異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「セイッ! セイッ!」
「・・・」
日本刀で素振りをする俺。
手に持った木の棒で軽く俺の肩と腰を叩くガイガーさん。
「ええと、こうですか」
「・・・」
腰を引き、肩の力を抜いてもう一度振るとガイガーさんが頷く。
それを確認して俺は素振りを再開した。
まあどういう事かというと、デモゴディ化を解除した後に真実の短剣とムラマサ(そしてタリエシンの宝珠)が完全に融合して戻せなくなってしまったので、鎧と同じく必要になったら呼び戻す条件でムラマサも貸与して貰ったのだ。
ちなみに勝手にムラマサムラマサ言ってたが、銘を確認したところこの世界で作られた模造品ではなく、マジで
「下手すると重要文化財クラスだよこれ・・・!」
と、カオルくんが絶句していたのが記憶に新しい。何でも幻の五代目村正の可能性があるとか何とか。
ともかくそれほどの名刀、普通ならカオルくんかガイガーさんに行くところだが、俺が余程目を輝かせていたらしく譲ってくれたのだ。まあカオルくんにはサンダースウォードあるしな。
なお戻せないのか師匠に聞いたところ、
「ミックスジュースを元のリンゴジュースとブドウジュースに分けるなど、手間がかかりすぎるにもほどがあるわい」
・・・とのことだ。
まあキメラをライオンと蛇と山羊に戻すのと同じくらい面倒なのはわかる。むしろ手間がかかるだけで実行できるのすげえ。
とは言え俺は剣士としてはへっぽこもいいところ。最低限使いこなすためにも、こうして改めて剣の指導を受けているというわけだ。
ちなみに引退冒険者スレイザックさんから譲り受けた装備も俺が使わせて貰うことになったので、弓の方もカオルくんから手ほどきを受けている。
剣の方は今のところ素振りしかさせて貰えてないが、まあ基本は大事だしな。
「セイッ! セイッ! ところで俺はいつまで素振りしてればいいんですか?」
「今日中に後五千回だ」
「ひえええええええええ!?」
「はい、もう少し足を開いて、足の角度は六十度くらい。肩に力を入れずに背中と腰で・・・」
筋肉痛でぶっ倒れていたところにペトロワ師匠の回復呪文を貰って弓のお稽古。
カオルくんも少しかじった程度らしいが教え方が的確で困らない。
基本の打ち方を教えて貰って何度かやると、結構的に当たるようになった。
うーん師匠と弓のおかげ。
そう褒めるとカオルくんがちょっと照れたように笑う。
「いやあ、ハヤトくんも結構筋はいいよ? その、それでさ・・・あの巨人と戦った時に・・・」
ん? なんだっけ?
「ほら、死が二人を分かつまでって言ったときに、死んでも一緒だって言ってくれてさ・・・」
「ああ、あれか」
「そう、あれなんだけど、あれってさ、ハヤトくん・・・」
あれだろ、三国志の桃園の誓い。
我ら生まれし日は違えども、同じ日に死さん!ってやつ!
いや、燃えるよな・・・あれ、カオルくんの顎がかくーんって落ちてる。
「・・・」
え、何? 何か怒ってない?
「怒って・・・ないっ!」
背筋の伸びた綺麗なストレートパンチが俺の顔面を打ち抜き、俺はものも言わず昏倒した。
その後アルテにも殴られて、何故かカオルくんがアルテに慰められていた。
ひどない?
「ハヤトさん、カオルさん、あらためてありがとうございました」
再びの盛大な儀式のあとのお茶会。深々とネフェル君に頭を下げられた。
いや王子様だからくんづけとか本当はいかんのだが。
にしてもええ子やなあ。
妹の第二王女ネプティちゃん含めてリタと楽しそうにおしゃべりしているし。
はっ、これはリタの玉の輿フラグ?
ううむ、可愛い妹が嫁に行ってしまう。これが寂しさか・・・
えっ、今鍔鳴りの音が!? ナズェ!?
茶会は続く。
女王様も気さくな方で、アルテやカオルくんたちは恐縮しながらも目を輝かせて話を聞いている。まあ品のある美人だからな。女から見ても素敵な人なんだろう。
座長も酒じゃなく残念そうだがちゃんと猫かぶってるし、アーベルさんやラファエルさんも同様。
オブライアンさんは妖精なのでまあまあ大目に見て貰えてるし、ネフェル君やネプティちゃんが目を輝かせて色々質問してくるのに楽しそうに答えているから変な事も起きるまい。
そうやって他の人達が盛上がる中、マナさんがそっと俺を脇に連れ出した。
なんでしょ?
「いえ、ああして楽しそうに笑っているネフェルが見られて・・・本当にハヤト君たちにはお礼を言っても言いきれません」
そんなあらためて、義理堅い人やなあ。余程に嬉しかったんだろうというのはわかるけど。
「それでですね、お礼をしたいと思いまして」
でも騎士爵にお金に免税特権にハルギアの作ったあれこれのアーティファクトにムラマサブレード(本物!)まで貰っちゃって、これ以上貰ったら貰いすぎじゃありません?
まあアーティファクトとムラマサは借りてるだけだけど。
「いえ、まだありますよ・・・わたし、なんてどうです?」
ブフォォォォォッ!?
え、いや、それひょっとしてハルギアさんの寝室での続きをってこと!?
「ハヤトくんが望むならいくらでも。それに私と結婚すれば、大公位、少なくとも公爵くらいは望めると思いますよ」
うお、マジか・・・いやでもそれは今の生活を続けられないって事で・・・うーん・・・
しばらく唸っているとマナさんが苦笑した。
「ああ、もういいですよ。最初から無理筋かなーとは思ってましたし」
え、そう? でもそう言われると何か勿体ないことをしたような気がする。
マナさんがいたずらっぽく微笑む。
「駄目ですよ、優柔不断は。女はですね、ずっと自分の傍にいてくれる
えーとその・・・はい、すいません。
「正直でよろしい。それでは最後のご褒美を上げます。目をつぶって」
はい。
・・・・・・・・・ん?
今唇に何か触れた?
え、ちょっと待って今の。
目を開くと、唇に指を押しつけられる。
「何も言わないこと。いいですね、ハヤトくん?」
あ、はい。
「カオルさんとアルテさんを大切にね。後リタちゃんも」
はい・・・。
丸メガネの瞳がにっこりと微笑んだ。
「ストロングなんだ~ビッグなんだ~ぼくらのデモゴディなんだ~♪」
詰めかける観客。幕が開くのを今か今かと待ち構えている。
その舞台裏で俺は壊れたレコードプレイヤーと化していた。
「悪の女帝ハルギアを倒した」上に混沌の巨人を討ち果たしてイレマーレを救った英雄たちの芝居「隣り合わせの風と竜、君の灰色の青春に届いているか」本日開演。
ただしハルギアと恋に落ちる主人公の「ハヤト」を演じるのはカオルくんである。
ちょっとばかり顔と声が良くてスマートで剣の達人だからって畜生!
はい正当な理由ですねすいません。
ちなみにハルギア本人も見てる。これからは地底で何度も甦るラスボス役を楽しむとか言ってたが、そんなに気軽に地上に出て来ていいのかラスボス。
「ちょっとハヤト大丈夫・・・ねえ、座長何したのよこれ?」
「いや脚本が間に合いそうになかったから、ちょっとばあさんの頭クチュクチュでスピードアップして貰ったんだけど」
「鬼かあんたは!?」
アルテが騒いでいるようだが何だかよくわからないや・・・
ささやき、いのり、えいしょう、ねんじろ! ハヤトははいになりました。
「三つの心が~響くのだ~♪ 正義と~平和と~愛情と~♪」
虚ろに響く俺の歌声。今はただ安息が欲しい・・・
「もう、そんなに無理する事なかったのに」
「いやカオルくんが主役のお芝居だし頑張らなきゃって・・・」
苦笑する気配。うん、誰だこれ? 頭がぼうっとしてわからん・・・
頬に何かが触れる気配。
「ありがとう。それじゃ行ってくるよ」
足跡が遠ざかり、歓声が聞こえる。
「とざい、とーざーい。これより始まりまするは・・・」
ラファエルさんの口上を聞きながら、俺は心地よい眠りに落ちていった。
はい、一巻の終わりにございます。
冒頭にも書きましたが去年の十月にウィザードリィヴァリアンツ・ダフネというソシャゲが始まりまして。
ウィザァドリャアだったわたくしは一も二もなくはまったわけでございます。
ああ、ファミコン必勝本を貪るように読んでいた青春の残り香。
出来れば第二章のスレイザックさんみたいな他の冒険者の話ももっと色々入れたかった。
んで、今回カオルくんのヒロイン回なんですが、リタと比べると微妙に報われてない気がひしひしと・・・
というかカオルくんに出番を与えるのに何か憑依して・・・って、これバブリーズのスイフリーだ!と途中で気付きましたがその頃にはもう修正不可能な状態にw
ごめんカオルくんw
それとお知らせ。
次回の話がまだ完成してないので、一週間お休みを頂きたく。
後数話分で完成すると思うんですけどねえ・・・すいません。
うまくいったら三月三日から連載再開致します。