異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「こうして意気揚々と第八階層に挑んだ俺達。最初のうちはそれでも好調だったのです・・・」
「ハヤトくん、
るせえ! 愚痴りたくもなるわ!
「ホントにな」
「まあ、そうだよねえ・・・」
「同感」
アーベルさん、カオルくん、アルテが溜息をついて同意する。
彼らもいい加減うんざりしているらしい。
あ、スレイザックさんが同病相憐れむって目をしてる。この人も苦労したんだろうなあ。
「それはいいが余り叫ぶな。モンスターの注意を引くし、体力も消耗する」
「アッハイ」
その中で一人だけ平常運転のガイガーさん。ストレスにさらされた状況下でこの落ち着きっぷりは何なんだろう。剣聖ゆえの明鏡止水の境地とかそう言うのだろうか。
「なんだ、ハヤト」
「いえ何でもないです」
この人は単に素でこうなだけの気もするな・・・。
第八階層の探索を始めて一週間目、俺達は早くもめげつつあった。
だって広いんだもん! 明らかに今までのダンジョンの何倍もあるよね!?
「まさかダンジョンの中に野山が広がってるとはねー」
アルテが溜息をつく。
秋の紅葉が山を彩っており非常に美しいが、美しい風景も荒んだ心を癒してはくれない。
他にも砂漠、ジャングル、平原、切り立った岩山とバリエーションに富んだエリアが揃っており、最初のうちは景色に驚き楽しむ余裕もあったのだが・・・。
「ここの中にも季節はあるんですか?」
「わしが聞いた限りではないようじゃな。紅葉のエリアはいつ来ても紅葉だそうじゃ」
うはー。
「ガイドブックによればここは一つ一つのエリアが七階と同じくらいの広さがあって、しかも果てがないそうです。ずっと一方向に進み続けると、逆の端っこから出てくるとか。
ニマグ・イリルの千年ダンジョンと違ってここには転移術師がいないので、どこからどこまでが境目で、どこから転移しているのかはわからないんですよね」
師匠は閉じた空間みたいな事を言ってたけど、だとすると明確な境目はなかったりもするんだろうな。
ともかく問題はだ! この差し渡し数キロくらいありそうなエリアを踏破して、金色のジグソーパズルのピースと、それが祭られてる祭壇を見つけなきゃいけないし、見つけた後は他のエリアにランダムで転移されるって事だ!
ランダムで!(重要な事なので二回(ry
もちろんモンスターだっているし天然の罠だってある! それらに対処しながらどこにあるかもわからん小さな祭壇を探さなきゃいけないんだ!
タライとホースを探してる方がまだましだよ!
・・・いや、あれはゲームだからで、リアルに考えればこれより余程キツイ気もするが・・・
「ホント最初のうちは良かったのよねえ・・・」
「七個か八個集まってからがねえ・・・」
「よせよせ、溜息をつくと幸せが逃げるって言うぜ」
肩をすくめて見せるアーベルさんも、普段の剽軽さがちょっと損なわれている。
そうなんだよ、転移先がランダムだから、ある程度以上集めると一度行ったところに出現するダブりが確実に発生するんだ。
ちなみに一発で全エリアを回れる確率は千八百溝分の一。アラビア数字にすれば1/1800000000000000000000000000000000000。一日に探索できるエリアは二つ、せいぜい三つだから、宇宙開闢から終焉まで試行してもまず無理だこれ。
ピースをくれる祭壇にもう一度行けばまた別のエリアに転移してくれるのだが、同じエリアでも入るたびに祭壇の位置が違うから、一々改めて探し回らないといけない。
入口に戻る転移の魔法陣は動かないし、大体わかりやすいところにあるからいいんだけど、問題はこれ「ダンジョンの」入口に戻されるので、手早く再転移するための助けにはならない。
帰還の魔法陣を探して入口に戻って一階の転移ポイントから七階に飛んで、八階の入口に・・・ってやると大差ないというか、地道に探索する方がまだましという話すらある。
というわけで現在七日目、集めたピースは十二枚。
「だがそれでも前に進むしかない。続けていればいつかは集まる」
ガイガーさんの言葉に頷く一同。
この人の不屈なところは本当に尊敬するわ。
それから数時間、更に二つのエリアを探索し、ピースを一つ追加して俺達はその日の探索を終えた。
「ふはー」
安全地帯の自販機から出てくるペーストではなく、地上から持ち込んだ食材を使った簡素な料理で腹を満たし、俺は溜息をついた。
あー、今日一日の徒労を重ねた精神的疲労が癒されていく・・・やっぱり食事は大事だな。
「なに、わしらから見たらそれでも驚異的なスピードで攻略は進行しておるよ」
と、スレイザックさん。
実のところ、驚異的なスピードで攻略できてるのはこの人の存在も割と大きい。
戦闘での立ち回りとか、罠のありそうなところとか、アドバイスが一々的確だ。
弓による援護も結構キレがあってガイガーさんが褒めるくらい。
「わしらが駆け出しの頃だったか、七階を踏破して
うわー・・・でもまあわかる。
ゲームでもこの手の徒労感溢れる展開は結構来るものがあるのに、リアルでそう言う変数引いたらノイローゼになる自信あるわ俺。
「フィクションだから耐えられる事ってあるよね・・・」
「『ヒルドラ展開』みたいなの好きな人もいるけど、ああ言うの実際に起きて欲しくはないしねえ・・・」
ちょっと待って。昼ドラ展開この世界に(ry
「それにしても、そこまでわかってるのにまたここまで来て、お友達の遺言という以外に何か理由でも?」
「・・・」
スレイザックさんが止まった。ちょっと切なげな瞳で宙を見上げてる。
これ聞いちゃいけないこと聞いちゃったかな。
「いや、それほどのことではない。ただ、わしにも少しく思い入れがあるというだけさ」
スレイザックさんは首を振りながら話し始めた。
「わしの友人・・・ヘイムと言うんだが、わしとこいつだけが
そして死んだ仲間の一人、コリーという女とこいつが恋仲でな。結婚の約束もしておった。
そのヘイムとコリーの思い出の場所が『サイコロ』エリアの岩山のてっぺんの川べり。
そこでヘイムがプロポーズしたらしい。当時はいつの間にと驚いたもんさ」
スレイザックさんがほろ苦く笑った。
いつの間にか、みんなが話に聞き入っている。
「幸い遺体は回収して脱出できたから、他の連中は家族に引き渡して、コリーは天涯孤独だったから遺体を焼いて、二人で灰を撒きにいった」
「・・・二人で八階層を踏破できたんですか?」
遠くを見るような目で、スレイザックさんがうなずく。
「幸運に恵まれたのもあるじゃろう。わしが
それに今だから言うが、あの時はこのままダンジョンの中で死んでしまっても構わないと思うておったよ。そんなわしらを
いったん言葉を句切り、再びスレイザックさんが話し始める。
「それでわしらは何とかコリーの遺灰を山頂の川べりに撒いて脱出した。それ以来、ダンジョンの方に足を向けたことはなかったが・・・」
「・・・」
物思いにふけるスレイザックさんだったが、周囲からの視線に気付くと苦笑して手を振った。
「いやいや、そんなに熱心に聞いて貰うほどの話でもない。気にせんでくれ。
ダンジョンでは良くある話さ。では早めに休ませて貰うよ、お休み」
照れ隠しなのか、そう言ってスレイザックさんは自分の毛布にくるまってしまったが、残った俺達は無言で視線を交わしていた。
ダンジョンを踏破するのは変わりなくても、この人の願いは叶えてやりたい。
そう心は決まっていた。
運命神の神官は今でもまじめに運命を読み解く研究をしてますが、それはそれとして資金稼ぎに幸運の魔術をあちこち販売していたり。