異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「むう・・・!」
都の上空に浮かぶ四角錐・・・そしてその四隅から伸びて都の周囲を完全に封鎖するピラミッド型の結界を見た瞬間、師匠が唸った。
「やばいんですか?」
「かなりの。あのままではお主のデモゴディも、カオルのサンダースウォードの破魔の雷光も歯が立つまい」
よくわからんが、上方と四方、五つの頂点によって完全にあの結界内部は守られているらしい。こっちからは手も足も出ないとのこと。
「このままじゃあっちの好き放題されるって事かい。何か策はないのかい?」
「あの形状だと真下からの攻撃には弱そうですが、どうでしょう?」
うーむ、と師匠が考え込む。
「確かにあの配置なら比較的底面は弱い・・・が、あくまでも比較的じゃ。勝算は薄いの」
「黄金の女帝さんは瞬間転移が出来るんだよな? 結界の中に送り込んで貰うのはどうだい」
「それについても対策が施してある。あれらの頂点は対転移の結界でもあってな。
中に飛び込もうとすればはじき飛ばされ、結界を挟んで反対側に出現する。
即ち、高度数百メートルの上空にな」
うげえ、と溜息とうめき声が漏れる。
「打つ手無しかですぞ。魔力結晶持てるだけ持ち出して、カオル嬢に何とか結界を一部でも破壊して貰うくらいしか思いつきませんぞ」
「こんな時小説なら・・・あっ」
思わず声を漏らした俺に視線が集まる。
「ほう。何やら思いついた様じゃの」
「さすがハヤトくん」
「・・・まあ、頼りになるときは頼りになるのよね」
だから何で俺の内心をさらっと読み取るんですかねえ! はっきり言ってただの思いつきでうまく行く根拠もなにもないのに! 後アルテさん、何でそんな不満そうなの!
「ハヤトくん!」
「マナさん・・・じゃなかったマナヤディール姫!?」
俺にすがりついてくる眼鏡のお姫様。
どこから?! いつの間に!? いや顔! 顔が近いから! おっぱい当たってるし!
「お願いです、弟を、ネフェルを助けて下さい! やっと呪いが解けたんです! 自由になって、あの子はあの子の人生を生きていけるんです! お願いします! 私にできることなら何でもします! 弟を・・・弟を・・・!」
後はもう言葉にならない。
俺の肩に手をかけ、ぽろぽろと涙をこぼしている。
「・・・ふう」
溜息一つ。
ここまで言われたら、もう根拠があるとか成算があるとか、そう言う話じゃなくなってしまう。
ぽん、とマナさんの肩を叩く。
「・・・」
俺を見上げるマナさん。涙に濡れた瞳と眼鏡が美しい。
「何とかしますよ。根拠はないですけど」
「ありがとう・・・ございます」
マナさんはそれだけ言うのがやっとだった。
「それで用意して欲しい物があるんですが、いいですか?」
「・・・」
イレマーレ上空の力場のピラミッド。
その中に生み出した王家の謁見の間。
ケイオス一世は玉座に深く身を沈ませ、瞑目していた。
ダンジョンを通して吸収した本体の情報エネルギーを体に馴染ませ、統合する。
情報の統合であり、力の構築だ。これが完成しなければ力の全てを振るうことができない。
(もう少し・・・あと少し・・・)
精神を集中させる。深く、深く己の中に沈み込む。
ばらばらになった自分の精神と霊体をつなぎ合わせて・・・
「・・・」
気がつくとまぶたに浮かぶのは姉の面影。
頭を振って振り払うが、脳裏に声が響く。
(ネフェルくん)
うるさい。
(ネフェルくん?)
だまれ。
「ネフェルくんっ!」
「うるさい! だま・・・!?」
目の前にいた。
つい昨日まで笑い合っていた姉の顔。
それが玉座のすぐ前で、彼を睨んでいる。
一瞬、思考が止まる。
それが命取り。
「破魔の雷光よ!」
カオルくんのサンダースウォードから、今まで見たことのない巨大な雷電がほとばしり、無敵の結界を内側から突き破った。
発想元は昔読んだファンタジー小説だ。
東西南北、四つの結界起点からなる防御結界を突き抜けてテレポートするには、その結界の正確に真上か真下からテレポートすればいい。
それだけなら既に師匠に否定されているが、幸運がいくつか重なった。
ひとつ、俺とカオルくんがイレマーレのダンジョンを踏破し、コアを支配して「ダンジョンマスター」となっていたこと。
ふたつ、ダンジョンマスターはコアに思念を送るだけでダンジョンの中を自由に転移したり、組み替えたり出来ること。
みっつ、奴の結界はイレマーレの都どころかダンジョンも丸ごと内包していた(取り込むつもりだったようだ)ので、逆説的に奴の結界の中もダンジョンとなったこと。
実際この謁見の間もダンジョンの一部を利用して作られているらしい。ダンジョンへの無知があだとなった格好だ。
だがこれだけではやはり結界に弾かれてしまう。
小説のように真下からテレポートしてもだ。
小説のそれと違って奴の結界はピラミッド型で、底面にも当たり判定・・・って言っていいのか?がある。
だがそれを通り抜ける手段を、奴自身が用意してくれていた。
(イレマーレ王家のものに憑依しておった分体か何かにしては、奴は強大すぎるし例の混沌の渦の力が強すぎる。恐らく何らかの手段で混沌の渦の力を回収したんじゃ)
力を回収するためのルート。霊的なアストラル空間の穴。
残っているかどうかは賭けだったが、見事俺達はそれに勝った。
奴の直下、六星晶の龍と戦ったダンジョン最下層のコアの間。
既にハルギアさんが混沌の力を浄化したそこにみんなで集まり、まっすぐ上に向けてテレポート。
俺達全員を気迫で押し切って(何せ師匠すら気圧された)ついてきたマナさんにネフェル君が硬直した瞬間、王家の宝物庫から持ち出して来た山のような魔力結晶のエネルギーを、師匠の術式の補助を受けてつぎ込んだ最大威力の破魔の雷光が内部から結界をぶち破った、と言うわけだ。
「きっ・・・貴様らぁぁぁぁぁぁ!」
姉の叱責を受けて、一瞬「ネフェル」に戻っていた少年が「混沌」の顔を見せる。
凶猛な表情で吼えるケイオスからの魔力の波動。
「『かあっ!』」
師匠とハルギアの融合魔法がケイオスの放った魔力を相殺する。
それと同時に謁見の間がぐらりと揺れた。
「おのれ、許さぬ!」
ケイオスの体が玉座に溶け込むように消える。
「小僧! カオル!」
「は、はい!」
俺達が再び転移したのと同時に、謁見の間がぐしゃりと潰れた。
「おおおお!?」
イレマーレの民がざわついた。
いきなり都の上に現れたピラミッド、そこから伸びる都を封鎖する光る壁。
それが中からの稲妻によって崩壊したかと思うと光る壁が消え、ピラミッドが姿を変えてゆく。
「おお・・・」
「なんだ、あれは・・・?」
光で出来た四角錐であったものが実体を備え、人の形をとっていく。
そこに飛来した蒼い流星がぶつかり、巨大な岩の巨人は都の外に押し出された。
動体視力に優れたものがいたなら、ぶつかったのが青い甲冑と赤いマントを纏った武者であることに気がついたろう。
都の西に広がる岩場。ダンジョンの入口がある岩山の前の広い空間に岩の巨人は墜落した。
それを追って地面に立つ青玉の騎士。
岩の巨人が立ち上がる。
古代の王を模したような巨大な石像は、立ち上がってみれば100m近くある。
対してそれに立ちはだかる青い騎士は20mほど。巨人と小人だ。
だが騎士がそれに臆することはない。
巨人が咆哮を上げると同時、騎士がすらりと剣を抜いた。
スイートクロスはマグネロボ ガ・キーンが合体するときの合言葉。
ガ・キーン本体に男女一人ずつのパイロットが合体するときのシャウトですね。
ちなみに「Suite Cross」であって、「Sweet Cross」ではないのであしからず。