異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第十三話 とらわれの人魚姫

「・・・!」

 

 俺が驚いている間に、『しるし』をつけられた男は食事の盆を置いて部屋を出て行った。

 バタンと閉まる扉と、鍵がかかる音で俺は我に返る。

 

「・・・」

 

 魚人妖精(オアンネス)の女性は悲しそうに俯いたまま。

 ちらり、と扉を見る。

 鉄の扉にはやっぱり覗き窓。

 

(ドラマや映画の刑務所とかではよくあるよなー、ああいうの)

 

 彼女の座るソファの後ろに移動する。

 その間も一切の足音は立てない。

 当然だ、今の俺は忍者ロボ・ミストヴォルグなのだから。

 

「静かに。声を立てないで。わかったらうなずいて。いい?」

「!?」

 

 後ろから小声で話しかける。

 彼女はぎょっとしたようだが、何とか声は抑えて頷いてくれた。

 

「今から姿を見せるけど、驚かないで」

 

 また頷く。

 それを確認して、俺は光学迷彩・・・ミストヴォルグの特殊能力の一つ、ホログラフィックミラージュを解除する。

 途端、魔力消費の負担がぐんと減ったのがわかる。やっぱきつかったか、これ・・・。

 

「いいよ、振り向いて」

「・・・!」

 

 大きな目が更に大きく見開かれた。

 まあ驚くよな。

 

「時間が無いから手短に言うよ。オブライアンさんってオアンネスの人があなたの『しるし』に気付いた。俺は彼に協力している。同じ一座の仲間なんだ。

 あ、前を向いたまま話をしていてくれ。怪しまれるとまずいから食事も」

 

 こくり、とまた頷く。

 それを確認して、俺は覗き窓からの死角になるソファの影にしゃがみ込んだ。

 カチャリと食器の音がして、食事を始めたのがわかる。ちらっと見たが結構いいもの食ってんな畜生。最近は干し肉のスープと挽き割り麦のおかゆばかりだぜこっちは。いやアルテが作ってるから結構美味しいけど。まあそれはさておき。

 

「それで、どういう経緯で捕まったんだ? あ、俺はハヤト。ダン・ハヤトだ」

「タウハウシンです。長いのでタウでいいですよ」

 

 タウさんの話を要約すると、数ヶ月前東の海で捕まって、箱に入れられてあちこち運ばれてここに来たのだという。

 本来はどこかにまた売り飛ばされる予定だったのだが、何故か当主の息子に気に入られてこの部屋に閉じ込められているのだとか。

 

(・・・まさか)

 

 頭の片隅に浮かび上がったのは先ほどの当主とその息子とおぼしき会話。

 

『とうさん! 僕はオードリーを愛しているんだ!』

『馬鹿を言え! お前をあんな女にくれてやれるか! やり捨ての愛人ならともかく!』

『オードリーはそんなんじゃない! 彼女は・・・!』

 

「あの、ひょっとしてオードリーというのは・・・」

 

 その名前を口に出すと、食器の音が一瞬止まった。その後に疲れたような声。

 

「・・・当主の息子のチャールズだと思います。私をオードリーと呼んで、求婚しているんです」

「父親らしき人間と口論してましたけど、じゃああれが当主か」

「当主のゼブですね。一度だけ見ましたが、人当たりが良さそうに見えて冷酷な男です」

 

 冷酷か・・・ん? そもそもなんでタウさんはここに買われてきたんだ? まさか・・・

 

「はい。ローリンズ商会は奴隷を扱っています」

「・・・!」

 

 確かこの世界でも奴隷は違法だぞ!

 

「他に奴隷はいるの?」

「地下にいました。今はわかりません・・・あっ」

 

 ガチャガチャと鍵を開ける音が響く。

 食事を運んできたあいつがやってきたのだろう。 

 俺はホログラフィックミラージュを再起動させながら更に小声で彼女に話しかける。

 

「必ず助けに来る。それまで待っててくれ」

「はい」

 

 しっかりした声で彼女が頷いた。

 

 

 

 今度も食事を運んできた男の後ろにくっついて部屋を出る。

 屋敷を探して奴隷売買の証拠を見つけたいところだが、魔力が余り残ってない。

 ここは素直に脱出するのが賢明だろう。

 スパイ映画とかサスペンスものだと、こういうところで欲張ると大体ろくでもないことになる。俺は詳しいんだ。

 

 裏口から脱出し、先ほどのように路地でホログラフィックミラージュ(と、ミストヴォルグのエミュレート)を解くと、俺はフラフラする足取りで一座の野営地に向かった。

 あかん、余裕見たつもりだけど思ったより魔力の消耗が激しかった・・・素直に脱出しておいて正解だったな・・・。

 

 

 

 結局俺は野営地の入り口でばったり倒れた。

 

「なんだぁ? また行き倒れかよ。近頃多いなぁ・・・おーい、アルテ! 手伝ってくれ!」

 

 遠くでアーベルさんの声が聞こえる。

 すいません、どっちも俺なんです・・・

 一悶着の後ペトロワ師匠に幻影変装の術を解いて貰い、アルテの手を借りてステージ衣装から普段着に着替え、木の根元にぐったりと寄りかかる。

 リタがお水を持ってきてくれて、アルテがうちわでパタパタあおいでくれてる。

 ああ俺この世界に来て良かったわ・・・

 俺に気を遣ってくれてるのか、普段より柔らかい音色でラファエルさんがバイオリンをかき鳴らす。

 

「で、何があったのかですぞ? レディ・ペトロワが関わっていると言うことはそれなりの理由があるのでしょうが」

「うん、そうなんだけど、二度手間になるからオブライアンさんが帰ってきてから・・・」

「帰ってきたぞ」

 

 いいタイミングだな! 出待ちしてたのか! まあアーベルさんやラファエルさんならともかく、オブライアンさんがそう言う事はしないか。

 

「何かそこはかとなく馬鹿にされた気がするな」

「わがはいもですぞ」

 

 アーアーキコエナーイ。

 オブライアンさんが呪文を解いて貰うと、多少体力が回復した俺も立ち上がり、焚き火の周りで車座になって夕食を取りながらいきさつを話し始めた。

 

「まずは僕から。酒場で聞いてきた話ですが・・・」

 

 オブライアンさんはローリンズ商会のことを一通り話してくれた。

 元は牧場主だったこと。牧畜から、家畜の売買に手を出して急速に大きくなったこと。

 抱えている私兵に腕利きが多く、他の商会とトラブルになったときに一方的にやっつけてしまったこと。

 

「・・・そう言う抗争って結構あるんですか?」

「結構はないがたまにはあるな」

 

 こええなこの世界。山賊相手ならともかく商会同士だろ? ヤクザの出入りかよ。

 しかし私兵が強いのか・・・奴隷商人という裏を知っていると勘ぐってしまうな。

 

「後は後ろ暗い噂が結構聞けましたが、これに関しては何とも」

「酒場でちょいと話聞いてきてそれなら上等上等。で、ハヤトのほうは?」

「それなんですが・・・」

 

 今度は俺が見聞きしてきたことを話し始める。

 話が進むにつれて、みんなの顔がこわばっていくのがわかった。

 

「そんな。タウハウシンって確かに言ったのかい?」

 

 彼女の所まで話が進むと、オブライアンさんがショックを受けた声で聞いてきた。

 魚人妖精の顔はわかりづらいが、それでも動揺しているのがわかる。

 

「ええ。タウハウシン、タウと呼んで下さいと。・・・まさか知り合いですか?」

「・・・妹なんだ」

 

 その一言に、一座の空気が更に重くなった。

 

 

 

 その後短く話すべきことを話すと、しばらく沈黙が落ちる。

 

「どうしましょうか。助けて上げたいけど・・・」

「ハヤト君の力で連れ出すのは無理かい?」

「こっそり、という意味でなら難しいです。消えるのは自分にしか使えないので」

 

 ちらり、とアーベルさんの方を向くが、肩をすくめられた。

 

「俺だって無理だよ。その子を隠せるような魔法のポケットがありゃ別だがね」

 

 つまり潜入自体はできるんですね、パねぇ。

 

「無理矢理に連れだして、騒ぎになったところであたしやガイガーさんが突入するのは? いくら強いって言ってもガイガーさんに、ペトロワおばあちゃんが支援してくれたら勝てるでしょ」

「あっちはこの町の大商会だ。一つ間違えりゃ俺達の方が悪者だぜ」

「うー・・・」

 

 ペトロワさんとガイガーさんは沈黙。オブライアンさんもすまなそうにしてはいるがいいアイデアは出ていないようだ。

 くっくっく、と笑う声。

 視線が集まったのは例によって蒸留酒の瓶をラッパ飲みする座長。

 

「何を迷うことがあるんだい? ちょうど今この町には正義の勇者様がいらっしゃるじゃないか。そのお力を借りるとしようよ」

「え」

 

 それが誰の事か理解した瞬間、俺の頬が盛大に引きつった。

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