異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第三十四話 残影

「・・・!」

「どうした、ハルギア」

 

 王宮のバルコニー。ハヤトとカオル、マナを除く面々はここで戦いの趨勢を見守っていた。

 ハヤト・・・正確にはハルギアが宿ったハヤトの体がぴくりと動いた。

 険しい目で睨むのは青の騎士デモゴディと、それを包む黒い「なにか」。

 

「あれは純粋な混沌か・・・?」

「うむ、恐らくは・・・いや待て。貴様ハルギアでも小僧でもないな?」

「!?」

 

 ざわつく周囲。集中する視線。

 警戒の目を向けられても、「ハヤト」の表情は変わらない。

 

「今からこの体の持ち主を援護する。害にはならないから邪魔しないで欲しい」

 

 言って印を組み、目を閉じて集中する。

 

「その印は・・・いや、お主どこかで・・・?」

 

 ペトロワの疑問に、ハヤトの肉体に宿った何者かはもう反応しなかった。

 

 

 

 何も見えない。

 何もかもが見える気がする。

 物体ではない。

 エネルギーでもない。

 ただ「何か」としか表現できないものが俺達をすっぽりと包み込んでいる。

 

(ハヤトくん、これは!?)

(恐らく混沌の力・・・いや、混沌そのものだな)

(・・・!)

 

 さすがのカオルくんが絶句する。

 魔除けの混沌感知機能は既にレッドゾーン、メーターを振り切ってる。

 クソ女王が作った青玉の鎧はさすがに混沌の浸食を防いでいるが、いつまでもつかはわからない。

 あの巨神、ケイオスが手を出してこないだけましと考えるべきか・・・。

 それはともかく。

 

「ブレストヴォルケイノ!」

 

 胸から熱線を発してみるが、何の反応もない。

 カオルくんに断って豪子力ビームやルイントルネード、ミサイルラッシュなどを試してもみるが、ことごとく反応がない。

 のれんに腕押しというか、空中に向けてビームを撃ってるだけで、何も返ってこないし、爆発も温度変化も何の変化もない。

 破魔の雷光や盾からの魔力弾も同じだ。

 探りにロケットパンチを撃とうかとも思ったが、戻ってこないと怖いのでやめた。

 

(・・・「あれ」使う?)

(この状況で使っていいものか・・・)

 

 短い思念をかわす。

 カオルくんに剣を再召喚して色々試しても貰うつもりだったのだが、この状態だと俺が混じったせいか、「青の騎士デモゴディ」として固定されてしまっているせいか、剣の送還・再召喚が出来ないとのこと。

 くそっ、青の騎士というなら単結晶パイルバンカーくらいは装備できないのか! いやしててもあんま意味無いけど!

 

(・・・うん?)

(どうしたの?)

(いや、聞こえない?)

(わからない。少なくともボクには聞こえないよ)

 

 うむう。なんかこう、声がするというかちくちくと耳の裏が刺激されるというか。

 これは・・・声?

 

(ちょっと集中する)

 

 カオルくんに一声かけて、その刺激というか信号に集中する。

 

(・・・て・・・・・・よ・・・)

(・・・)

(・・・ぼ・・・き・・・・・・と・・・)

(・・・)

 

 集中すると声が切れ切れに聞こえてくる、ような気がする。

 そのまま更に声に耳を傾けると突然それが明晰になった。

 ラジオの周波数がたまたまピタリと合った感覚。

 けど、これどこかで・・・?

 

(ああ、良かった、通じた。聞こえるか、ダン・ハヤト)

 

 誰だお前!? 何か子供の、男の子の声に聞こえるけどそれも聞いたことがあるような、いや、この波動自体かなり覚えがあるような。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 ああ!? これ俺だ! 俺自身の肉体の波っていうか感覚だ!

 録音した自分の声を聞くと自分の声に聞こえないって言うけどそんな感じでパッとわからなかった!

 しかもそれに付随するこの暗い気配は・・・死のコアだ! 吸血鬼ルイスの体内にあったヴィラン・コア!

 そして思い出した! これは・・・子供の頃のルイスの声だ! まだ奴が邪悪じゃなかった頃の!

 

(やはりね。大人になった僕は相当ひどい事をしていたらしい)

 

 脳裏に少年ルイス、ヴィラン・コアの力に目覚めた頃の彼の姿が浮かぶ。

 

(ルイス・・・なのか)

(正確には違うかな。君の中のコアにこびりついた残存思念。ルイスの残りカスだ)

 

 ・・・・・・・・・・・・!

 い、いやそれがどうして? ひょっとして復讐に来たのか?

 

(まさか。こいつは純粋な混沌なんだろう? まずはこのイレマーレを飲み込んで数万の人々を同化し、そして更に拡大する。下手をすればこの世界そのものが混沌となる・・・ふむ、記憶は無いがどうも知識はあるらしいね。ちぐはぐな感じだ)

 

 ――協力してくれると?

 

(もちろん。僕はこの世界が好きだ。父親と母親、面倒を見てくれた人達、一晩の食事を分けてくれた人達――僕のために死んだ人のための償いではないけれど、この世界を守るために何かはしたい)

(・・・・・・・・・・)

 

 自分が滅ぼした吸血鬼の、純粋だったころの残影。

 それを前にして俺は沈黙する。そうするしかなかった。

 

(僕を殺したことについては気にしなくていいよ。どのみち外道に堕ちてたんだろう? そこまで堕ちたなら僕だったら生きていたくないね)

 

 ・・・わかった。それで何をしてくれるんだ?

 

(おや、言わなきゃわからない? 僕には確かにいずれそうなった僕の知識も色々あるけど、そもそも僕が生まれ持った力はなんだったかな?)

 

 え・・・《死の波動》!?

 

(そうとも。混沌はこの世界の法則には従わない。そもそも無秩序である混沌に秩序と法則を与えて組み上げたのがこの世界だからだ。

 だがこちらの世界に現出している以上、混沌も無敵ではない。今は知らぬ法則を与えてやれば奴は純粋な混沌から離れ、変動しやすいだけのこの世界の存在となる)

 

 それはつまり。

 

(そうだ。与えてやろう、霊魂の神(スィーリ)の力を――死の法則を)

 

 ちょ、ちょっと待って。それ俺を通じて発動したらカオルくんに影響ないだろうな!?

 

(それは大丈夫。今君達は魔術的に一体だからね。むしろそうでなければ君も死ぬよ)

 

 うわあ。

 どうしよう、俺一人ならやってもらうんだが・・・

 

(構わないよ。やっちゃって)

 

 カオルくん!?

 

(ボクのことなら気にしないで。ハヤトくんと気持ちは同じだから。

 今ボク達は一体化してるんだ。ボクの命は君の命、君の命はボクの命・・・死が二人を分かつまで、ボク達は一緒だ)

 

 ・・・いいや。

 

(ハヤトくん?)

 

 たとえ死んでも俺達は一緒だ。

 あいつに食らいついて世界を救ってやろうぜ!

 

(・・・うんっ!)

 

 喜びの波動が伝わってくる。それに頷いて。

 

(いいぜ、ルイス! やってくれ!)

 

 頷く気配。詠唱。

 

(冥界の黒き柵を乗り越え 永遠のまどろみに落ちるべし

 とこしえに暗く明るき黄昏の世界に 無明の安らぎを得るべし

 死は終わりにあらず忘却なり 忘却ゆえに救いなり

 やがて地の底より再び大地に生まれ 一時の苦しみと喜びを得なん)

 

 詠唱が終わると同時に、周囲に《死の波動》が放たれる。

 俺とカオルくんが同時に身を堅くするが、それらが俺達を害することはなく。

 そして周囲が劇的に変化した。

 

「これは・・・デモゴディ・バリアー!」

 

 気合い一閃、俺達の周囲に光り輝くバリアが現れる。

 それは周囲の混沌だったものを吹き飛ばし、俺達は通常の空間に復帰していた。

 周囲の混沌は既に混沌ではなく、スライムかコールタールのような真っ黒いべとべとな物質と化している。

 

「これが死の法則を与えた結果なの?」

 

(そうだよ。生きるでも死ぬでもない存在に「死」という概念を与えた。だからこうなったのさ)

 

『~~~~~~~~~~~~!』

 

 気がつけば巨神が絶叫していた。

 顔を覆い。もがき苦しんでいる。

 

(自分の肉体が『死ぬ』事を知ったんだ。あれは恐怖の叫びさ。

 さ、後は君たちの仕事だ。わがままな坊やを家族のもとに戻してやりたまえ)

 

 心の中でではあるが、俺はルイスに神妙に頭を下げた。

 

(ありがとう。お前のおかげで何とかなりそうだ)

 

 脳裏のルイスが寂しげなほほえみを浮かべる。

 

(君たちと友達になりたかったよ)

 

 それっきり、ルイスの思念は消えた。

 




>青の騎士と単結晶パイルバンカー
ボトムズの外伝?小説「青の騎士ベルゼルガ物語」参照。
アストラギウス銀河と人類を滅ぼした古代兵器と一騎打ちできる青の超AT(というかもはやATではない)ベルゼルガ・テスタロッサとその装備。
二次創作みたいなもんだと作者サイドが公言してるし、古代兵器のパーツ組み込んでるから別にガンバスター並に強くてもいいけどさあ、名前通り全身青いのにテスタロッサ(赤)ってのはどうなのよと昔から思ってる(ぉ
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