異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「でもカオルくんの力を借りるってどうするんです? 奴隷売買してるから突入してくれって頼むの?」
「まあ証拠がないと難しいだろうねえ」
ぐびぐびっと蒸留酒をラッパ飲みする座長。この人絶対早死にするぞ。
「つまり、やっぱりタウなり他の奴隷の人達なりを助け出すってことになりますね・・・」
「それができないから苦労しているのですぞ」
うーん、話が振り出しに戻ってしまった。
「一人連れ出すことができりゃあなあ。バーさん、ひょっとしてエルフの隠れマントとか持ってないか?」
「無茶言うな。まあ目の前にいたら透明化の呪文をかけてやれないでもないがのう」
「やっぱあたしとアーベルさんが殴り込んで」
「アルテちゃん、それはちょっとのーきん過ぎると思う・・・」
「・・・」
侃々諤々。
結局俺とアーベルさんが忍び込んで奴隷売買の証拠の書類を捜し出し、それをカオルくんの所に届けて動いて貰うということになった。
「んじゃまずは見取り図だな。ハヤト、思い出せる限りでいいから屋敷の造りを思い出してくれ」
「ええと・・・裏口があって、ここが親子が口論してた部屋で、廊下を・・・多分こう来てこっち行ってタウさんの部屋に・・・」
「それは屋敷のどの辺にあるんだ?」
「・・・わかんない」
がりがりと、地面の上に棒で屋敷の略図を描くのだが・・・情けないことに、俺は内部の構造をほとんど思い出せなかった。
しょうがないじゃん! 他人の屋敷に忍び込むなんて生まれて初めてだし、無我夢中だったんだもん!
「決まらん奴じゃのう・・・」
呆れつつ、俺の後頭部にピタリと吸い付くペトロワ師匠の指。
びくん、と俺の体が震えて、自分でさえ忘れていたような情報がどんどん記憶の底からあふれ出てくる。
「あっ、あっ、あっ・・・屋敷の正面は100m弱くらい・・・正面の棟と左右の棟がHの字型になってて・・・壁がこうで前庭がこうで、入った裏口がここで、廊下の長さはここからここまで正確に28m、あっあっあっ・・・」
10分後、脳みそを吸い尽くされて地面に倒れる俺と、俺の脳細胞を犠牲に作られた可能な限り正確な見取り図が完成していた。
「おにいちゃーん!」
「ハヤトー!? ちょっと、おばあちゃん、これ大丈夫なの!?」
「ほっとけば治るわい。普段頭を使ってないのが悪い」
はいすいません、自覚はあります・・・。そんな俺を苦笑して一瞥した後、俺が地面に描いた見取り図を真剣な顔で見つめるアーベルさん。
「まあ居住空間は二階として、ここに裏口、ここに玄関。馬鹿親子が口論してたのが談話室か応接間で、地下への階段がここか。
その男が歩いてきたのがこっちからだから、炊事場はこっちにあるって事になるよな。となると仕事や付き合いに使う部屋はこの辺・・・いや、口論してたのが仕事の話をする部屋って可能性もあるか。
となるとまずはこっち、そしてここだな」
おおすげえ。俺の持ってきた情報とごく限定的な図にちょいちょいと描き足して、ほぼ完璧な屋敷の見取り図が出来上がっていく――!
「わかるもんなんですか、そういうの」
「まあな、もちろん決まりがある訳じゃねえが、プライベートな空間と仕事部屋は分けるし、主人や客がいる空間と使用人が出入りする空間も分けるもんだ。
ヤバいブツ――奴隷を隠すなら、これも客が立ち入らないような場所に置くだろう。
つまりそこ以外に仕事部屋――商談をしたり執務をしたりする部屋があるわけだ。
ヤバいブツを取引するにしても、仕事部屋から改めてブツを隠す場所に案内すりゃいいんだからな」
うーむ、すげえな。プロのスパイとか分析官とかこう言うものなんだろうか?
「つくづく疑問なんですが、アーベルさんって何やってた人なんですか?」
「そういうことは訊かないもんさ。まあ一晩を共にするなら寝物語に教えてやらんでもないがね」
「全力でお断りします!」
文字通りの色目を使われて、背筋に寒気が走る。
アルテの後ろに隠れた俺を見て、アーベルさんがからからと笑っていた。
「すげえなあ、綺麗に消えてるじゃねえか」
ホログラフィックミラージュを発動させた俺を感心の体で見上げる――見えてないけど――アーベルさん。
まあ試しに見せただけなので、魔力が勿体ないからすぐに切る。
辺りは既に夜。大体のご家庭は夕食を済ませてベッドに入る頃だろう。
俺達は今、ローリンズ家のお屋敷近くの路地にいた。
アーベルさんに加えてペトロワ師匠、アルテ、ガイガーさん、そしてオブライアンさん。
「それじゃお前にも《
「いらねえよ。ハヤトみたいな素人と一緒にしないでくれ」
アーベルさんが笑う。
俺達がまず忍び込み、師匠が魔法での通信係。アルテ達はいざというときの助っ人だ。
カオルくんと面識のあるリタがシルヴィアさんと彼の宿の近くで待機している。証拠が見つからなかったり、厄介な事になった時は彼女らが口八丁でカオルくんを動かす算段だ。
「んじゃ最後の確認だ。まずお前は屋敷の西側・・・地下の奴隷部屋への階段がある方をざっと探って、仕事部屋がなければそのままタウちゃんの傍で待機。
多分ないと思うが、もし仕事部屋とか書類っぽいものを見つけたらすぐに俺を呼べ。
俺は屋敷の東側、その馬鹿親子が口論してたほうを探る。見つけたらすぐに脱出してそいつを勇者様に届けて突入して貰う」
何度も繰り返された説明に俺は頷く。
「その間俺は、万一に備えてタウさんの護衛ですね」
「勇者様やその部下に信用して貰うのに時間がかかるかもしれねえ。突入されたら、あるいは何か気付かれたら奴らは奴隷を移動、下手すりゃ殺すだろう。
やばそうだったらすぐばーさんに言って、アルテとガイガーを呼べ。タウちゃんも大事だが、お前の命も大事だ。いいな?」
「無理しちゃダメだよ? 本当だよ? ・・・ちょっと、何笑ってんの」
アルテが真剣な顔で心配してくれるのに思わず頬が緩む。
ああ、俺生まれてきて良かったなあ・・・そこ、安いなあとかチョロいなあとか言わない。
かわいい女の子に心配して貰えるのは男としてこの上ない喜びなのだ――!
「あ、ちょっとよこしまな目になった」
半目になって俺のほっぺたをプニプニとつついてくるアルテ。
すいません、男の本能なんです。
「・・・」
ガイガーさん! 剣の鍔を鳴らさないで下さい! 私は決して娘さんによこしまな気持ちを持ってはおりません――!
「あいたっ」
「っ」
「漫才をやっとる場合ではなかろうが、馬鹿どもめ」
ペトロワさんの杖で軽く叩かれ、俺達は沈黙した。
最後に《
「妹に会ったら必ず助けるって伝えて欲しい。僕の魚人妖精としての名前はグルパーゴ。
それを伝えれば信用して貰えると思う」
「わかった」
「わかりました。必ず伝えます」
頷いて、俺達は夜の闇に消えた。