異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
市街まで1キロ、王宮まで更に1キロ。
身長100メートルの奴からすれば文字通り目の前。
まして、音速を遥かに超える黒い閃光からすれば一瞬でしかない。
だというのに、それを空中から見ていた俺達には、その閃光がやけにゆっくりと、水面を動く波のようなスピードでイレマーレに迫っていくのが見えた。
ゆっくりと延びていく黒い混沌の光。
近づく城壁、見えはするが動かない俺達の体。
(間に合え――!)
そう念じた瞬間、光り輝く障壁がイレマーレの都を覆った。
輝くドーム状のそれに叩き付けられた黒い閃光は、障壁を揺るがすこともならず四散する。
『なんだとぉぉぉぉ!?』
ケイオスの驚愕の声。
そりゃそうだ。
あれが届けば王宮とその周辺、そしてその通り道は真っ黒くろすけな混沌の沼地になってただろうよ。
だがそうはならなかった。
その理由こそハルギアの作った最後の超魔道器、「
万が一封印が破れて混沌の渦が地上に出たとき、イレマーレを守るための最後の武器だ。
いかなる悪意を伴う魔法、武力、そして混沌の浸食をも食い止める、神器にも比する最強の護り。
王家のもの=ハルギアの血筋を引くものにしか扱えないそれは、その性質上ハルギアの墳墓ではなく、王家に代々伝えられてきた。
今王城最奥の儀式の間では、女王様(この人も傍系だが王家の血を引いている)が一心不乱に祈りを捧げているはずだ。
そしてこのタイミングで送られてくる念話。
(小僧! マナがカタナを見つけて来たぞ! 今飛ばす!)
ナイスタイミング師匠! 「話は聞かせて貰った」に匹敵するヤマサングッドタイミング!
(ええい、訳のわからん事を・・・受け取れ!)
王宮から魔力の波動。
(カオルくん、一度変身を解くよ!)
(わかった!)
何も言わずに同意してくれるカオルくんに感謝しつつ、俺はデモゴディ化を解く。
『マシン・オフ!』
かけ声と共に騎士デモゴディが消え、背中にドラゴン・スクランダーを装備した青玉の騎士、カオルくんが現れる。
タイミングを同じくして飛来するのは一振りの黒鞘の日本刀。
かなりの速度で飛んできたそれを、カオルくんは空いた右手で軽々とキャッチした。
わかる、こいつとんでもない魔力を秘めた名刀・・・いや妖刀だ! 言わば妖刀村正! いける!
「マシン・オン! パイルビード・ゴォーッ!」
再び唱える最強の力を呼び出す呪文。
青き巨人騎士の姿が再び現れる。
(次は?)
(こうする! タリエシンの宝珠、
『うわああああああ!? 何これ!』
カオルくんの驚愕の声。
当然だ。手の中にいきなり刃渡り150メートルの日本刀が現れれば誰だって驚く。
(カオルくん、それで!)
(! そうか、わかった!)
刃渡り150メートルの大刀の柄を、青の騎士デモゴディがしっかりと両手で掴む。
『マシンフォース・スタートアップ!』
この数十日で稼いだ分と、王宮の宝物庫からありったけ引っ張り出してきた分、その莫大な量の魔力結晶を全て肉体強化と刀それ自体につぎ込んで巨剣を振り回す。
デモゴディとムラマサの刀身が光り輝き、俺とカオルくん、二人の意識が完全に同調する。
『!』
驚愕から醒めて次の攻撃に移ろうとしていた巨神が慌てて防御の構えを取る。
頭上で二本の腕をクロスさせる、クロスアームブロック。
だが。
『『一刀両断ッッッッ!』』
頭上にクロスさせた二本の腕ごと、光り輝く日本刀が巨神を断ち割った。
『”Q"W#$E%RT&Y'U()~~PP=』
真っ二つにされた顔面から空気が漏れる。
何かを言おうとしているようだが、頭からへそまで綺麗に切り下げられた巨神に、何かを告げる能力は最早失われている。
ましてや胸の中のコアを破壊されては。
森羅万象を見通すタリエシンの宝珠を組み込んだせいか、それとも偶然か、ムラマサは胸の中央の黒い塊・・・混沌のコアを見事に両断していた。
「真実の短剣」の力を帯びた刀身によって切り裂かれた断面は混沌の力が蒸発し、ボロボロと崩れていく。胸中央のコアも然り。
だがこれで終わりではない。本命はこの次だ。
『力を見せろ、ムラマサっ!』
ムラマサが一層激しく輝く。
そう、巨大な斬撃武器ではあるが、150ムラマサは同時に真実の短剣でもある。
外側からでは効果が限定的であったが内側から、それもコアを両断した状態ではどうなるか?
『)(&%R$EW$%WRTCFGHJKL+*―――っ!?』
聞き取れない絶叫を残し、巨神ケイオスは光の中に消えた。
『マシン・オフ!』
光が消え、巨大な日本刀とデモゴディも消える。
「真実の短剣」の力の発動の影響か、周囲を浸食していた混沌の痕跡は一掃されていた。
今はただえぐられた岩山やなぎ倒された木々が激闘の痕跡を物語る。
ゆっくりと降下していく青玉の騎士。
その先には地面に倒れた全裸の少年。
それを両腕でかかえ上げると、青玉の騎士は王宮に向けて飛び去った。
「ネフェルくんっ!」
「あね・・・さま・・・」
ベッドに寝かされたネフェル君にマナさんがすがりつく。
「だめです・・・ぼくは・・・混沌に・・・乗っ取られて・・・」
真実のムラマサをフルパワーで叩き込みましたけど、浄化はされてないんですか師匠?
そう聞くと、師匠が少し暗い顔で首を振った。
「ほとんど全て浄化はされておる。が、ほとんど生まれたときから融合しておったようで、どれだけ浄化しようとも影響はぬぐいきれぬ・・・正直この先どうなるかは何とも言えん」
魔除けに戻ってホログラムでこの場にいるハルギアの方も見るが、同様に首を振った。
「ハルギア・・・さま。どうかぼくを・・・滅して下さい・・・そうすれば、混沌の影響は・・・」
ハルギアの顔がこわばる。さすがに混沌を滅ぼすためとは言え、自分の子孫、それも十歳の子供を殺すのはきついのだろう。
長い時間が経った。
「私は・・・」
「だめです!」
ハルギアを遮ったのはマナさんだった。弟の肩を抱き、ハルギアを睨みつけている。
「ハルギア様と言えども、それだけは絶対に許しません! 私はおねえちゃんなんです! ネフェルくんのおねえちゃんなんです! 姉は弟や妹を守るものなんです!」
気迫。
誰もが黙り込む。
その中で、か細い声があがった。
「あねさま・・・だめです・・・ぼくは・・・あねさまに、母上に、レミルに、そしてイレマーレに迷惑を・・・」
「関係ありません! おねえちゃんがどうにかします! お姉ちゃんが守ります!」
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
溜息をつく。
「で、どうするんです、師匠、ハルギア。俺としてはお二方ならどうにかできると思いますが?」
睨む俺に苦笑するペトロワ師匠。
いやだって、どう考えてもマナさん脅かしてるふいんきじゃんこれ!
「そうさのう。どうなるかわからんというのは逆に言えばこのまま何事も起こらないかも知れない、ということじゃからのう」
「様をつけなさいと言っているでしょうが。・・・まあ、ペトロワ師の言う通りね。
そう睨まないで、マナヤディール。ネフェルの生きている間は私で何とかするから」
「・・・本当ですね?」
ハルギアを睨みつけるマナさん。
ヒナを守る母鳥ってこんな感じなんだろうなあ。
「本当だってば。信じなさい」
ハルギアが盛大に苦笑していた。
大げさに言うからそうなるんだと思うぞ。
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誤字ではありません(ぉ
タイトルの「武器?」もウィザードリィにおける村正の不確定名から。