異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「祭壇確認・・・起動してテレポートしますね・・・」
「頼む・・・」
頼れる仲間はみんな目が死んでる。
カオルくんが祭壇に手を触れ、俺達は砂漠のエリアから転移した。
これで何回目の転移だっけ・・・
(知りたいかね? 昨日までの時点で99822回だ)
いかん、幻聴が聞こえて来た。
ちょっと黙ってて下さい脳内のエレガント様!
「ふはー・・・」
「ふー・・・」
「なあ、食糧も少なくなってきたことだし、いっぺん地上に戻らねぇか・・・? うまい飯食って酒飲んで騒ぎてぇ」
「どーかーん」
「流石に辛いですよねえ・・・」
溜息の満ちる安全地帯。最早アーベルさんもそれに何かを言おうとはしない。
現在三十日目。七日目までで13個見つかったピースは、十八日目の15個目を最後に全く音沙汰無くなっていた。
野山を歩いてモンスターと戦い続けるだけの徒労の日々がこんなに辛いものとは思わなかったよママン。
もう帰りたいよママン。
でもこれ俺の呪いを解くためにみんなが頑張ってくれてるので言い出せるわけないよママン。
「それでは少し遅いが、これから七階の転移ポイントに向かい、ダンジョンを脱出する。
全員いいか?」
「異議なーし・・・」
疲れた声が異口同音に上がる中、一人だけ無言の人が。
「カオル? どうしたの?」
「え? うん、いいんじゃないかな」
アルテに肩を叩かれて、びくっと震えるカオルくん。
わかるわかる、居眠りしかけてるときにやられるとそうなるよね。
さすがのカオルくんもかなりお疲れらしい。
「よし、では行くぞ。短い距離だが油断はするな」
気を引き締める。
頷いて俺達は立ち上がった。
「あー・・・ダラダラ過ごす一日いいんじゃ~~~~」
「お疲れさま・・・」
翌朝。結構いいところのレストランから出前というか料理人ごと出張して貰ってうまい朝食を食った後、溶け崩れてスライムになった俺の頭をリタが撫でてくれている。
「あ~、リタに撫でられるのってこんなに気持ちよかったのね・・・」
もう片方の手では、同じくスライムになったアルテが撫でて貰っている。
ふふふ、貴様もこの禁断の悦楽を知るがよい・・・
「・・・」
その俺達を何とも言いがたい目で見ているカオルくんとガイガーさん。
ガイガーさんはもう諦めの境地だなあれは。あるいは俺達がへばってるから剣の鍔は鳴らさないでくれているのかもしれない。
「カオルちゃんも頭撫でる?」
純真なリタの目。
カオルくんがまたしてもビクッ、と震えた。
「わ、わた・・・僕はいいかな! 大丈夫だよ!」
「ふーん? ならいいけど」
「いいじゃねえか、やってもらえよ。うらやましそうな目してたぜ?」
「そ、そんなことありませんから!」
うろたえるカオルくんにゲラゲラ笑うアーベルさん・・・とラファエルさんと座長。
樽酒を用意して朝から盛大にきこしめしてる。座長とラファエルさんはともかくアーベルさん明日の探索は大丈夫なんかな・・・
そんなことを思ってると師匠があきらめ顔で首を振った。
「まあ今夜にはわしの術で酒気を抜いておいてやろうかい。あいつもあれだけ酔うのは久しぶりじゃからの、そっとしといてやれ」
まあアーベルさんもストレス溜まってないわけないよね・・・。
「お前達もほれ、こづかいやるからリタと町で発散してこい」
え、こんなにたくさん?
「芝居見るなり、よその一座見物するなり、買い食いするなり、好きにせい。
荒くれも多いが、お前ら三人いれば大抵の相手にはどうということもあるまい」
「やったー! おでかけだー!」
喜ぶリタに思わず頬がゆるむ。
笑顔で頷きあって、俺達は町に繰り出した。
「あー、面白かった!」
「女優さんの演技がすごかったよねー」
「男の人はハンサムだったけど余り演技がうまくなかったの」
観劇した帰りの道で、今見た劇の感想を言い合う女性陣。
お姫様の批評が何気に一番シビアな気がする。
ちなみに見たのは、女三人と言う事からもわかるとおり恋愛劇。
お姫様と従僕の身分違いの恋の話だ。
俺が見ても結構面白かったがカオルくんが一番熱心に、食い入るように見てた気がする。
やっぱり女の子なんだなあ。
帰る途中でファン?に囲まれて難儀したりもしたが、楽しい一日だった。
「やるぞー!」
「おー!」
叫ぶアルテ。
追従する俺。
うーんリフレッシュできた感。
カオルくんがちょっとうらやましそうな顔をしてるが、それなら混ざればいいのに。
あ、そうだ。
「カオルくん、手を上げて」
「こ、こう?」
上げた手にハイタッチ。
「イエーイ!」
「い、いえーい・・・」
恥ずかしそうにではあるが、カオルくんも合わせてくれる。
うーん、かわいいな!
「もう、馬鹿!」
胸を軽くこづかれるが笑みは崩れない。
「・・・(怒)」
直後、みぞおちにアルテのキツイのを一発喰らって体の方が崩れ落ちたが。
アルテが慌てて覗き込んできたが、すんません、もうちょっと手加減して下さい・・・
「んー、やっぱりハズレか」
「まあこれまで半月当たりを引けなかったんだ、気分転換したからってそう都合のいい話はねえさ」
肩をすくめるアーベルさん。
本日最初の転移は岩山のエリア。これまで何度も来てるので、転移途中に何となくわかってしまうくらい馴染みになった場所である。
「それじゃ、やりますね」
「うむ」
実は今回秘策があった。
昨日劇を見ているときに考えついたやつで、夕食の後みんなに話したら師匠からも認められたのでこうして実行に移す。
「ちょっとカオル! あまりハヤトとくっつかない!」
「し、しかたないじゃないか・・・」
顔を赤くするカオルくん。こっちもちょっと顔が赤い・・・というのも、今俺達は縄で繋がっているのだ。車間距離30センチ、腰と両手足の付け根を複雑に結んでるので、ちょっと動くとどうしても体が触れあう。
「近づけば、オカマ掘るだけ ダンジョン内」 字余り。交通標語みたいに言ってみる。いやカオルくん女の子だけど。
「そのロープはコマンドワードを言わぬ限りほどけぬ。
十人くらいは支えられるから、強度もまあ大丈夫じゃろうて」
若いのー、と言わんばかりの笑顔でスレイザックさん。
アーベルさんとオブライアンさんも似たような顔してるのがむかつく。
「じゃあ行ってきます・・・カオルくん大丈夫?」
「た、たぶん。落ちても30mくらいなら多分平気だから・・・」
カオルくんも既に人外であったか・・・まあええわ。
こっちも結構恥ずかしいが、念のために後ろからカオルくんの胴体を抱え込み、密着して叫ぶ。
「ドラゴニック・スクランダー!」
瞬間、俺の背中から赤い翼が広がった。
物語の中で真なる赤竜ヘスヴェロスさんから貰った力。
紅の翼ドラゴニック・スクランダー。
本来なら空中に飛び上がって呼び出したスクランダーと合体するのだが、力の本質が俺の中にあるせいか、こうして直接背中から生やすことも可能なのだ。
こんなのおかしいやん! 俺はデモゴディΣであってオメガデモゴディやないんやぞ!
あの空中に飛び上がって合体するシークエンスが最高なんやないか!
「・・・ハヤトくん、なにか?」
「いえ何でもありませんオブライアンさん」
葛藤を隠しつつ(隠せてないけど)、俺は背中から火を吐いてカオルくんと共に空中に舞い上がった。
「近づけば オカマ掘るだけ トンネル内」は神奈川県のどこかの観光地に本当にあった交通標語。
見た瞬間親と一緒に爆笑したのを覚えてますw
なお当時小学生の妹はきょとんとしていましたw