異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
最後の扉を開けてダンジョンのラストルームに入る。
戦いはその瞬間に始まった。
野球場とかサッカースタジアムとか、あるいはそれよりもっと広い空間。
その中央に高さ20mほどの水晶の繭。
俺達が足を踏み入れた瞬間にぴしぴしっと高い音を立ててひび割れが走り、繭が木っ端微塵に砕ける。
「GVOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
咆哮。
真なる竜の咆哮は魂を砕くと言うが、こいつもそれに近いものがある。
「ドラグランダー・クロス!」
叫ぶと同時にカオルくんの了承も待たず、展開した翼から火を吐いて空に舞い上がる。
直後、黒い光が俺達の足元を覆い尽くした。
「ブレスか!」
「ありがとうハヤトくん、助かった・・・とっ!」
カオルくんの礼に答えを返すヒマもなく、俺はジグザグ飛行に移行する。
混沌のドラゴンがブレスを吐きつつ、首を動かしてこっちを追撃してきたのだ。
数十秒か、数分か、それとも十数分か、必死にランダム軌道っぽいものを取り、ジグザグ飛行を繰り返して黒光のブレスを回避する。
カオルくんが合間合間にサンダースウォードから雷光を放つが、どれくらい効果があったものか。
ともかくやっと黒い光が途切れたとき、俺は初めてまともにそいつの姿を見ることができた。
頭のてっぺんから尻尾の先までまっくろくろすけ。
まず第一印象はそれだった。
「のっぺらぼうの龍だ・・・」
後ろ足で立った状態で体高20mほど。いかにもドラゴンという頭部と翼、尻尾。
全身がツヤのない黒で、そのシルエットさえも判然としない。真っ黒なのだが体表が常に渦巻いているのがわかる。両目だけはルビーのような真紅。
混沌の竜と呼ばれるにふさわしい姿。
「行くよ!」
「おう!」
返事をする前に体が――いや、《加護》が動き、紅の翼が火を吐いて青玉の騎士が金剛石の龍に突貫する。
カオルくんから伝わってきた強い意志に、俺が反射的に対応した。
先ほど咄嗟に回避したのはカオルくんより俺の反応の方が早かったが、能動的に動く場合はカオルくんの方が積極的というか果敢だ。
能動のカオルくんに、受動の俺と言った感じか。
二人羽織で身体を動かすのは不安もあったが、これならいけるか?!
「たああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
周囲を流れる風にまぎれて、カオルくんの叫びがエコーを起こす。
青玉の盾で体をカバーして突進するシールドバッシュの構え。
盾の影に構えるのは黒騎士姫の魔剣サンダースウォードではなく、水晶の刀身を持つ湾曲短剣、真実のジャンビーヤ。
「!」
龍のあぎとが再び開く。喉の奥に超高密度の混沌と魔力の気配。
「?」
「!」
一瞬で意志疎通が完了する。
回避するか?と問うた俺にこのまま、と言い切るカオルくん。
次の瞬間、混沌の黒い光のブレスが俺達を包み込んだ。
青い人間が黒く輝く吐息の中に消える。
ちょこまかと逃げ回ったが、正面からまっすぐ突っ込んで来てはブレスを下さいと言っているようなもの。
これを吐ききった後には、最早なにも残ってはおるまい。
そうすれば――
そう考えた瞬間、龍の眉間に衝撃が走った。
よっしゃあああああああああああああああああああ!
やったぞ、ざまあみろ!
カオルくんのシールドチャージは、見事黒光のブレスに耐えきった。
そして龍の顔面直前で急上昇、眉間に真実の短剣を叩き込む。
こんな防具作ったハルギアすげえなお前! 少なくとも能力だけは認めてやるわ!
「GWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!」
響く龍の苦悶の叫び。
眉間から全身にひびが入り、両前足で額を抑えてのたうち回る。
その間にもひびは深く、広くなっていき・・・
「!?」
ぱりん、と言う感じで龍が割れる・・・かと思った次の瞬間、無数の黒い破片が体表から剥離し、チリとなって空気に溶ける。
その下から現れたものを見て、俺もカオルくんも一瞬言葉を失った。
「ダイヤモンドの龍だ・・・」
体高20mほど。いかにもドラゴン。ルビーのような真紅の瞳。そこは変わらない。
ただし全身がダイヤモンドのようにきらめいている。
まさしく
がきん、ともの凄い手ごたえ。
サンダースウォードに持ち替えたカオルくんの一撃が、金剛の龍の首筋に斬り込んだ音。
「っ・・・!」
手がしびれたのか、カオルくんが剣を引き戻す。
カオルくんの思念に従って急速離脱すると、一瞬後巨大なダイヤモンドの爪が俺達のいた空間を薙ぎ払った。
奴の取りあえず前足の届かない距離を保って中空から奴を見下ろす俺達。
間をとって安心したのか、思い出したようにカオルくんが叫んだ。
「くう・・・かったぁ~~~!」
「カオルくん大丈夫?」
「なんとかね・・・でも本当にダイヤモンド並だね。サンダースウォードでもかすり傷くらいしかついてないや」
さっきに比べれば確かに混沌の力は大幅に減じてるんだが・・・アルテ呼んでくるべきだったかなぁ。ダイヤモンドなら鈍器が有効だろうし。
「ダイヤって地球上の何より固いんだろ? ダイヤモンドのハンマーでもなければ無理じゃない?」
ところがぎっちょん、ダイヤモンドというのは金槌で粉々に砕けるのです。
「そうなの!?」
カオルくんの驚く声。
飛び上がってきたあいつの前足をよけながら会話を続けるのが普通に凄い。
まあそれはさておき、それが普通の反応だ。
創作界隈ではまれによくあるが、ダイヤモンドというのは硬度は高いが脆いので、衝撃には弱いのだ。
「ダイヤモンドは砕けない」などというが、あれは創作上の嘘というか詩的表現みたいなもんである。
おとなはうそをつくのではないのです・・・ただまちがいをするだけなのです・・・だから案外本当にそう思ってた可能性はあるがな!
「それはいいけど、何か対策はあるの?」
「そうだな、ダイヤの弱点・・・衝撃、火・・・油・・・」
「油?」
「ダイヤは油脂に馴染みやすいんだ。なので指で触ると指紋の脂がついて落とすのに苦労するとか」
実際ダイヤ鉱山でダイヤの原石を選別するさいにも、グリースのついたベルトコンベアに砕いた岩を乗せて、グリースにべっとりくっついたダイヤ以外のものを水流で吹き飛ばすのだそうな。
「あんまりあいつを攻略するとっかかりにはなりそうにないね」
サーセン。
となると・・・やはり火か。
「ダイヤって燃えるの!?」
そりゃあ燃やそうと思えば燃えるさ、炭素だからな!
「ぶちかますぞ、カオルくんも魔力頼む」
「了解!」
ここまでの会話の中でも回避を続けていた俺達が、奴の手を避けて更に上昇。
奴も追ってくるが、巨体だけあって初速はやはり遅い。
そこにつけ込む隙が生まれる。
「行くぞ!」
「おう!」
青玉の鎧の胸板に生まれる真紅の放熱板。
気がついたときには既に遅い。
「「ブレストヴォルケイノ!」」
三万度の熱線が、正面からまともに浴びせられた。