ! 俺 は 国 を 救 う の だ ! ア ン ブ ロ ジ ア を 、 民 を 救 う の だ ! 』
『寝ぼけるなっ!』
『 ぐ ぶ う っ ! ? 』
その瞬間、怒りで速度を倍加させた俺のロケットパンチが巨大蠍の背中、セルケティスの顔面を打ちすえた。
続いてもう一発。
『 が っ ! 』
『死を強いる指導者のどこに真実があるっ!』
そのセリフは驚くほどスッと出てきた。
「機動戦士クロスボーン・ガンボイ」のワンシーン。
部下を自爆させようとする司令官に対して放たれたそれ。
『仲間を、部下を食い物にして強くなろうとする王が、王であるわけがないだろう!』
ここまでの戦いで、俺はギガ・セルケティスの体中に浮かび上がる顔を何度も見た。
どれもこれも苦悶に歪んでおり、中にはセルケティスの船や部隊を偵察していたときに見覚えた顔がいくつもあった。
『 必 要 な 事 だ ! 我 が 国 の 、 我 が 民 の た め の 必 要 な 犠 牲 だ ! 』
『お前のものじゃ、ないっ!』
渾身の豪子力ビームがセルケティスの顔面に炸裂した。
『 ぐ お お お お お 』
『とどめだ!』
ロケットパンチが伸縮自在の尾を取り押さえる。
全力全開のブレストヴォルケイノのチャージ。
「待て、ハヤト!」
『!?』
次の瞬間、俺の視界が真っ黒に染まり、鋼鉄のデモゴディが木の葉のように吹き飛ばされた。