異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第六話 ガントレット

 がたごとがたごと。

 

「・・・結局、何もありませんでしたね」

「まあ何もなけりゃそれに越したことはないんだが」

「・・・」

 

 がたごとがたごと。馬車は森の中の道を行く。そろそろ秋も終わりで紅葉も大半は散ってしまっている。

 ヴェガスの町での公演を終え、旅立った馬車の中。

 ロボットアニメを見ながらそんな会話を交わす俺とイーサン氏。

 

 最後尾の馬車には俺とアルテ、カオルくんとリタ、御者席にはガイガーさん。

 イーサン氏は自分の馬で馬車の横についてきている。

 

 ちなみにアルテ以外の面子も時々交代して御者をやっている。

 リタに出来るのか?と最初は思ったのだが《会話の加護》のおかげで普通に御者出来ている・・・というか俺よりよっぽどうまいわ。

 俺も時々練習させて貰ってるんだが、まっすぐ歩かせるのにすら苦労する。下手すれば動いてくれない。

 カオルくんが基本的な所はさっと習得してしまったのとはえらい違いである。

 ちくしょう! この鮭のにぎり飯が天才だからちくしょう!

 

「何言ってるんだか・・・しかし手綱を取る姿が随分と堂に入ってますね」

「そりゃまあ30年くらいあちこち回ってるからな。東のディテクにも行ったし、北のダルクや南のゲマイにも行ったことがあるぜ」

 

 おー。結構な冒険家だなあ、この人。地球で言えばシベリアから中国、中央アジアからインドまでぐるっと回ってるくらいだぞ。

 

「まあガキの頃からそう言うのに憧れてたしな。性に合ってたんだろうさ・・・待て」

「・・・!」

 

 イーサン氏の馬がいななき、氏が表情を変えるのと、ガイガーさんが眉を寄せるのがほぼ同時。

 

(全員そのままで話を聞け)

 

 それに一瞬遅れて師匠の念話が全員に届いた。

 

(馬車はそのまま動かしておけ。道の曲がり角の向こう、300mほど先に待ち伏せがおる。通り過ぎたら左右から襲いかかってくる算段じゃろうな)

(なら簡単じゃん。ばあさんとハヤトとカオルで森ごと焼き払っちまえば)

(ここんとこ乾燥しておるし、地面は落ち葉で一杯じゃ。森ごと焼き芋になりたいなら止めんが、出来れば一人でやってほしいの)

(それ以前に妖精としては森の破壊は見過ごせないのですぞ)

(へいへい、アタシが悪うございましたよ)

 

 ふてくされた座長の心の声が途切れる。たぶん蒸留酒をラッパ飲みしてるなこれ。

 

(小僧、透明になって偵察に行ってきてくれ)

(了解)

 

 師匠たちが感知したのは、正確には角の手前にいる見張りだ。そいつが合図を出したので、師匠の遠隔感知の術で曲がり角向こうの襲撃者にも気付いた。

 とはいえ存在だけを感知する術なのでもうちょっと正確な情報が欲しい、と言うわけだ。

 

「ちょっと通りますよ・・・と」

 

 ミストヴォルグの能力で透明になって御者席から飛び立つ。

 

「はー、器用なもんだ」

 

 イーサン氏が感心していた。普通の人はかなり驚くもんだが、さすが緑等級(第三級)冒険者、魔法やら何やらにも慣れてるのだろう。

 それはともかく30秒かからずに俺は上空から道の向こうをざっと偵察することが出来た。

 ミストヴォルグセンサーで人間の息づかいや体温、赤外線や二酸化炭素まで感知できる俺に死角はない。うーん、頑張って隠れてる襲撃者の人達かわいそう(棒読み)。

 閑話休題(それはさておき)

 

(師匠、ちょっとまずいです。道の真ん中にバリケードが作られてて、そこまでの間、道の両側にずらっと弓を持った連中が待ち構えてます)

(! 何人くらいじゃ)

(弓を持ったのが100人。そうじゃないのが同じくらい)

(くそったれめが! 創造の八神にかけて、あいつら全員呪われてしまえ!)

 

 存外口の悪い師匠である。

 しかし合計で200人か。ひょっとしたら例の元締め連中が手を組んで、総力挙げて襲いかかってきたのかとも思うが、今そんなことを考えてる余裕はない。

 馬車はゆっくりとだが進み続け、もうすぐ曲がり角だ。時間にしてあと一分もないだろう。

 

(考えたくありませんけど、やっぱり森ごと焼いてしまうのが一番なのでは? その数に取り囲まれたら正直・・・)

(・・・むう、ですがですぞ・・・)

 

 ラファエルさんと、後オブライアンさんも不満そうな思念。アーベルさんですら僅かに反対の意志を示している。やっぱり妖精族にとって自然というのは守るべきものなんだろう。

 とは言えこの状況じゃ・・・

 

(ちょっといいかい?)

 

 割り込んできたのはイーサン氏だった。

 

(どのみち森の中にいたら飛び道具も呪文も効きづらい。

 相手を隠れ場所から引きずり出すのが一番いい。

 聞いてる限りだとバリケードくらいなら破壊できるよな?

 バリケードを破って待ち伏せしてるところを突っ切り、飛び出して来る連中に呪文なり《加護》なり叩き付けるのはどうだい)

(相談してる時間もないしね・・・よし、それで行くよ)

(お。それならこんなのはどうでしょう)

 

 かくかくしかじかと説明すると、座長も師匠も、他のみんなも頷いてくれた。

 

(よし、それで行くよ。待ち伏せはどの辺りからだい?)

(角を曲がって30mくらいからでしょうか。バリケードが100m弱くらい)

(それじゃ最後の馬車が曲がったところで全員全力疾走。リタとアルテは馬車の中に隠れてな。伏せて顔出すんじゃないよ)

(わかった)

(う、うん)

 

 俺は打ち合わせ通り、最初の馬車に乗り込む。イーサン氏は最後尾、三台目の馬車の後ろ。万が一の時にアルテ達を連れて脱出できるポジション。

 全員がなにがしかの準備をして、そのままゆっくりと先頭の馬車が角を曲がる。

 一台。二台。そして三台目・・・

 

「行くよっ!」

 

 響き渡る歌姫の美声。

 三台の馬車を引く馬たちに、一斉に鞭が当てられた。

 

「「「「「「ヒヒーンッ!」」」」」」

 

 走り出すと同時に御者席に降りる俺。隣には座長、後ろでは師匠が術の集中。

 隠れている襲撃者の顔がいくつも見える。目を丸くするもの、馬鹿だとあざけるもの、無表情で弓の狙いをつけるもの。

 

「今だっ!」

 

 待ち伏せの箇所少し手前、俺は《加護》を発動した。

 その瞬間、前から十本以上の矢が飛んでくる。

 

「なにいいいい!?」

 

 だが、驚愕の声を上げたのは襲撃者たちの方だった。

 展開されたのは半透明の、馬車をすっぽり包む傘のようなバリア。

 それが飛んでくる矢をことごとく弾き返す。

 

 「機獣世紀ゾアロイド」。

 様々な生物の姿をした機械生命体、ゾアロイドの戦いを描く、珍しい非人間型ロボットアニメ。その中でも主役メカの一つである、突撃用ライオン型ゾアロイド、シールドレオンの特殊能力である電磁シールド。

 これをまといながら敵陣に突っ込んで縦横無尽に大暴れするのが基本戦法の一つだ。

 今回俺は、これを馬車の周囲に展開したのである。

 火砲やレールガンすら弾く電磁シールドを、たかが弓矢で抜けるわけがない!

 

「しかし横なら・・・!?」

 

 駆け抜けていく馬車三台と馬一頭。

 先頭の馬車はカバーできても、後続はそうはいかない。

 だがまたしても驚愕の声を上げたのは襲撃者側だった。

 

「壁?!」

 

 右側に土の壁、左側に水の壁。

 車列を守るように、次々と左右に壁が立っていく。

 右は師匠、左はオブライアンさん。前に稼いだ魔力結晶はまだ十分な余裕がある。

 100mほどの壁を次々立てるくらいは造作もない。

 

「うろたえるな! バリケードはどのみち突破できない! 足が止まったところを襲え!」

 

 冷静な奴がいるのか、命令の声が飛ぶ。

 だが残念! それはフラグだ!

 

「ダン・ハヤト! 突貫します! うおおおおおおおっ!」

「なぁっ!」

 

 もはや絶句するしかないのだろう、指揮官らしき男の声が途切れる。

 疾走し続ける馬車。バリケードにぶつかって事故るかと思った次の瞬間、バリケードは電磁バリアに吹き飛ばされて爆発四散する。ついでに後ろで待ち構えていた襲撃者十人くらいがひき逃げされて宙に舞った。

 ただの盾じゃないんだ! 突撃用の武器なんだよ、これは!

 劇中では厚さ数十センチの特殊合金の扉すらぶち破ったんだ、いくら頑丈でも木のバリケードが相手になるかあ!

 

 そのまま俺達は突っ走り、待ち伏せの場所を通り過ぎる。

 森からわらわらと武器を持った男たちが出てきたが、これならもう大丈夫だろう。

 

「どうします? このまま逃げちゃいます? 今が駆け抜けるとき!」

「それは逃げろって言ってんのかい? まあ確かにっ・・・!」

 

 横を振り向いて座長にお伺いを立てた途端、馬車ががくんと縦揺れする。

 いてえ! 舌噛んだ!

 そんなことを考える暇もなく脱輪した馬車は横転し、俺は咄嗟に座長をかばった。




ガントレットはこの場合籠手のことではなく、
「兵士が二列に並んだ間を殴打されながら走り抜ける」古代~中世の罰のこと。
大体死ぬ。
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