異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
カンカンカンカンカン!
「!?」
アーベルさんが罠を調べて扉を開けた瞬間、鐘とか銅鑼を乱打する音が鳴り響いた。
三国志で言えば「ジャーンジャーンジャーン」って感じのあれだ。
「げえっサムライ!」
広い部屋の中、闇の中から駆け出してきたのは俺やカオルくんの目にもはっきりとわかる、鮮やかな藍色の武者鎧を着込んだ鎧武者ふたり。手には野太刀というのか、刃渡り1m以上はありそうなでかい刀。
その奥にはオリエンタルな術師らしいのと和風の袈裟と鎧を纏った僧侶らしいのがやはり二人ずつ。
もっともこの世界、神官の使う術というのは神様によって全然違うので、使ってくるまではどんな系統の使い手かわからない。
傷を癒す魔法も大半は使えず、確実に習得しているのは治療専門の
「・・・!? シックスマシンガン!」
俺の右手首に開いた穴から特殊合金製の六方手裏剣が連射される。
壁と天井の合間辺りに命中し、火花を上げる手裏剣の嵐。
「!」
「なっ!?」
驚きの気配を漏らしたのはガイガーさんとアーベルさん。
「え、何?」
残りの三人は何が起こっているか理解していない。
「忍者だ! 天井近くに張り付いていた!」
顔色を変える三人。
「ニンジャ! 本物のニンジャかい!?」
訂正、オブライアンさんだけは顔を輝かせていた。ぶれないなあんた!
それはともかく警戒用にミストヴォルグの力を呼び出しておいて良かった・・・!
多分デモゴディとかジェッターロボみたいな戦闘用ロボでは完全に不意打ちを食らっていただろう。
「見えるのか、ハヤト」
「うっすらとですが」
考えてみればガイガーさんと感覚の鋭いアーベルさんにすら存在を悟らせなかったんだ、これめちゃくちゃ隠形とかのレベル高いぞ・・・?
「ニンジャは任せる。アーベル、かき回せ。カオル、術師に雷撃。アルテはサムライ」
「はい!」
勢いよく返事して、俺はアーベルさんと共に隊列を飛び出した。
サムライをすり抜け、後衛の術師たちの方に走り込むアーベルさん。
もちろんサムライ達もそれを阻止しようとするが、斬り込んできたガイガーさんとアルテに動きを止められる。
俺はそんな戦況をちらっと見て、ミストヴォルグの超センサーに意識を集中させる。
おぼろげな影。
それが部屋の影にわだかまってる。
ミストヴォルグのセンサーにすらその程度にしか映らないんだから、人間の目には恐らく姿すら捉えられないことだろう。
《加護》か魔法か忍びの奥義か知らないが、気がつかなかったら間違いなく誰か死んでた。
「シックスマシンガン!」
手裏剣を乱射するが、右手を向けた瞬間、奴はもう飛びすさっていた。
こいつ、マジで身のこなしも凄い。
さすがにガイガーさんやサソリキング程ではないと思うが、それでもカオルくんレベルはある。ただのニンジャじゃない、ハイニンジャって感じだな・・・!
「クレセントムーン・・・うおっ!」
火花が散った。
ニンジャの近接攻撃を、かろうじて銀色の三日月で弾いた結果。
一瞬はっきりと見えたその姿がまたおぼろげな影のようになり、部屋の奥の影に溶け込んでいく。
「ひえっ?!」
アルテの悲鳴が上がった。
振り向きたい衝動を抑えて、後方カメラを起動させると、見えたのはサムライと相対するガイガーさんとアルテ。
って、サムライの首が半ばまで切り裂かれてる!?
それでも全然動きに変化はない。こいつら人間じゃないのか?
「アンデッドかもしれません! 動きからしてゴーレムとかではない、魂を持った何かなのは確実かと!」
オブライアンさんの声。
こちらの注意が逸れていることに気付いたのか、斬りかかってきたニンジャを再び両手のクレセントムーンで防ぎながら、右腕のシックスマシンガンで牽制・・・全部かわしやがった!
ええい、動きが速すぎるんじゃ!
問答無用で巻き込めるくらいの広範囲攻撃だと、アーベルさんやガイガーさんたちも巻き込むし・・・いや待てよ? これがあった!
「!」
俺が何かしようとしていると察したのか、ニンジャが再び大きく回避する。
そうだな、なまなかの範囲攻撃ならそれで外れる。だがこれならどうだぁっ!
「マグネティック・フォース・オンッ!」
「っ!?」
ニンジャの逃げた先の空間に放たれる稲妻のような光。
タイムラグのあるビームやマシンガンと違い、俺の認識と同時に放たれるそれは一切の破壊をもたらさない。
しかしその範囲に存在する物体を強制的に引き寄せると共に動きを封じる。
そして懐に飛び込んできた相手を迎えるのは、鋼鉄の腕二本。
「ジークフリート・ブリーカーッ! 死ねえっ!」
ニンジャと言うだけでじゅうぶんだ!
新タイプというかジャイアントのスターというか、高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変にと言うか、そんな感じの声が喉から漏れる。
動きを封じられたニンジャは俺の渾身の鯖折りに体を真っ二つに折った後、粉々になって爆発四散した。
ナムアミダブツ!
「ふうっ!」
一瞬気の抜けた自分を叱咤して向き直る。
術師が放った
「サンダースウォード!」
そこに雷撃が炸裂するのが濃密なモヤ越しにもわかった。
「ふっ!」
そして短いガイガーさんの気合に続いて、どさどさっと何かが倒れる音がする。
慌てて呼び出すロボをミストヴォルグに再変更して、センサーで霧を透かしてみると、既に敵は全員倒れていた。
「ふうっ・・・」
今度こそ息をついて肩を落とす。
オブライアンさんが呪文を唱え水蒸気を消すと、アルテやカオルくんたちも同様に肩を落とした。
「ん!?」
戦闘を終えて一息ついた瞬間、俺達の周囲を青いオーラが取り巻いた。
オーラというかオーロラというか、青い光の帯みたいなものが俺達を取り巻いて消える。
「これで僕達は転移ポイントの使用資格を得たはずです。その扉の奥から通じているはずですから、そっちに行きましょう」
手元の迷宮攻略ガイドブック最新完全版(イレマーレ冒険者ギルド発行、価格:金貨10枚)に目を通しながらオブライアンさん。
「その前に治療だな・・・全員なにがしかの手傷は負っているはずだ」
オブライアンさんとカオルくんが頷いて、手分けして治療に当たる。ガイガーさんやアーベルさんでさえ範囲攻撃魔法を受けて多少は負傷していたし、サムライ一人を受け持っていたアルテは結構あちこち負傷している。俺も自分では気付かなかったが、あちらこちらに軽い切り傷があった。
「しっかし強かったわねえ。というかここのモンスターって大きな熊と踊る蛙じゃなかったの?」
「そのへんは最初に言ったじゃないですか。ここのモンスターは一定期間で入れ替わるらしいんですよ。ここまで来れる人が滅多にいないこともありますが、連続して同じモンスターが出た事はほとんどないそうです。僕達も地上に戻ったら報告しなきゃなりません」
まあ一万人近い冒険者がいて、このあたりに到達できるのは十数パーティ、せいぜい百人。1%の狭き門である。
しかもこれは冒険者廃業した人やダンジョンで全滅した人を含まないから、実際にはもっと低い確率のはずだ。
あらためてこの面子のとんでもなさに思いを馳せながら、治療を終えた俺達は地上への転移ポイントへ向かった。
なおガイドブックですが、三階までは冒険者ギルドで無償配布しております。
完全版が金貨十枚もするのは、それ位払えない奴は中層より奥に行く資格はない、という一種の足切り。