異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

123 / 415
第十二話 法律の上に拳法がある

 大空つらぬく紅の翼。

 ダンジョンの中でも空は青く、どこまでも遠い。

 

「うわぁ・・・」

 

 この速度を初めて体験するカオルくんが感嘆の声を漏らす。

 わかる、わかるぞその気持ち。

 とは言え感嘆しているばかりではなく、両手を組み合わせて印を作る彼女。

 両手首には見慣れない編み込みの腕輪。

 紅の翼とこの腕輪が俺達の秘密兵器だった。

 

 ドラゴニック・スクランダーについては今更言うまでもないが、腕輪の方は第八階層の探索が始まった辺りでペトロワ師匠が作り始めたもの。

 本人曰く間に合わせだが、魔力感知の術を強化するものらしい。

 つまり、ごく単純にスクランダーで高速移動しつつ、カオルくんが祭壇の場所を探知するという案である。

 

 単純なのに今まで実行しなかったのは単に思いつかなかった・・・というわけではなく、俺達二人だけで行動してたら危険なのがひとつ。

 この第八階層、野外を模しているせいかあちこちのエリアで空を飛べる魔物も結構多いし、一回などは差し渡し10mくらいはありそうな巨大な鳥に襲われたりもした。

 アラビアン・ナイトのロックとは恐れ入る・・・サンダースウォードと俺の《加護》がなければ逃げるしかなかっただろう、あれは。まあガイガーさんなら何とかした気もするがそれはおいておく。

 

 それ以外にも岩を砕くレベルの水鉄砲を撃ってくる蛙や、つぶてを空気銃の要領で飛ばしてくるパンダと狼のあいのこみたいなやつ、電撃を飛ばしてくる金の狼など、遠距離攻撃を持つ魔物も少なくはない。

 スクランダーならともかくミストヴォルグのプロペラ飛行だといい的だ。

 実際岩山でそうやって仲間を移動させることもあったのだが、何度かピンチになりかけたし。

 何十回と探索を繰り返してそいつらへの戦術を身体で覚え、俺とカオルくんの二人だけでも対応できると確信できなければ、師匠とガイガーさんも許可は出さなかったろう。

 

 魔力残量さえ気にしなければ俺もカオルくんも火力はめちゃくちゃ高い。

 そして魔力結晶はこれまでの戦いで、それこそ使い切れないくらいに溜まっていた。

 神を讃えよ! その名も砲兵! 聞け、この戦場音楽を!

 閑話休題(それはさておき)

 

 後もう一つは互いの体をロープで縛り付けて空を飛ぶという単純な事を誰も思いつかなかったせいでもある。

 短時間か、あるいはリタならともかく長時間は俺の腕がしびれて無理!だからね。

 特にアルテは・・・いえ、なんでもありません。

 

「そう言えばハヤトくんはどうしてこんな事思いついたの? やっぱりロボットアニメから?」

「ま、まあそんな感じかな・・・」

 

 ちょっと冷や汗を浮かべる俺。

 言えない、昨日見た劇で、主人公とヒロインが身投げ心中しようとしたシーンからの発想だなんて・・・!

 

「ふぅん・・・あ! 見つけたよ! ちょっと戻って!」

「! 了解!」

 

 開始五分後、俺達は見事に祭壇を見つけた。

 みんなの待ってるスタート地点から二キロくらいはあるが、単に移動するだけなら十分もかからない。

 ガッツポーズをしながら俺は翼を翻した。

 

 

 

 そこから先の探索はトントン拍子に進んだ。

 なんせ今まで下手すると半日かかってたのが2、30分で済むようになったのだ。

 試行時間が短ければそれだけ当たりを引くまでの時間も少なくなるし、何よりストレスが大幅軽減!

 

 まあ消費する魔力結晶は大幅増加!だが、それだけの価値はあった。

 探索時に遭遇するモンスターを俺の《加護》とサンダースウォード全力ぶっぱで倒せば、新しい燃料も手に入るしな。

 

「サンダースウォード!」

「ミサイルドリル!」

 

 火を吐く人喰いトンボ(ドラゴン=フライ)の群れをカオルくんの渾身の雷撃が焼き尽くす。

 範囲から逸れた僅かな撃ち漏らしを俺の貫通弾が処理し、戦闘は瞬時に終わった。

 MOLIT●連打ー!(派生作品感)って感じだ。空中の香料を電撃で焼くとかそう言う奴でもいい。

 落ちていく死体のシルエットが薄れ、キラキラした魔力結晶になる。

 

「ロケットパンチ!」

 

 そこですかさず発射される俺の両腕。手には昨日調達しておいた投網。

 落ちていく魔力結晶の間を駆け巡り、9割くらいを回収して戻ってくる。

 

「便利だなあ」

「いやまあ、使い方次第だけどね」

 

 よせやい、感心されるとほっぺたがリンゴみたいになっちまうじゃないか。

 

「それじゃ行こうか。水平飛行いくよ」

「あ、その・・・」

 

 うん? カオルくん? 

 後ろ上方から(ロープでつり下がってるので)だから顔は見えないが何か戸惑ってる感じ。

 

「その・・・仮に。仮にだよ? 結婚して欲しいって言われたらどうする?」

 

 ファッ!?

 その瞬間、体が揺れた。

 

「うわっ!」

「わあっ!?」

 

 機体制御をミスり、バランスを崩すが何とか空中でのホバリング体勢に戻す。

 

「ご、ごめん」

「い、いや、こう言う状況で変な質問したボクも悪いから・・・」

 

 しかしカオルくんと結婚・・・?

 いや待て、女帝ハルギア様に昨日の恋愛劇、その辺からの発想とかそう言う事だろうか。

 「言われたら」ってからにはカオルくんが俺に求愛するって事ではないだろうしな。

 

「えーとその、一般論?」

「・・・そ、そうそう! 一般論! 一般論だよ!」

 

 何故か慌ててるがまあそれはどうでもいい。

 しかし結婚かあ。ぴんと来ないよな。この世界では俺やカオルくんも結婚適齢期なんだろうけど、現代日本的にはあと十年以上先だし。

 晩婚化がはかどり少子高齢化進行待ったなしの現状、皆様いかがお過ごしでしょうか!

 閑話休題(それはさておき)

 

「まあ・・・そうだよね。ボク達の年で結婚って言われるとぴんと来ないか。

 それこそ明治のころなら13才で結婚ってのも珍しくはなかったみたいだけど」

 

 マジかー。

 そういえば昭和に時代の下った日本国拳法、もとい日本国憲法でも昔は男の結婚年齢は18だけど女は16だったみたいだし。女子高生が結婚して子持ちになったテレビドラマがあるって母親が言ってた気がする。

 こげど●ぼ・・・じゃなかった、赤とんぼでも「お手伝いのお姉さんは十五で嫁に行って行方知れずだよ」ってフレーズがあるし。

 

「ま、まあともかくそういう事考える年齢じゃないって事だよね、ボク達!」

「そうだなー。まあこっちだと商人とか職人は30か40で身代固めてから年の差婚ってのも珍しくはないそうだし」

 

 商人も職人も下積みが長いから、ある程度経済的な環境を整えた上でないと結婚が難しいのだそうだ。大変やなあ。

 

「・・・」

「うん、何?」

「・・・何でもないよ! 早く探索を再開しよう!」

 

 おっと、そうだな。無駄話してるひまはないのだ。

 俺は体を水平に戻し、飛行を再開する。

 

「・・・まったくもう。そんなだから・・・」

「何か言った?」

「何でもないってば!」

 

 

 

 そして翌日、おやつの時間ごろ。

 

「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 歓喜の余り絶叫する俺。

 飛行探索を開始して一日半、約六十回ほど。ようやく俺達は二十日ほどぶりに新たなエリアに出現したのだ。

 

「春山でも夏山でも秋山でも冬山でも草原でも砂砂漠でも岩石砂漠でも岩山でもジャングルでも沼沢地でも荒野でも極地でもない! 未知の、最後のエリアだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 力の限り絶叫するが、それを咎める仲間は一人もいない。

 ガイガーさんの顔にさえ、明確にほっとした表情が浮かんでいる。

 この人がこれだけ表情出すって滅多にないことだぞ。

 

「それにしても」

「ん?」

「『サイコロ』エリアって言うからなんだと思ってたけど、あれホントにサイコロね・・・」

「ですねー。ガイドブックにはありましたけど思わず目を疑いますよ」

 

 同感である。

 そんな俺達の視線の先には、草原の中にぽつんと立つ灰色の立方体。多分花崗岩か何か。

 ただし、縦横高さが1kmくらいあるっぽい。

 

「ここのエリアだけは特殊でな。祭壇はあのサイコロのてっぺん中央に必ずある。

 そのかわり、飛行魔法も同種の《加護》も使わずにあのサイコロを昇らねばならないが」

 

 ・・・Pardon?(無駄にいい発音)

 

「だからあのサイコロのてっぺんじゃ。あそこに、空を飛ばずに昇らねばならん」

 

 マジッスカ。

 俺の顎がかくーん、と落ちた。




ちなみに探索にかかった日数は実際に電子ダイスで16面ダイスを振って判定しております。
1から16の出目が揃うまで試行回数138回、一日2.5エリア探索だと二ヶ月、一日一エリアだと半年近くかかる計算ですね。
くだんの解散したパーティは、多分一日1エリアくらいのペース、かつ盛大に事故って心くじけたんでしょうw


MOLITO(モリト)はウィザードリィの魔術師系三レベル呪文。
D&Dのファイアーボールであるマハリトに比してライトニング相当の呪文なのですが、
「効果範囲が一直線→全グループに効果があるが、それぞれのグループの半数の敵にしか効果が無い」という表現をされたことによりこれ使えねえなとなって、以降の作品ではただの一グループ呪文に→威力の強いマハリトしか使われなくなった悲劇の呪文。
しかし一部の派生作品では「威力は弱いが敵全体を攻撃できる呪文」として再調整されており、その場合は本来最高レベルまで使用不可能な全体攻撃呪文として、作中のように数だけは多い敵に対してはかなり使える呪文になったりします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。