異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「聞いてないぞあんなワイバーンの群れ! 前に変身したりハンググライダーで飛んでいった人、よく食われなかったな!?」
「いや、あれはわしも知らん。確かにこのエリアでワイバーンと遭遇したという話はあるが、わしも会ったことがないくらいに遭遇頻度は低いはずじゃ」
「本当だ。ガイドブックにもそう載ってますね」
「じゃあなんなんだよ、あれ・・・」
「はいはい動かないでねー」
がっくりと肩を落とす俺を、オブライアンさんが(配信を続けつつ)治療してくれる。
「ハイ終了。痛むところはある?」
「体は痛くないけど心が痛い」
「ドンマイ」
苦笑するアーベルさん。ガイガーさんがぽんぽんと肩を叩いてくれる。
ええいそれでもムカムカが収まらん! 月まで届け怒りの拳!
「え」
「は?」
「おいおいおいおいおい」
「すごい! すごいよ何これ!? これもニンジャの技かい!?」
他の面子が呆然と、オブライアンさんがはしゃいでいる。
でも一番呆然としてるのは俺だろう。
なんで突き上げた拳が何百メートルも伸びてサイコロ岩に炸裂してんの?
そう呆然としていたが、すぐに正体に思い至った。
無窮拳。
トンデモロボットアニメとして有名な「轟世のアーシリオン」の代表的必殺技。
一言でいえば「ゴ▲ゴムのピス卜ノレ」だが、こいつは桁が違う。
ホントにどこまでも伸びるのだ。
少なくとも月までは伸びる。マジで。
俺の怒りが無意識にそれを発動させたと言うことなのだろうか・・・
「・・・これ使えば、私たち全員上まで運べるよね?」
そろそろ耐性が出来てきたのか、一足先に我に返るアルテ。
その言葉に、俺は無言で頷いたのだった。
サイコロ山の中央、祭壇の横から流れ出す一筋の川。その川べりに立ってスレイザックさんが袋を取り出す。
それを無言で眺めている俺達。
「久しぶりだな、コリー・・・また来たよ。ヘイムの奴がくたばった。
連れて来たから仲良くやってくれ。
ヘイム、随分苦労したからな、感謝しやがれよこの野郎・・・」
そう言って袋を開き、遺灰を川に撒く。
その頬に涙が流れていることに気付いた。
・・・ひょっとして。
ひょっとしてだが、スレイザックさんもコリーさんのことが好きだったんじゃなかろうか。
先を越されたのか、あるいはあえて親友に譲ったのか・・・。
「・・・」
やめとこう、邪推だ。
それでもスレイザックさんの涙は止めどなく流れ続けた。
どれだけ経ったろうか、太陽のない地下では時間の経過はわからない。
それでもスレイザックさんはやがて涙をぬぐって振り向くと、深々と一礼した。
「感謝する。吹っ切れたよ・・・色々とな」
色々、か。本当に色々あったんだろうな。
俺達はそれ以上何も言葉を発さず、メダルを完成させると次のエリアの帰還ポイントから地上に戻った。
地上へ戻ると、拍手で迎えられた。
帰還ポイントの使用資格を得た時と同じく、配信を見てた人が駆けつけてくれたらしい。
何か照れるね。スレイザックさんも苦笑いしていた。
野営地に戻ると、こちらに残っていた観客の人からもう一度大喝采を受けた。
ガイガーさんとかスレイザックさんとかサイン攻めに遭ってた。俺も結構来た。
漢字で書いたらめちゃくちゃ喜ばれた。
「漢字うまいですね」とか言われたから多分オリジナル冒険者族と思われてはいないだろうけど。
何かこうあるのかな、異世界の文字に対する憧れとか。
あれこれ適当に手を振ったりしつつ舞台裏。
スレイザックさんはもう一度礼を言ってから、身につけてた装備を外し始める。
ブーツまで脱ぎ始めたので慌てて止めた。
「いや、これも報酬のうちじゃし」
まあそうだけど裸足で帰るつもりですか?
「別にそれでも構わんが、サンダルくらいは用意してあるよ、ほれ」
あ、そういう・・・こう言う用意の良さも上位冒険者の証なのかなあ。
「いやあ、人によるんじゃないですかね。その辺仲間任せで自分の武具の手入れしかしない
あはは、と笑うオブライアンさん。パーティ組んでなきゃ生きていけないタイプだなその人・・・。
「まあ斥候なんてやってたら、自然と用意周到になんだろ」
こちらも笑うアーベルさん。
スレイザックさんも笑って頷いていた。
「それではの。大変世話になった。恩は忘れんよ」
チュニックにズボン、サンダルの気軽な格好になったスレイザックさんはもう一度礼を言うと、軽い足取りで野営地を去っていった。
いやー、大変な経験だったけど、スレイザックさんいなくても、むしろいなかったらもっとひどいことになってただろうから、やっぱり受けて正解だったな。
「だねー」
テーブルにだるんと広がるたれアルテ。
その他の面子も解放感と疲労感が見て取れる。
「まあ今日はゆっくり休みな。丁度昼時だし、いいとこに飯でも食いに行くかい?」
「行く行くー!」
「わーい!」
「チュー!」
たれたアルテが即座に復活し、リタは喜びハムリスは足元駆け回る。
微笑ましさに頬をゆるめつつ、俺達も立ち上がった。
それから俺達は第九階層の攻略にとりかかった。
ここもちょっと変わったダンジョンで、多分差し渡し10kmくらいの大草原の中に無数のモンスターがうろついていて、その中心部に3kmくらいありそうな大宮殿。
待って、ちょっと待って。江戸城だって敷地は縦横1kmちょっとだよ? この世界では巨大都市と大都市の間くらいに入るらしいイレマーレの町全部でも2kmくらいしかないよ?
「どれだけでかい宮殿なのよ・・・」
「壮観ですねえ」
のんきに宮殿を映しているオブライアンさん。
無限ループしてたこの一月客足が鈍ってたのだが、飛行探索を始めた昨日からわっと客が戻り、今では前以上の賑わいらしい。
いいけどさあ、何かティラノサウルスみたいなのがうろついてるのが見えるんだけど・・・
「ああ、ここは亜竜系統のモンスターが多いみたいだね。ワイバーンや
うわーい、ドラゴン系モンスターの総合商社やー。
「宮殿の中で『宮守の鍵』を手に入れると、そこのほこらから地下に降りて、『チカテツ』、移動する箱で地下道を通って、宮殿の中心部に直行できるらしいですね」
「ホントゲームみたいなショートカットだね・・・」
「それな」
まあ存外黄金女帝様が使ってた専用ルートなのかもしれんが、まるで攻略して欲しいと思ってるみたいだな・・・。と言うか地下を動く箱だからって地下鉄ってネーミングはどうなのよ。
ゲームらしいと言えば、この階層からアイテムが落ち始めるようになった。
耐火の指輪、頑丈そうな魔法の兜、エルフのチェインメイル、
ちなみにスレイザックさんの装備は基本的に俺が全部身につける事になった。まあガイガーさんたちには自前のがあるし、男がつけてた装備を女の子に渡すわけにもいかないし。弓もどっかで習った方がいいかな・・・。
第九階層攻略に関して言う事はあまりない。
魔力結晶と買いためておいた負傷治療のポーションをガシガシ消費してごり押しで進んだからだ。
「すごいです! 撮れ高足りてますよ!」
オブライアンさん、あんたそんな言葉どこで覚えてきたの!
まあカオルくんの電撃と俺の《加護》による攻撃が乱れ飛ぶ戦場だから、見栄えが良いのはわかるけどな!
オブライアンさんの水弾も、魔力使い放題だと割と洒落にならん威力があるし!
それでも
そして宮殿最奥。
十階層に通じる最後の扉に厄介なトラップが仕掛けられていた。
扉というか不可思議な壁というか、無数の歯車が絡まったそれは機械時計の中のよう。
何と言うかこう、古いSFやスチームパンクに出てくる歯車機械みたいな?
しくじったら転移の魔法陣が発動して、地上に戻されるんだとか。
タチ悪いなおい!
「ふむ・・・みんなちょいと下がってろ。どうやら俺の出番だ」
ガイガーさんが無言で頷き、俺達もそれに従って数歩下がる。
それでもアーベルさんなら・・・アーベルさんなら何とかしてくれる・・・
アーベルさんが歯車の化け物をあちこちいじると、ややあってギリギリギリ・・・と軋みながら歯車が動き出した。
「へへっ、思わず熱中しちまった。こう言うのも久々・・・!?」
アーベルさんの言葉が途切れる。
歯車が左右に分かれて両側の壁に引っ込み、通路の向こう側が見える・・・と思った瞬間、アーベルさんの顔がぐにゃりとゆがんで・・・
(魔力の波動・・・!?)
「何これ!?」
「なんだと! 俺はしくじってねえぞ!」
「固まれ! 飛ばされ――」
ガイガーさんの言葉を最後に、周囲が暗転した。