異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第九話 密林の虎

「予定通り。明日の昼過ぎに決行だ」

 

 翌日、繋ぎ役はそう告げた。

 男は頷き、自分の部屋に帰る。

 小鳥に餌をやり、床についた。

 

 翌朝、男は集合住宅を出た。

 入り組んだ裏路地を一時間ほども複雑に歩き回った後、バラックよりはマシという程度の家に入っていく。表には占いの看板が出ていた。

 

「またか。ここのところ多いな」

「旅人の装いだ」

 

 水晶玉の前に座った、占い師と言うにはいささか神秘性が足りない老け顔の男。

 会話に応じることもなく、ただ必要な事のみを告げる。

 術師は溜息をつき、男を奥へ誘った。

 

「いつも通り半日でいいかい」

 

 頷くと、男は促されるまま椅子に座った。

 椅子の周囲にはいわゆる魔法陣が書き込まれており、ロウソクや魔力結晶、旅人に幻影を見せて惑わせるというシドナー鳥の尾羽などが置いてある。

 

「~~~~」

 

 男に小さな玉石を渡し、十数分間呪文を唱え続けると、椅子に座っているのは殺し屋シェフではなく、みすぼらしい旅行用マントと背負い袋を持った、初老の男だった。

 《幻影変装(ディスガイズ)》。儀式と魔力結晶によってそれを長時間固着させる技術。

 占い師を装う術師の、それが裏の稼業。

 

「・・・」

 

 いつも通り、姿見で自分の姿を確認すると男は懐から十枚ほどの金貨を出す。

 

「毎度あり」

 

 術師の声を背中に聞きながら、今や旅人となった男は裏口から通りに出た。

 

 

 

 太陽が地平線から離れて、町が動き始める頃、男は東の城門をくぐった。

 外見は完全に良くある旅商人か何かで、門番もとがめ立てはしない。

 周囲にもぽつぽつと同じような旅人。

 あるいはその中に自分と同じ組織の人間がいるかも知れないが、興味は無かった。

 

 一時間ほど歩いて街道が森に入る。

 道がカーブして城門から見えなくなってから更に数キロ。

 鬱蒼と茂った森が左右に広がり、細かく曲がりくねる箇所。

 昼前、遅くても正午には標的と護衛がここを通りがかるはずだ。

 

「・・・」

 

 どうやら既に「勢子」は周囲に潜んでいるらしい。

 気配でそれを感じとると、男は何食わぬ顔で待ち伏せ場所を通り過ぎた。

 そこから更に一キロほど歩いたところで、男は周囲を確かめて森の中に足を踏み入れる。

 

「密林の虎は孤独なるもの」

 

 コマンドワードを唱えると、男の姿が消えた。

 透明化。

 剣の腕や様々な技能と並び、男の暗殺者としての技量を支えるもの。

 男には魔術の心得はないし、透明化の指輪を持っているわけでもない。

 生得魔術(ナチュラル・ソーサリー)と呼ばれる珍しい資質。

 《加護》であったり後天的な付与の結果であったりするが、とにかく術師としての能力とは関係なく呪文めいた力を発揮できる能力だ。

 

 男が今の殺し屋として目覚めた時、それは既に身に備わっていた。

 奇妙なことに使い方には熟練しておらず、それからしばらく練習が必要であったが。

 ひょっとしたらこれが記憶を失った理由に関わっているのではないかと、男は思っていた。

 

「っ」

 

 こめかみに走る鈍痛。

 過去のことを考えるたびに生まれるそれは、余計な事を考えるなと警告しているかのようだ。

 

「・・・」

 

 溜息をつき、男は仕事に集中する。

 荷物の中から網を取り出し、その辺の枯葉をからめる。

 十分ほどで完成する、原始的なカモフラージュネット。

 手に持つ程度ならともかく、体をすっぽり覆うようなものにまでは透明化の効果は及ばない。

 《透明看破(シー・インビジブル)》の能力を持つものがいても、偽装を見破れない限り男には気がつかない。

 

 ネットをかぶり、男は森の中を後戻りする。

 周囲の「勢子」にも見つからないよう、木の影に身を潜めると、男は待った。

 

 

 

 一時間。二時間。男は待つ。

 三時間目が終わりに近づいてきた頃、かすかに音楽と話し声が聞こえてきた。

 馬車の中で劇の練習でもしているのか?と思ったが疑問を打ち消して集中。

 三台の馬車、最後尾には騎乗した男一人。

 

(・・・デューク!)

 

 つば広帽子に革のチョッキ、腰のサーベル。

 記憶の中にあるままの姿だ。

 彼が相手では透明化していても万が一がある。

 しかもそのデュークより強い、黒等級クラスの剣士がいる。

 恐らくチャンスは一瞬。

 数はそれなりに揃えたようだが、恐らく情報が正しければ一蹴されるだろう。

 鬨の声を上げて襲いかかる「勢子」達を見ながら、男は移動を始めた。

 

 

 

「またかよ!」

 

 師匠がその存在を告げたとき、俺は思わず叫んでいた。

 

「やれやれ、次の町に着く前にこれとはな。まあ、前回ほどじゃないから大丈夫だろ」

「そう願いたいですね」

「ほれほれ、仏頂面してたら気付かれるだろ。スマイルスマイル。『ろぼっとあにめ』も途切れさせないようにな」

 

 今までと変わらないにこやかな顔で会話を続けるイーサン氏。

 この辺の場慣れはさすがだなあ。

 

「でもそれじゃ、ガイガーさんもニコニコしてないといけないの?」

「こっちの旦那はいいのさ。いつもこれだからな。そうだろう?」

 

 上がる笑い声(リタ含む)。

 

「・・・」

 

 あ、ガイガーさんの眉がちょっと寄った。

 さすがにちょっと傷ついたかな?

 

「来るぞ」

「!」

 

 ガイガーさんの声に遅れること一瞬、森の中から襲撃者たちが飛び出してきた。

 

 

 

「うわっ!?」

「こいつら!?」

 

 前と同じように待ち伏せの場所を走り抜けようとしたら、その前に襲撃者が前に出てきて道をふさいでしまった。

 

「でもこれって・・・」

「ああ。お前さんの《加護》なりカオル嬢ちゃんの剣なりで一掃できるな」

 

 ・・・ひょっとして罠?

 

「とはいえ対応しない訳にもいかねえ。ここは俺が抑えておくから行ってこい」

「わかりました」

 

 ガイガーさんに続き、俺とカオルくんもアルテ、リタと頷き合って馬車から飛び出した。

 既にガイガーさんと座長が斬り込んで無双しているところに駆けつける。

 

「よけて下さい!」

「おうっ!」

「雷光よ!」

 

 二人が一歩下がったところに放たれるカオルくんの稲妻。

 森を燃やさないように控えめではあったが、それでも20人ほどの襲撃者が倒れた。

 そして俺は。

 

「ビィィィムフリーザァァァァァッ!」

 

 ちょっと神良明也(かみらあきや)シャウトっぽく放たれる冷凍光線。

 襲撃者たちの群れを撫でるように浴びせかけると、奴らはばたばたと倒れていった。

 

「凍りついてるわけでもないのに・・・ああ、そういうことか」

「そういうこと」

 

 極端な低温というのは、たとえ体を凍りつかせるほどでなくても、一瞬で人間の体を動けなくする効果がある。

 前回のダンジョンで、青玉の兜相手に実感したことだ。

 これなら火事になることもないし、万が一手練れがいてもロケットパンチみたいに切り払われずに済む。いやまあ、切り払われたことはないんだけどガイガーさんあたりやりかねない。

 閑話休題(それはさておき)

 

「気を抜くな、まだ敵の反応がある」

「取りあえず襲ってきた奴は・・・」

 

 師匠の警告に周囲を見渡した瞬間、森に悲鳴が響いた。

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