異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
気がつくと視点が低かった。かなり小さな体らしい。
あれ?この庭とか遊具とかどっかで見覚えが・・・
(おっと)
てててっ、と庭を走る『俺』。
うれしさの感情が心の中に溢れる。
駈け寄ったのは保育士さん。黒いロングヘアで優しそうな顔立ちで・・・ああああああああああああ、まさかぁ!?
(どうしたの?)
カオルくんの思念が! まさかとは思ったけど見ないで! 見ないでぇ!
(え? 何?)
そうこうする間にも体の持ち主は保育士さんの手を握り、満面の笑顔でのたまう。
『●●せんせぇ、大きくなったらぼくとけっこんして!』
うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
(あ、ああそういう・・・)
(殺せ! いっそ殺してくれ!)
俺が精神的に転がり回っている間にもシーンは続く。
『ふふふ、そうね。大人になってもハヤトくんが私のことを好きでいてくれたら?』
『だいすきだよ! ●●せんせぇのことずっとすきだから!』
ぐわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
羞恥の刃がノコギリと化して俺の一番センシティブな部分を切り刻む。
ギザギザハートの葬送歌!
(あー・・・うん、小さい頃はそう言う事もあるから・・・)
(やめてぇぇぇぇ! 理解される方がよっぽど辛いの!)
その後十数分拷問は続き、無事俺は死亡した。
(大丈夫?)
(只今この魂は活動しておりません。霊波番号をお確かめの上お掛け直し下さい)
(・・・結構元気そうだね)
精神は完全に死んでるよ? 残ったデータベースだけが機械的にネタを振ってる状況なのさ!
(業が深いなあ)
(オタクとはそう言うものです・・・オタクついでにちょっと思いだした)
(何を?)
チャクラ、という単語である。
要はセフィロトとか曼荼羅とかタロットとか、そんな感じのオカルト系オタク知識だ。
(チャクラって、ヨガとかのインドの概念だけど、体の脊椎に添って存在する人体の重要ポイントって設定なんだよ。経絡秘孔というか、神経と血管の集積点とか。まあそれよりかなりオカルトで、超能力とかとも絡んでくる概念だけど)
(ふむ)
んで、ヨガにも色々あるのだがその中にクンダリニー・ヨガと呼ばれるものがある。
尾てい骨にある生命エネルギー・クンダリニー(とぐろをまく蛇という意味らしい)を脊椎の一番下から頭頂まで動かし、悟りや超能力を得ようというものだ。
現実ではエクササイズなどに応用されているが、本来は超能力を得て自分を高めようというあれで、オカルト的なあれこれでは概ね超能力の源とされている。
この時生命エネルギーが通過する七つのチェックポイントがチャクラなのである。
下から順番にチャクラを目覚めさせ、回転させる(チャクラとは輪とか回るという意味である)と、それぞれそれに応じた超能力を得たり、チャクラの司る肉体や精神の部位が活性化する。
(で、ハルギアが言ってた「
(初恋?)
(ちげーよ! 生命とか情熱とか、生殖の力とかそう言うのだよ!)
思わず大声でつっこむと、意味が伝わったのかカオルくんが顔を赤らめる気配。
(ああそういう・・・だからハヤトくんのその、初恋が見えたわけだね?)
だから初恋もうやめて! 俺のライフはゼロよ!
(ご、ごめん)
ぜーはーぜーはー。
俺は荒く息をつく。
魔除けだから呼吸はしない上に、今はその魔除けの体すらないが、気分の問題だ。
(しかし何だろうね、この状況。これが試練なのかな?)
(だとしたらカオルくんじゃなくて俺が試練受けてるのはおかしいと思います! ・・・カオルくんの方も体がない感じ?)
(そんな感じだね。幽体離脱ってこんななんだろうか)
そう言えば師匠が言ってたな。ダンジョンを攻略するには、破壊するにしろ制御するにしろまずコアを支配下に置かなくちゃいけなくて、その過程で自分の心象風景に取り込まれたりもするって。
多分ここはそう言う精神世界の中なんだろう。
(じゃあこれは試練と関係ないダンジョンのあれなのかな)
(そう言う現象はコアに起こるし、コアは今あのドラゴンの中だから、多分ハルギアが用意した似たような現象・・・お?)
俺にとっての拷問が終わった後、白く染まっていた空間が再びぐにゃりと動いた。
(これは・・・)
どこかの剣道場みたいな風景。大人から子供までが竹刀を振ったり、打ち合ったりしている。
やはり視点が低い。
(っ)
しゃっくりをするようなカオルくんの声。
あ、これは・・・
そんなことを考えている間にも視点がたったった、と動く。
行き先は師範か師範代らしい、ヒゲの優しそうな中年男性。
『どうしたね、カオル』
『うん、ぼく次のたいかいでゆうしょうする! そうしたらせんせぇのおよめさんにしてほしいの!』
(うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?)
今度はカオルくんの絶叫が精神世界に響き渡った。
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
カオルくんが死んだ! このひとでなし!
(死んでないよ!)
がばり、とイメージ的に起き上がるカオルくん。
精神的には死体になってたと思うけど。
(うんまあそれは・・・)
(きつかったよね・・・)
(うん・・・)
二人は"経験者"という一点で心を通わせた。
生き残った者達にとってそれほどまでに過酷な戦場であったのだ。
(ん?)
始まったときと同じく、視界が一転した。
最初の部屋と同じくらいの色のない空間。扉から覗き込んだのと同じ光景だ。
俺は魔除けの、カオルくんは自分自身の身体を既に取り戻している。
ちらりと後ろを「見る」と、今は閉まっているが入って来た扉があるのが感じられた。
前の方にも同様の扉があるのが知覚できる。
「行こうか」
「うん」
頷きあうと、俺達は次の部屋へ歩き始めた。
「・・・ねえ、まさかとは思うけど、次の部屋もこんな感じで恥ずかしい過去の暴露大会だったりしない?」
「それは・・・勘弁して欲しいなあ」
俺達はしみじみと、もう一度頷きあった。