異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「一番大きな奴で3フィート(90センチ)と言ったところか。しかし、逃げたあの一匹に比べればみんな雑魚だよ」
――マロリオン物語――
はるか上空を見上げる。
爆発の煙は既に薄れ、黒い竜巻も消滅していた。
「・・・」
滅茶苦茶強かったなあ・・・ガイガーさん並の剣の腕とあれだけ忠実な部下がいて、それをいいことのために使えば英雄にもなれたろうに。
心の中で溜息をつくと、背中の翼が薄れ始めているのに気付いた。
「ヘスヴェロスさん!?」
(潮時と言う事だろう。ありがとうハヤト、君のおかげで妻と子を守れた)
「ここで消えちゃ駄目です! ラドゥーナさんと一言でも・・・!」
穏やかに微笑んで首を横に振るイメージが、背中の翼を通して伝わってくる。
(本当の私はもう死んでいる。この私は幽霊ですらない、残留思念に過ぎない。
その私がこうして妻と子を守る手助けが出来たのだ。思い残すことはないよ。
それに、妻にもう一度私の死を見せるのかね?)
「それは」
俺が言いよどむと、もう一度笑う気配がした。
(妻には君から伝えてくれ。そしてこの翼はもう君のものだ。私の思念が消えれば先ほどのような力は出せまいが、君の成長次第では今以上の力も引き出せるようになるだろう。
さらばだ。そしてありがとう、ハヤト)
「ヘスヴェロスさん!」
叫んだ瞬間、彼の気配はもうない。
そして気がつけば、俺はデモゴディからハヤトに戻っていた。
「おーい!」
ハムリスに肩車されたリタや船長、アルテやカオルくんたちがこっちに駆けてくる。
それに手を振り返すと、俺は涙をこぼさないように少し上を見上げた。
ラドゥーナさんの傷は残りの傷薬をつぎ込んでどうにか問題ないところまで治療した。
残りは本人の治療術でどうにかなるとのこと。
あの紅の翼の件について、旦那さんの残留思念が力を貸してくれたようです、というと彼女は「そうか」と言って少し遠くを見るような目をしていた。
「あの、これ旦那さんのご遺体だと思うんですけど、どうにかしてお返しした方がいいんでしょうか・・・?」
実は気になっていた件について恐る恐るお伺いを立てると、ラドゥーナさんは笑って首を振った。
「あの人の意志でそれをお前に託したなら、私がどうこう言う筋合いではない。
それだけのこともしてもらったしな」
「・・・決して粗末には扱いません」
「頼むぞ」
頷くラドゥーナさん。
ドラゴンの笑顔が素敵だと思ったのはそれが初めてだった。
「お兄ちゃん?」
「ハヤト?」
「ハヤトくん?」
「まあ未亡人ってのは色気があるもんだけど、あんたそっちの趣味もあったのかい」
「やっぱこいつはクソでチュ」
だからそういう意味じゃねーよ!
その後、俺達はラドゥーナさんたちに別れを告げて島を後にした。
アルテやカオルくんがついてきたそうにしてたが、さすがに役どころ的に無理がある。
これから生まれてくるラドゥーナさんたちの子供も守らないといけないしな。
タジル島に寄って風呼びの人達を下ろした後は海賊砦ではなく、北西に舵をとって直接グリテン王国に送っていってもらう。
お姫様を助けたとなればとっておきの酒を御馳走して貰えるだろうからねえ、とは船長の言。
そんな船長に俺は黙って頭を下げた。
「姫様!」
「リタ姫様がお戻りだ!」
王国では、みんなが泣いて喜んでくれた。
船長たちも一緒だが、ガイガーさん・・・じゃなかった、黒い仮面の剣士は何も言わず姿を消していた。
一緒に来ればいいのに、そうは思ったが何か大人の事情があるんだろう。
俺は溜息をついて、この件はそれで終わらせることにした。
「おかあさん!」
「ああ、リタ・・・!」
俺達の持ち帰った黄金のリンゴで宮廷魔術師が薬を作り、女王様の口に注ぎ込む。
途端女王様は目を覚まし、傍にいたリタ姫と強く抱き合った。
「こうして女王様の病気は治り、親子仲むつまじく暮らしたのでした。めでたしめでたし」
ハッと気付く。
俺達は石橋の上で老人の話を聞いていた。
もちろんグリテン王国のリタ姫と騎士ハヤトではなく、ハスキー一座のリタとハヤトとしてだ。
キョロキョロと周囲を見回してから、リタと顔を見合わせる。
リタの足元で、普通サイズに戻ったハムリス達がチューチューと右往左往していた。
「・・・」
目の前には欄干を背にして座り込む、変なじいさん。
話を始めたときの姿のままだ。太陽もほとんど動いてない・・・ような気がするので多分時間はほとんど経ってないのだろう。
「一体どういう事だ、これは?」
ほっほっほ、と笑うじいさん。その様子には邪気の欠片もない。
「なに、わしは話をして上げただけさ。面白かったろう?」
「まあ面白いかどうかで言ったら面白かったが・・・」
「面白かったけど尻切れトンボだよ!」
ちょっとおこなリタ。あれ、大団円だったと思うけど。
「ほう、どこがかね?」
「いやほら・・・こう言う時は、騎士とお姫様が結婚してめでたしめでたしでしょ!
それがないのは片手落ちだと思うの!」
そ、そうかな?
じいさんはまたしてもほっほっほと笑う。
「まあそれも考えないではなかったがね。さすがにあと十年くらいは待たんとの」
「むー」
頬を膨らますリタ。ハムリスどもがチューチュー鳴く。
言ってることはわからないが言いたい事はわかるんだよなあ。わかりたくもなかったが。
「あれ、リタ。そのペンダント・・・」
「え?」
今気付いたが、リタの胸元に高価そうなペンダント、いや開きそうだからロケットか?が光っていた。間違いなく買い物に出たときにはこんなものはしていなかったはず。
「何かそれこそお姫様の持ち物っぽい・・・え?」
その時気付いた。俺の中に、あの赤い竜の力がある。
ちょっと待て、これは一体・・・
リタと二人、揃って爺さんの方を振り向くと、いつの間にか姿が消えていた。
それと同時にどぼん、という水音。
「!」
やばい、落ちたか?!
慌てて川を覗き込んだ俺達が見たのは、2メートルはあろうかという巨大な魚だった。
じいさんが悪戦苦闘の末釣り上げたと言っていた、川の主のような。
「・・・」
「・・・」
尻尾を振って、悠々と泳ぎ去る巨大魚。もう一度互いの顔を見合わせる俺達。
「あ、いたいた! ハヤトー! 一緒に帰ろ!」
「ハヤトくーん!」
やって来たアルテ達に肩を叩かれるまで、俺達はそうして呆然としていた。
「リタ、それは!?」
野営地に帰るとガイガーさんがぎょっとした顔をしていた。
この鉄面皮の人がこんな驚くところなんて初めて見たよ。
「よくわからないの・・・これって、おかあさんの?」
「ああ。なくしたと思っていたが・・・」
ペンダントを開くと、中には貴族のお嬢様かお姫様のように着飾った若い女性の絵。物語の中で見たリタのおかあさんだ、多分。
「じゃあこれはおとうさんのものなんだね」
渡そうとしたリタを、ガイガーさんが止める。
「いや・・・それはお前のものだ。お前が持っていなさい」
「・・・うん」
リタがペンダントヘッドをぎゅっと握った。
「ふむふむ」
夕食の後。
ペトロワ師匠は興味深げに俺達の話を聞いていた。
「と言うわけで物語の世界に行って戻ってきたらペンダントとか竜の力とか持ち帰ってきたんですが、これはどういうことでしょう」
「さてな。わしに言えるのはないことではないと言うくらいか。
物語とて一つの世界には違いないから、そこに出たり入ったりするのも、何かを持ち出すのも不可能ではない。
もちろん強い魔法が必要になるがの」
ふーむ。
考え込んだところで、こちらも目をキラキラさせて話を聞いていたラファエルさんが話に入って来た。
「そういえばソッツォの町には川の主の巨大魚が人間に化けてほら話を聞かせたり、別の世界に連れていったりしたという言い伝えがあるそうですぞ。
リタとハヤトが会ったと言うのは、その川の主ではございませんかな?」
マジかよ。
さすがファンタジー世界。
ああ、と師匠が大きく頷いた。
「先生、何か?」
「いや何、お前ら『ソッツォ』という言葉の意味を知っているか?」
「いえ・・・」
「聞き覚えがないですぞ」
そう言うと師匠はくすり、と笑った。
「『大きな魚』じゃよ」
ストロングなんだ♪ ビッグなんだ♪ ぼくらの デモゴディなんだ~♪
と言うわけで一巻の終わりにございます。
一応ロボットアニメ小説のつもりなんですが、前作といいたまにこう言うファンタジックな話書いてみたくなるようで。
「ビッグ・フィッシュ」は大きな魚という意味ですが、「ほら話」というニュアンスもあります。今回はそちらのイメージですね。
なお余談ですが、島に上陸したあたりの展開はアニメ「宝島」の主人公側と敵側の展開(敵は地図の写しを持っているが、本物の地図にあったあぶり出しのおかげで主人公たちは一歩先んじる)を逆転させたイメージで書きました。
山のてっぺんに枯れた木があるのもまんまそれ。
年末年始はお休みを頂きまして、再開は一月四日からになります。
それではよいお年を。
潮風よ、縁があったらまた会おう!