異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

15 / 415
第十五話 許されざる者

 俺は透明になって、アーベルさんはそのままローリンズ邸の壁を跳びこえて軽々と侵入する。いやしかしすげえなこの人。隣にいても下手すれば見失うくらい気配を消すのがうまい。

 それも忍者ロボミストヴォルグの力を発揮してる状態の俺がだ。

 裏口の鍵を数秒で外し、中に滑り込むアーベルさん。俺もその後に続く。

 

「じゃ、おれはこっち。お前はあっちだ」

「はい」

 

 頷きあって(あっちからは見えないけど)、俺達は二手に分かれる。

 ここからは時間との勝負だ。

 

 

 

 ・・・などと気負ってはみたものの、潜入捜査はトントン拍子に進んだ。

 俺が最初の部屋を調べている間にアーベルさんが当たりをつけていた部屋で奴隷売買の証拠を見つけ、ペトロワ師匠を介してこっちに連絡してきた。

 仕事早すぎるだろ。

 

 ともかくアーベルさんはそのまま脱出してカオルくんのところに走り、俺は地下に降りてタウさんの部屋に急ぐ。そのままするっと部屋に入れれば良かったのだが・・・。

 

(まあ、夜だから見張りがいないって事は無いよな)

 

 俺が見たのとは別人だが、やはり屈強な私兵が二人、見張りに立っている。

 革鎧に剣に槍、見るからに強そうだ。ガイガーさんほどじゃないけど。

 これが「機甲武侠伝Gガンボイ」のプロイセンくのいち「ブラックシスター」なら鉄の壁をすり抜けるなんて荒技も使えるのだが、今の俺にはまだできない。

 

 なので、こう言う時のためにペトロワ師匠から策を授かっている。

 見張りから見えない角の先で懐から出したのは握り拳くらいの金属の鈴みたいなもの。

 中は空洞になっているが、入っているのは鈴を鳴らす金属片ではなくどろっとした黒い塊。

 香炉という、お香を焚くための容器だ。俺はそれにマッチで火をつけ(あるんだよ、この世界! 過去の冒険者族が作ったらしい)、火が付いたのを確認してからふたを閉める。

 

 透明化して見張りに近づき、足元にこっそり香炉を置いてから一階に戻る。

 待つこと十分。再び地下に降り、息を止めて近づくと、見張り二人はそのまま立っていた。

 ただし、どことなく目がぼんやりしている。

 

(・・・)

 

 恐る恐る手を伸ばして、腰の鍵束を取るが、反応は無し。

 素早く鍵を開けて鍵束を男の腰に戻し、香炉を回収して火を消し、素早く部屋の中に滑り込む。

 

「ふわぁ・・・ビビった」

 

 光学迷彩を解除してソファにへたり込む俺を、タウさんが目を丸くして見ていた。

 

 

 

 今は香炉の中でくすぶってる黒い塊、これはペトロワさんが調合した眩惑の香というものらしい。眠らせたり気絶させたりはできないが、周囲への認識を弱めて何をされているか理解出来ない状態にできる。つまりぼんやりガスだ。

 ショックを与えたりするとすぐ我に返ってしまうので戦闘には向かないが、ぱっと見では何か異常が起こったようには見えないため、こうした潜入任務にはうってつけだそうな。

 

「で、かくかくしかじかでグルパーゴさんに伝言を頼まれまして」

「まあ! 兄さんが! 申し訳ありません、ご迷惑をおかけしてはいないでしょうか」

 

 多分長いこと消息のない肉親の事を聞いて、まず最初に出てくるのがそれってどうなんだろうか。

 

「あーまあ、俺の知る限りではみんなに受け入れて貰ってますよ。というか俺も一座に入って一月も経ってないんで・・・」

「そうでしたか。なんというか、いつもぼんやりしている兄でしたから、生き鮫の牙を抜く地上であちこちにご迷惑をおかけしていないかと心配で・・・」

 

 うーむ。

 

「それはともかく、今奴隷売買の証拠を持って仲間がカオルくん・・・勇者の所に走ってます。オリジナル冒険者族は奴隷制とか嫌いですから、悪いようにはしないでしょう」

「でも王国が召喚した勇者なんですよね? 魚人妖精の私は大丈夫でしょうか」

 

 確かにそれは問題だ。

 作戦会議の時も、真っ先に話題に上った。

 

「俺達の仲間に腕の立つ魔女がいるんです。その人が騒ぎに紛れてあなたを見かけだけ人間の姿にする魔法をかける。場合によっては力づくで連れ出す。あなた一人なら何とかなるでしょう。

 だから安心してください。俺もそこそこは強いですから」

「そう・・・ですか。わかりました。信じてますね」

 

 にっこりと笑うタウさん。

 無理しているのが透けて見えて、少し胸が痛かった。

 

 

 

「で、お兄さんに《百神》や古代文明の話を教えて貰って・・・」 

「いきいきしてたでしょう。知識を集めるのと、それを他人に語るのが昔から大好きだったんですよ」

 

 オタク気質やなー。よく言えば学者気質だけど。

 あれからすぐにアーベルさんからの連絡が来て、カオルくんはすぐに出動するように部下の人に命じてくれたそうだ。さすが顔も魂もイケメン勇者、100%素で正義の味方やれるタイプである。

 どっかのファンタジーRPG遊んだら、燃えるハートの悪魔姉ちゃんの好感度爆上がり、白髪の吸血鬼エルフの好感度はガシガシ下がること疑い無しだ。

 

 で、俺はソファの影に隠れながら、こうして小声の雑談で暇を潰しているのだ。

 このまま行ければ楽だなー、と思ったが、思った瞬間に世界は俺を裏切った。

 

「おい! 早く開けろ!」

「はい・・・あれ、鍵が開いてる?」

「馬鹿! 鍵はしっかりかけておけと言ったろう!」

 

(!?)

 

 表から鍵をガチャガチャやる音と、話し声。

 怒鳴っているのはさっき潜入したときに聞いた口論の、若い方の声。

 

(師匠! ドラ息子が牢屋に入ってくる! カオルくんたちはまだ!?)

 

 心でメッセージを送る。一瞬の間があって師匠からの答えが返ってきた。

 

(まだ半分くらいのようじゃ! これは恐らく、役人か守備隊の中に商会に飼い慣らされた奴がおったんじゃな)

(くそっ!)

 

 カオルくんは国のバックアップを受けた勇者である。

 当然町に滞在するときは、そこの公的施設――守備隊の駐屯所を使う。

 ガサ入れの話を聞いて、そいつが何らかの手段でローリンズ商会にご注進したのだろう。

 

(どうするんですか師匠!? あいつら入って来ましたよ!)

(やむを得ん。ガイガーとアルテに突入して貰う。何とか時間を稼ぐんじゃ!)

(わ、わかりました!)

 

 そんな会話を交わしている間に、ドヤドヤと人が入ってくる。

 ソファの影であわててホログラフィックミラージュを発動する俺。

 タウさんが身を固くするのがわかる。

 

「急いで来てくれオードリー! 僕達の愛を邪魔しようと、勇者がこっちに向かってくるんだ!」

「だから私はオードリーではありません! タウハウシンです!」

「いいや君はオードリーなんだ! 僕のオードリーだ!」

 

 黙っていれば普通のお坊ちゃんという感じだが、鬼気迫る表情を浮かべて泡を飛ばす様は普通にキモい。というか怖い。

 

「私はあなたを愛してませんと何度言えば・・・!」

「僕がこれだけ君を愛しているんだ! 君が僕を愛していないわけがない!」

 

 見れば周囲の私兵もうんざりした顔をしている。

 気付いてないのは当人(チャールズ)だけだ。

 

(!)

 

 鋭敏化した聴覚に騒ぐ音が聞こえてくる。

 人の悲鳴に、アルテらしき声。

 

「坊ちゃん! 早く・・・がっ!」

 

 これは普通に聞こえる声で悲鳴が聞こえた。多分アルテにやられたんだろう。ガイガーさんにやられたら悲鳴を上げる暇もない。

 

「くそっ! お前達、扉を塞げ! 何でもいい積み上げろ!」

「は、はいっ!」

 

 慌ててタンスやら棚を鉄の扉の前に積み上げる私兵たち。

 そちらの方を見向きもせず、チャールズが剣を抜く。

 

「もう勇者たちが突入してきた。せめて・・・ここで死んで愛をまっとうするんだ、オードリー!」

「ひっ・・・」

 

 タウさんが体をこわばらせる。

 狂気を目に浮かべて一歩一歩歩み寄るチャールズ。

 お付きの私兵達もそれを止める気配はない。

 

「・・・!」

 

 と、その歩みが止まった。

 信じられないものを見たかのように目を見開く。

 その視線の向かう先。

 タウさんとチャールズの間を遮るように、光学迷彩を解いた俺がその場にいた。




ごはんだけでもおいしいわ。
(意味=時事ネタは風化するぞ(自爆))

なお私の一押しはカーラックさんです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。