異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第十一話 十年越しの再会

「そう言えば街の外で襲われたこと、衛兵とかに言わなくていいんですか?」

「難しい所だな。領主がグルって確信がなきゃそうするんだが・・・」

「そもそも信じて貰えない可能性もあるのですぞ」

「顔役のところでそれとなく水を向けてみたんだけど、下っ端のごろつきが割の良い仕事を受けて大量にいなくなった、って話してたよ。少なくとも上の方は関わってないみたいだねえ」

 

 設営を終え、明日の公演を待つばかりの夕食後。

 俺達はそんな話をしていた。

 

「それよりアーベル、一日中いなかったけど何か収穫はあったのかい?」

「今日のところはなんとも、かな。もうちょっと時間をくれや」

「まあいいけど、早めに戻って欲しいねえ。芸人一座に道化師がいないと、やっぱもの足りないよ」

 

 肩をすくめて蒸留酒をぐびっとやる座長。ニヤリ、と小人の軽業師が笑う。

 

「ああ、こいつはまた、なんとも嬉しいお言葉でござんすねえ。

 けっこう毛だらけ猫灰だらけ、見あげたもんだよ屋根やのフンドシ、田へしたもんだよカエルのションベン、マツに流れるお茶の水、粋な姉ちゃん立ち小便!

 あっしみたいな田舎もんの流れ者が、おきれいな芸人一座のお姫さまにそこまで必要とされてたとは感謝感激雨あられ、イアルの山にも雪が降るってなもんで!」

 

 場が凍りついた。何人かは口の中のものを吹き出した。

 いきなりきつい訛りで立て板に水と口上を始めたアーベルさんに、みんな固まってる。

 小人族とはいえ、ラテン系の伊達男で通るハンサム顔の渋いお兄さん(かろうじて)がいきなり田舎者丸出しの口調で喋り始めたらそりゃ反応に困る。

 

 正確に言えば座長と師匠、ラファエルさん・・・つまり一座の古株とイーサン氏は固まってない。なおガイガーさんはいつもむっつりしてるので例外とする。にしてもどっかで聞いたような口上だな・・・?

 座長が凄く嫌そうな顔でアーベルさんを睨んだ。

 

「道化師が必要とは言ったけどね。アタシがそのカンラン訛りが嫌いなことを知っててやってるんだろうね?」

「おっと、そいつぁお門違いってもんで。あっしはみなさま方を楽しませようとしてるだけでやんすよ、お嬢様」

「そのお嬢様ってのもやめな。イヤミかい?」

 

 キリキリキリ、と急激に角度を増す座長の柳眉。反比例してご機嫌は急低下。

 

「おお、おお。この卑しき道化師めがどうしてその様な不遜をいたしやしょうか。

 あっしはお客様と、この素晴らしき一座の皆様を心から愛しておりやすよ。それがいかに酒臭く、脇の臭いお姫様であろうとも」

 

 座長の手から銅のジョッキが飛んだ。

 だがそれより一瞬早く、くるくるとトンボを切ってアーベルさんは3mほども後ろに脱出している。

 

「あひゃひゃひゃひゃ! こいつはとんだおひねりだ! お客様、踊り子さんには手をふれないようにお願いしますぜ!」

「待てコラァ! 誰がワキガだ!」

 

 ついに堪忍袋の緒が切れたのか、座長がマキを棍棒代わりにアーベルさんを追い回す。

 苦笑と呆れと反応に困るのと、多種様々な溜息が一斉に漏れた。

 

 翌日。

 結局衛兵には何も告げず、俺達はいつも通りの興行をすることになった。

 俺などは知らせた方がいいんじゃないかと思うのだが、アーベルさんとイーサン氏がいつになく強硬に反対した。イーサン氏はまだしもこの手の事に長けてるアーベルさんが反対してるので、師匠も座長もそれを尊重した格好だ。

 なんだろうね、スパイだか盗賊だかわからんけど仕事人のカンみたいなものか?

 

 やっぱり何かあるのか、イーサン氏もアルテの護衛を俺とカオルくんに任せ、アーベルさんと一緒に町に出てる。

 まあベテランの冒険者らしくあちこちツテがあるのかもしれない。

 しょうがない、俺にはその手の仕事は手伝えないからな。興行なり警戒なり護衛なり、できることをやるとしよう。

 

 

 

 男は頭痛と共に目を覚ました。

 過去を考えるときに起きるあの頭痛ではない、アルコールの過剰摂取に伴う、二日酔いのそれだ。

 

「・・・」

 

 部屋を見渡すと蒸留酒やワイン取り混ぜて、五本の酒瓶が転がっていた。

 昨夜エサを与えられなかったとおぼしき小鳥が、ぴいぴいと空腹を訴えている。

 

「・・・」

 

 男は小鳥にエサをやると、くみ置きの水で顔を洗い、身だしなみを整えて部屋を出た。

 

 

 

 一時間半ほど後。

 いつもの革なめし職人街の一角。

 そこに到着した男は軽く片眉を上げた。

 男はいつも約束の十分ほど前にやってくるが、繋ぎ役が先に来ていなかった事はない。

 しかし、今そこには誰もいなかった。

 

「・・・」

 

 何とはなしに不穏なものを感じる。

 体が自然と脱力し、ごく僅かに沈み込む。

 そしてそれが男の命を救った。

 

「!」

 

 男が素早く跳ぶのと、矢羽根が空を切る音がするのが同時。

 十本を超える矢が飛来し、うち数本は男の外套を貫いた。

 

(毒!)

 

 男の人並み外れた動体視力は、矢じりの何本かが太陽の光を反射して青くきらめいたのを見た。

 記憶が間違っていなければ、蛇系のモンスターから取った即効性の猛毒。

 毒への耐性にも相当の自信がある男をして即死は何とか免れるか、というレベル。

 

「密林の虎とは孤独なるもの」

 

 コマンドワードを唱え、生得魔術(ナチュラル・ソーサリー)を発動させる。

 だが、それは敵にも察知されていた。

 

「粉を撒け!」

 

 どこからか声が響くと共に、小袋が屋根の上や窓から放り投げられた。

 空中で開いたそれは金色の粉をまき散らし、通りはキラキラ光る粉に覆われる。

 

「!」

 

 周囲にきらめく塵が体に付着し、男のシルエットを浮かび上がらせた。

 

(魔道具の一種か)

 

 知識はないが察しは付く。

 そして男の能力をこれだけ正確に把握している敵についても確信する。

 

(組織)

 

 標的やその周囲に能力を気取られるほど迂闊な仕事はしていない。

 その自信がある。

 であれば十数年働いてきた組織以外に、これだけ用意周到な襲撃を行える勢力はあるまい。

 そこまで考えたところで男は裏路地に走り込んだ。

 

「追え! 逃がすな!」

 

 声がかかった瞬間、男の逃げ込んだ裏路地が闇に包まれる。

 

「《(ダークネス)》!?」

 

 きらめく塵も、魔法の闇を通して光を届けられはしない。

 襲撃者が周囲を固める頃には、既に男の姿はどこにも見えなくなっていた。

 

 

 

 繋ぎ役の男は、自分の家で慌ただしく荷造りをしていた。

 貴重品だけをかばんに詰め、組織の配下として二十年を暮らした家を振り返ることもなく後にする――はずだった。

 

「っ・・・」

 

 背筋に流れる汗。

 玄関の扉に手を伸ばしたところで、首筋に冷たい感触。

 

「動くな」

「シェフ・・・か?」

 

 問う必要も無いことを問うてしまったのは、やはり繋ぎ役の男も動転していたのだろう。

 

「質問は一つだ。何故俺を殺そうと思った。うまくいけばもうけもの、その程度の話と言ったな?」

「あ・・・明らかにお前がわざと失敗したからだ。『デューク』がいたとは言え、あの状況でお前が娘を殺せないはずがない」

 

 恐らくは《千里眼(ファー・シー)》か何かの呪文で監視していたのだろう。

 組織にはそれが出来るだけの魔法的リソースがある。

 

「・・・失敗した事に言い訳はしない。だがわざとじゃない。あの瞬間、強烈な頭痛が襲ったからだ」

「頭痛? では記憶が戻ったわけでは・・・」

「!」

 

 失言したことに気付いたのか、繋ぎ役の男が鋭く振り向く。その袖口からは、毒矢を装填した仕込み弓。

 

「がっ」

 

 だが、仕込み弓が発射されるよりも、男が繋ぎ役を斬る方が早かった。

 脇腹から胸を存分に切り裂かれ、血と臓物をばらまいて繋ぎ役の男が倒れる。

 男がしゃがんで顔を近づけた。

 

「記憶とはなんのことだ。俺の過去を知っているのか」

「・・・」

 

 ごぼごぼ、と言う音。

 繋ぎ役はそれきり動かなくなった。

 

「・・・」

 

 立ち上がり剣を鞘に収めようとして、男がドアの方を振り向く。

 ほぼ同時に勢いよくドアが開き、男が二人なだれ込んできた。

 

「「シェフ!」」

「ガルガンチュワ・・・デューク」

 

 アーベル、イーサン、殺し屋シェフの三人が死体を挟んで向き合った。

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