異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「ギャッ!」
「ゴブッ!?」
短い悲鳴が次々に上がり、すぐに消える。
端的に言えばガイガーさんが無双している。
ゆっくり歩いて、無造作に剣を振る。それだけでゴブリンが次々と屠られていく。
左右を固めるアルテとカオルくんもかなり無双してるんだが、もう撃墜数の桁が違った。
「まー、こうなるよな」
のんびりとアーベルさん。戦闘中なのに緊張の欠片もない。
まあこの人はこの状態で不意打ち受けても対処できそうな気もするが、気を抜いてしまうのも当然なくらい、戦況は圧倒的だった。
まだ戦闘が終わらないのは、単に相手の数がめちゃくちゃ多かっただけに過ぎない。
「うーん、いい絵になりますねえ。向こうでも大受けしてるみたいですよ」
こっちは本当にのんきしてるのがオブライアンさん。
ダンジョンの外にいるペトロワ師匠と協力して実況とカメラマン役だ。
非戦闘員枠だが、水の術での牽制とか、ちょっとした治療くらいは出来る。
俺とアーベルさん、オブライアンさんが後衛、ガイガーさん、アルテ、カオルくんが前衛の六人パーティで、俺達はイレマーレのダンジョンを攻略していた。
「おっ、逃げるぜ」
「追撃します?」
「構うな・・・稼ぎに来ている訳じゃない」
頷いて俺は両手を下ろす。
ダンジョンにも色々あるらしいが、このダンジョンはオーソドックスな?石造りの建造物タイプだ。洞窟タイプも多いし、極東のアグナムには和風の鳥居がびっしり続いているダンジョンもあるらしい。
ともかくその結構広い石造りの通路に百匹近くひしめいていたゴブリンどもは、半分くらいがやられたところでついに士気崩壊して逃げ出した。
後に残るのは死屍累々・・・と思いきや、数十個のキラキラ光る綺麗な石。
ダンジョン発祥のモンスター(及びそれが野生化したもの)は、殺されると死体が消えて魔力結晶なるものが残る。こいつらはダンジョンの魔法で生まれた存在だからだ。
魔力結晶は魔法を使うさいの魔力消費を肩代わりしてくれるし、いわゆるマジックアイテムの動力源としても使用できる。
真なる魔法文明時代の遺物が現役で動いているところは結構多いらしく、水をくみ上げる魔法ポンプとか金属を精製する高炉とか、降水装置とか魔法トラクターとか魔法パワードスーツとか、色々なものに使われているのだそうだ。
パワードスーツはちょっと着てみたい。巨大ロボも好きだけどそっち方面も好きです。
ガイガーさんとアーベルさんが周囲を警戒し、俺とアルテ、カオルくんの三人で魔力結晶を拾い集める。
オブライアンさんは相変わらずそれらの撮影。
「結晶は・・・ハヤトが持て。いざというときにはそれを使って《加護》で援護しろ」
「あ、座長が『なるべく使わずに戻ってこい』だってさ」
「まあそりゃそうだ」
先に言ったような理由で、魔力結晶はあちこちで使われるし、当然いい値段が付く。
場合によっては魔力結晶とは別のドロップアイテムのようなものも落ちるらしいが、さすがにゴブリンでは期待は出来ない。
「判断は・・・ハヤトに任せる。ただ、必要と思ったら遠慮せずに使え。いいな・・・」
「了解です」
「では行くぞ・・・気を抜くな」
それぞれに返事をして、俺達はガイガーさんに続いた。
そうだな、何と言ってもダンジョンなんだ。気をゆるめたりはできない・・・!
などと言いつつ、結局その日は最初から最後までガイガーさん無双で終わった。
魔力結晶を使う判断どころか、何かするヒマもほとんどなかったよ!
出口で衛兵さんたちのチェックを受け、ダンジョンの入場料として魔力結晶の一割を支払う。
なお一割というのは古代文明時代のダンジョン経営者協同組合で決められた価格で、今でもほとんど全ての営利型ダンジョンで使われているのだそうな・・・同業組合が出来るほど多かったのかよ!?
「・・・ん?」
そんなセルフツッコミをしていると、カオルくんが目に入った。
なんだろう、ダンジョンの入り口見て切なそうな表情してる・・・?
「カオルー。帰るわよー」
「あ、うん」
返事をして振り向いたときにはもういつものカオルくんだったけど、今のは何だったんだろう。
「はっはっは、よくやったよお前らぁ! いやー、こっちの方本業にしようかねえ!」
テントに戻ると座長がたいそうご機嫌だった。
お客さんはもう帰ってしまったが、かなりの大入りだったらしい。
「それは・・・困るな」
「わたしも、お兄ちゃんやアルテちゃんたちが危ないのはいや!」
はっはっは、と上機嫌に笑いながら手を振るシルヴィアさん。
「わかってる、わかってるって。今回だけだよ。でも出来れば長く続いてくんないかなあ」
魔力結晶をジャラジャラ鳴らして恍惚の表情になる座長。
ホントにわかってるのかね、この人。
「ギャッ!」
「オガーッ!」
短い悲鳴が次々に上がり、すぐに消える。
端的に言えばガイガーさんが無双している。
昨日も同じ事を言ったような気がするが、今日の相手はオーガーだ。
身長2m半の巨体に、凶暴な攻撃性。動きも速い。
何でもこれを倒せるかどうかが
両脇のカオルくんとアルテも、ガイガーさん程じゃないにしろ普通に倒してるから感覚がバグるわ。
というか赤等級と青等級の間の壁って「パーティで」「一匹」倒せるかどうかってことだそうなんですけど、どうなってんのこの人たち。
そんなことを考えてたら、高みの見物を決め込んでいたアーベルさんがクククと笑った。
「なに、生まれて初めて《加護》を使って王様と騎士団と修道院吹っ飛ばしたお前ほどじゃねーよ」
おっしゃるとおりです、はい!
夕方少し前に俺達は野営準備に入った。
今日からはダンジョンの中で寝泊まりして、そのまま下を目指す。
昔の人が作った安全地帯がダンジョンの中にはいくつかあり、そこでならモンスターに襲われず休息出来るようになっているのだ。
「登山のベースキャンプみたいなものだね」
「それだ」
特殊な移動手段を持っている一部の冒険者はともかく、そうでない人はえっちらおっちら歩いて何日もかけて下まで行かないといけないので、こう言うのが必要になるわけだ。
ちなみに今いるのは上から「二つめ」の安全地帯である。ガイガーさんパねえ。
ついでに言うと前にちょっと話に出てきた千年ダンジョンには専門の
大陸に数十人と言われる転移術師の実に一割がここに集まっているそうで、ペトロワ師匠が苦笑していた。
その貴重な瞬間移動の術を上下移動にしか使っていないことを揶揄して、
「光ー! 光売りますよー! 長持ちで火だね要らず、落としても消えない!」
「幸運はいらんかねー。いざというときに身を助けてくれる幸運の魔法だよー!」
「買い忘れた冒険道具、色々揃ってますよー! 松明にランタン、ほくちにロープ、登山釘にハンマー、携帯食、お菓子! ポーションもあるよ!」
「喰らう前の毒効かずの呪文! 半日は毒が効かなくなるよ!」
「ダンジョンの攻略情報! 地図とモンスターの出現傾向だ!」
そして安全地帯であるからにはこう言う需要もある。
商魂たくましいなあ、おい!
なお安全地帯にはギルドが設置した食糧と水、治療魔法の自販機まである。
つまるところ、魔力結晶を入れると作動してそれぞれ栄養のあるペーストと水を出す、もしくは負傷や毒を治療してくれるマジックアイテムだ。
ペーストのイメージはロボコップの生体部分を維持するためのあれみたいな感じだな。インスタントみそ汁のチューブから出てくる奴でもいい。一応塩味はついてるが、さほどおいしいものでもない。
これらがあると、重い食糧や水をえっちらおっちら運ばなくても軽装で深くまでいけるんだ・・・とオブライアンさん。そうか、普通なら登山みたいに人力で食糧とか運ばないといけないよな。
ペーストだけだと正直飽きが来るというか、さすがにつらいけど。
その夜。
食事をして俺達は眠りについた。
ついたのだが・・・何か重いな?
いや体が動かない! これひょっとして金縛りという奴じゃ・・・
目を開いて助けを求めようとしたら、マジで誰か俺の上に乗ってる!?
「え、カオルくん? ・・・!?!??!?」
下着姿のカオルくんが、俺の上に覆い被さっている。
余りのことに咄嗟に反応できない俺。
(あれ・・・?)
カオルくんの目が妙に虚ろなことに気付いた瞬間、その唇が俺の唇を塞いでいた。
ハヤトたちはオブライアンが水を出せるので水は携帯していませんし、食糧も魔法のバッグにある程度入れていますが、節約のために基本は自販機で済ませています。
水が出せると体を綺麗にすることも出来るので便利。メンタルを回復するのにこれが意外に重要だそうです。