異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第三十九話 赤い稲妻

 ゆっくりと落ちていく。

 浮遊感。

 爆発の名残であろう、黒い煙がだんだん小さくなっていく。

 

「がっ!」

 

 山肌に叩き付けられた。

 感覚的に多分100メートル以上は落下したろう。

 さすがにこの鋼鉄の体で大したダメージではないが、それでも一瞬息がつまった。

 (呼吸が必要な体ではないが、デモゴディというロボは明らかに呼吸できるし、叫びもする)

 

「ラドゥーナさん!」

 

 ハッと気付いて起き上がる。

 赤い未亡人の竜は少し離れた所に横たわっていた。人間で言えば肩口がばっくりとえぐられており、無惨な姿になっている。それ以外にも体中に大小無数の傷があった。

 

■■■■■■■■■(私に構うな、上を見ろ)!』

 

 もう共通語に合わせてくれる余裕もないんだろう、真なる言葉でラドゥーナさんが叫ぶ。

 

「!」

 

 見上げた空の彼方にはあの黒い竜巻。しかしその頂点に立つのは黒いサソリではなく、サソリの意匠を持つ黒い甲冑を纏った巨人。

 恐らくはギガ・セルケティスの外装を吹っ飛ばして俺達を巻き込み、中身をああした形に再構成した。

 だが今はそんなことを考えている場合じゃない。背中のサソリの尻尾が俺達の方を向いている。その先端に黒い魔力の光を宿して。

 

「やばい!」

 

 足の裏からロケットを噴射し、高速でその場を離れる。

 当たらないのを承知の上で、豪子力ビームと腕のミサイルドリルを乱射。

 俺はまだしも今のラドゥーナさんがあれを喰らったらひとたまりもない!

 

「こっちだ! こっちに来い!」

 

 乱射しつつ挑発。

 よし、こっち向いた・・・

 

「のわーっ!」

 

 ジャンプの着地地点で爆発。

 こいつかわせないタイミングを狙って魔力光撃って来やがった!

 さすがに一発二発じゃどうにもならないが、何十発も喰らったらちょっとやばい!

 

(とはいえ、注意はこっちに引きつけた!)

 

 ラドゥーナさんも動けそうにはないが、自分の傷を癒す術くらいは使えるだろう。

 ともかくしばらくは時間稼ぎしないと・・・って!

 

『 甘 い 』

 

 あいつ(サソリキング)、今度は砲口をラドゥーナさんに向けやがった! 尻尾の先に魔力をチャージしてる! こっちの乱射するミサイルやビームをよけながらだから時間はかかるだろうが、全力の一発を喰らったらラドゥーナさんでも多分ひとたまりもない!

 くそ! 俺に紅の翼があれば!

 

(あるぞ)

 

「!?」

 

 俺の脳裏に響く心の声。念話に性別や年齢は余り関係ないのだが、この声は包容力のある年長の男性のように思えた。

 いやでも多分人間の声じゃないぞこれ。なんて言うか深みがありすぎる、つまり――!

 

(そうだ。我が名はヘスヴェロス。真なる赤き竜にしてラドゥーナの夫。正確にはその残留思念だ)

 

 あの死んだドラゴンの人か!

 

(そうだ。我が真なる名前は『■■■■■■■■■』。この名を君に託す。

 名前には力が宿る。発音は出来ずとも今私は君と、そして君の《加護》と繋がったのだ)

 

 それって・・・!

 

(さあ、我が新たなる名を呼べ。妻を救うため、私が君の翼となろう!)

 

 ・・・・・・・・!

 

「ドラゴニック・スクランダー!」

 

 

 

 セルケティスは笑みを浮かべていた。

 怨霊となり、思考力を減じてはいたが、意志と怨念はいささかも衰えてはいない。

 チャージする魔力。動けないドラゴン。足裏から火を吐いてこちらに向かってくる鉄巨人。

 だが一手遅い。弱った相手にこそ優先してとどめを刺すべき。

 このセルケティスがそれがわからないほどの愚か者だとでも思ったのだろうか?

 

『 死 ね 』

 

 嗜虐的な笑みを浮かべて魔力光を解き放つ寸前、例の洞窟が爆発した。

 

『 な に ? 』

 

 最早あの洞窟に力あるものは残っていない。

 あの黒い仮面の剣士にしても、生身だった頃の自分であればこそ難敵であったが。

 そこまで考えた瞬間に、セルケティスの目ですら捉えきれないスピードで赤い何かが飛んできた。

 

『 ! ? 』

 

 反射的にかわすが、それでも接触した肩の装甲が砕けた。

 体勢を崩して魔力光が暴発し、空の彼方へ飛んでいく。

 竜?それにしては小さいと考えた瞬間、飛び去った赤い何かの先に鉄巨人がいるのに気付く。

 まさか。

 そう考えた瞬間。

 

「ドラグランダー・クロス!」

 

 その両者が合体する。

 

『 ・ ・ ・ ・ ・ ! 』

 

 その姿、そして放たれる魔力の波動にセルケティスが驚きを隠しきれない。

 黒き鋼の巨人。その背から伸びるのは紅の翼。竜の意匠をところどころに残してはいるものの、完全な機械のそれ。

 大空は今や、デモゴディのものだった。

 

 

 

 黒巨人セルケティスの驚愕と焦りが手に取るようにわかる。

 逆に今の俺の体には力がみなぎっていた。

 真なる赤き竜、ヘスヴェロスの力が背中のスクランダーを通して俺の体にしみこんでくる。

 英雄の怨念と古代の魔法船の力を集めたところで、今の俺達にはかなうはずがない!

 

『 こ の 』

 

 黒巨人が背中から10本ほどの足を出した。

 サソリの足のような節足めいたそれ。恐らくは魔法船の砲台が変化したものだろう。

 出現と同時に放たれる、その先端からの黒い閃光。

 

『 な に 』

 

 だがその黒い閃光が空を切り裂いたとき、既に俺達はそこにはいない。

 瞬時に加速して、奴が気がついたときには既に後ろに回り込んでいる。

 

「ミサイルドリル! ミサイルラッシュ! 豪子力ビーム! ブレストヴォルケイノ!」

『 ぐ お お ? ! 』

 

 消費を度外視した一斉攻撃ラッシュ。

 さすがにこれは完全にはかわせず、黒巨人が次々と被弾する。

 だが致命傷には程遠い。

 奴の防御力も低くはないが、問題は回避だ。

 左右に揺れる竜巻の上に乗っているのは、言ってみれば地面に足をつけているようなもの。

 飛行速度ではこちらが圧倒しているが、小回りと機動性では相手にならない。

 

(相手の上に回るのだ、ハヤト。空中戦の基本は相手の上を取ること。

 奴は左右に揺れる柳。だが左右に揺れても上下に伸びることは容易くはない)

 

 ヘスヴェロスさんの思念が俺にヒントを与えてくれる。

 そうだ、これだ!

 

『 な 』

 

 再び一斉射撃を放った瞬間、俺達は奴の目から消えた。

 一瞬遅れて奴が頭上を仰ぎ見たときには、既に俺達の姿は高度2000mの高さにある。

 そこから再び打ち下ろしの一斉攻撃。

 

『 待 て 』

 

 ミサイルや熱線の雨をかいくぐりながら必死に高度を上げる黒巨人セルケティス。

 負けじとばかりに黒い閃光を撃ち続けるが、回避しながらではそうそう当たるものではない!

 そして!

 

『 ! 』

 

 高度差が100mほどに縮まったとき、再び俺は急上昇した。

 縮まっていた距離があっという間に再び開く。

 高度五千。

 

『 お の れ 卑 怯 者 が ! 降 り て き て 戦 え 』

 

 負け犬の遠吠えってんだよ、それを!

 大体最初に上空から一方的に撃ってきやがったのはどこのどいつだ!

 

「安心しろ、今すぐそこに行ってやるよ」

 

 そう呟くと同時に、俺は身を翻した。

 先ほどまでとは逆。直下に全力で降下する。

 

『 』

 

 一転してこちらに向かってくる俺達に、僅かにセルケティスの動きがぶれた。

 回避などさせるか!

 

「ヘキサクロスト・ナイフ!」

 

 ドラゴニック・スクランダーの翼から超合金Σ製の六方手裏剣が無数に放たれた。

 それは竜巻が伸びきって機動力を失ったギガ・セルケティスの顔面に次々と突き刺さる。

 

『 ぎ ゃ あ あ あ あ あ あ あ 』

 

 顔面を手裏剣でズタズタにされ、顔を覆った奴の動きが一瞬止まった。

 お前が犠牲にした部下達に地獄で詫びろ。

 

「スクランダー・スラッシュ!」

 

 一閃。

 紅の翼が黒い巨人と竜巻を高度二千メートルから一気に切り下げる。

 高度100メートルほどで身を翻し、全力の逆噴射。ほとんど墜落のような勢いで強引に軟着陸する。

 デモゴディが大地を揺るがしたのと、遥か上空で大爆発が起こるのとがほぼ同時だった。




 ちなみに今回の戦闘機動(マニューバ)の元ネタはマジンガーZではなく、鉄人28号が原作でよくやる「急上昇からの急降下パンチ」だったりします。
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