異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第一章「昨日のアルテ」
第二話 後ろの正面だあれ


「昨日? そんな昔の事は覚えちゃいない」

 

     ――カサブランカ――

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 アルテが無言でふさぎ込んでいる。

 あの後イーサン氏は泊まってる冒険者の店の名前を告げて帰って行った。

 返事が貰えるまではここにいるつもりらしい。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 無言で食事を作り、無言で焚き火を離れて一人で過ごす。

 翌日の公演でも自分の出番以外では塞ぎがちだった。

 一緒のテントで寝ているカオルくんやリタにもろくに話さなかったというから相当だ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・」

 

 公演後、素振りをしながらチラチラと横目で見る。

 いつも明るくて動き回っててよく笑って、バイタリティの塊みたいな女の子が、丸太に腰掛けて地面を見ている。

 座長やガイガーさんたちは心配してるんだろうけど無干渉。

 カオルくんやリタやオブライアンさんはどうにかしたいけどきっかけがつかめない感じ。

 溜息をついて俺は素振りをやめた。

 

「どうしたんだよ、たそがれちゃって」

 

 そんな風にさりげなく腰を下ろせると思っていた頃が俺にもありました。

 

「!」

 

 何も言わずに隣に座った俺に、びくっと震えるアルテ。

 はいそうですよ! 何も言えてません! シャレたセリフとか優しい言葉とか無理ですよ!

 だってオラは彼女いない歴=年齢の童貞だから!

 

「・・・」

「・・・」

 

 あ、戸惑ってる。

 まあいきなり横に座られて何も話しかけてこないんじゃそうなるだろう。

 けどな、こっちだって話したいけど舌が動かないんや!

 

「・・・」

「・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

 

 いかん、会話が全くない! こっちをチラチラ見てるみんなも、大体呆れた顔になってる。

 何とかしなきゃ・・・そうウンウン唸ってると、いきなりアルテが切れた。

 

「あーもう鬱陶しい! いきなり何よ、横に座ってきて何か話すかと思ったら無言のままで! 何、ハヤトってばウロショメンか何かなの?! まあオリジナル冒険者族だものね!」

 

 はいすいません。

 ちなみに「ウロショメン」=「後ろの正面」である。

 どういう伝わり方をしたのか、こちらではいつの間にか後ろに立っている影みたいな妖怪として語り継がれてるらしい。なお立つだけで何もしないそうな。うーんまさに今の俺。

 閑話休題(それはさておき)

 

「まーそうね、私今のハヤトみたいに辛気くさい顔してたのよね、多分。・・・うん、決めた。おじさんとこ行ってくる。その、何とか公爵の家に顔だけ出してみるって」

 

 え、王都行っちゃうの?

 

「行かないわよ! どうせ一座が王都行くでしょ? その時にちょっと顔出せばいいのよ」

 

 あー。

 座長の方を見ると、苦笑しながら頷いた。

 まあアルテが決めたならそれでいいか。

 

「それでその・・・おじさんとこ行ってくるけど、ありがとね、ハヤト。

 アンタの辛気くさい顔のおかげで踏ん切りが付いたわ」

 

 そう言ってアルテはさっと立ち上がり、そのまま野営地の外に歩いていった。

 まあ役に立てたのは嬉しいが・・・言われて喜ぶべきなんだろうか、どうなんだろうか。

 

 

 

 アルテが会いに行くと(結局座長に尻を蹴られて俺もついていったが)イーサン氏は喜んで、というか安心して大きな溜息をついた。

 まあ二年くらいあちこちかけずり回ってたわけだからな・・・。

 

「と、言うわけでしばらく世話になるぜ」

 

 冒険者ギルドの郵便サービス(実際に運営してるのはタム・リス社という冒険者族経営の企業らしい)で手紙を送った後、野営地にやってきて居ついてしまったイーサン氏である。

 まあ雑用は手伝ってくれるし、トークも中々軽妙で話してて面白いおっさんなので一座の面々にも受け入れられてる。コミュ力高いなあ。

 

「で、そのレミンジャー公爵家だっけ? どんな家なんだい?」

 

 そんなある日の夕食後、座長と蒸留酒をジョッキで酌み交わしながらの会話である。

 あの人のペースについていける人がいるとは世界は広い・・・ラファエルさんやあれで酒豪のアーベルさんですら潰されるのに。

 なおガイガーさんは下戸である。この世界では鍛えればいくらでも強くなるはずなのだが・・・閑話休題(それはさておき)

 顎をいじりながら、言葉を選んでイーサン氏が口を開く。

 

「そうさなあ、まあもちろん公爵だからトリッチでも指折りの大貴族ではある。

 商売とかには手を出してなくて、領地からの上がりで生活している、昔気質の貴族って感じだな。今の当主のウルリヒ・ハンス・フォン・レミンジャー、つまり俺達の親父だが・・・も伝統を重んじる気質で堅苦しい」

 

 割とテンプレな大貴族様って感じかな。

 そう言うとイーサン氏が肩をすくめた

 

「まあ大貴族なんて大体そんなもんさ。金持ちだから何か改める必要がないしな」

 

 金持ち喧嘩せず・・・はちょっと違うか。

 少し硬い顔でアルテが口を開いた。

 

「私の名前は? 本当の名前は何て言うの?」

「アルテ、だ。お前のお母さんは踊りが好きだったから、『芸術(アルテ)』とつけたんだそうな」

「・・・そっか」

 

 安堵したように息をつくアルテ。彼女の名前は産着の縫い取りから付けられたのだと、後で聞いた。

 

「私のお母さんはどんな人なの?」

「お前のお母さんの名前はコルドラ。顔立ちはお前と良く似てる。優しい女だよ。

 一見したところでは素直で従順だが、根っこのところで意志が強い。一度思い切ると突飛なこともやらかす」

「割とアルテまんまだな」

「アーベルうるさい!」

 

 茶々を入れてきたおっさん小人族を睨むと、アルテがイーサン氏に向き直る。

 

「お父さんのことは知らない?」

「言った通り、俺は家を出てほっつき歩いてたからな・・・直接は知らないんだ。

 名前はランベルト・ベッカー。剣の師匠から知り合いの道場に強い奴がいると聞いたくらいか」

 

 この世界普通の貴族は剣とか勉強とか学校に行かず、親が教えるか家庭教師をつけるのが普通だ。その人は平民か、貴族としてもかなり下の方なんだろう。

 

「金持ちの商人が下級騎士の名義を買った家らしい。その中で突然出てきた変わり種って訳だ」

 

 坂本竜馬の実家みたいだな。どの世界でも似たようなことはあるってことか。

 

「実際妹とのなれそめも、雇われで舞踏会の警護をしてた時だったらしいからな。後はお定まりの恋に落ちて・・・ってやつだ」

 

 それで駆け落ちしてアルテが生まれたのか。

 

「ああ。冒険者稼業で稼いでたんだが、ある時帰ってこなくてな。

 妹も酒場で働いていたところを見つかって連れ戻され、その後妊娠が発覚。

 その後は話したとおりさ」

「・・・」

 

 その後しばらくアルテは考え込んでいた。

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