異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第十六話 潮風よ、縁があったらまた会おう

 何もない空間に俺が姿を現す。

 どら息子のチャールズのみならず、後ろの私兵達もぎょっとした顔になった。

 慌てて扉から離れて剣を抜こうとするが、まさしくそのタイミングで部屋が揺れる。

 誇張に聞こえるかも知れないけど、マジで床と天井が揺れた。

 

「助けに来たよ! ハヤト、無事!?」

 

 アルテの声だ。

 

「無事だ! タウさんも傷一つない!」

「オッケー! ぶち破るからちょっと待ってて!」

 

 そして再び部屋が揺れる。

 私兵達が吹っ飛びかけたバリケードを慌てて押さえつけ、その衝撃に耐えた。

 数センチある鉄の扉が歪んでる・・・《怪力の加護》パねえ。

 

(これなら何とか・・・)

 

 私兵達は扉から離れられない。チャールズ一人なら。そう思ったところで銀光が走った。

 

「!?」

「ちっ、意外に勘のいい」

 

 下段からすくい上げるような一刀を繰り出してきたのは、驚いた事にローリンズ商会のボンクラ息子、タウさんの一方的ストーカーの変質者であるチャールズだった。

 今咄嗟にかわさなかったら、頸動脈切られて即死だったぞ・・・!

 

「・・・」

 

 じりっ、と無言で間合いを詰めてくるチャールズ。

 やべえな。この一月で武術の基本くらいは叩き込まれたけど、その時稽古つけてくれた騎士団の人と比べても遜色ないくらい強く見える・・・!

 あ、ガイガーさんは規格外ね。あれは俺が評価できるようなレベルじゃない。

 閑話休題(それはさておき)

 

「クレセントムーン」

「お?」

 

 俺の両手に銀色に輝く三日月型の刃物が現れる。

 忍者ロボ・ミストヴォルグの近接装備、クレセントムーン。

 クソ息子は一瞬驚いたようだったが、すぐに元の表情に戻って俺を鼻で笑った。

 

「色々面白い術を使うな。それとも《加護》か? どっちにしろ震えてるのはごまかせないぜ」

 

 くそ、こいつ本当に鋭いな!

 良く見れば身体も結構鍛え込んでるし、ガイガーさんみたいな達人じゃなくても普通に強い!

 

「・・・」

「・・・」

 

 じり、とチャールズが一歩踏み込む。

 じり、と俺が一歩下がる。

 

「・・・」

「・・・」

 

 それを数回繰り返して、俺の足がソファの角に当たった。

 すぐ後ろにタウさんがいる。これ以上は下がれない。

 その間に何度も部屋が揺れるが、頑張らなくていいのに頑張っている私兵達がアルテを突破させない。

 

「坊ちゃん! もう限界です! 扉が持ちません!」

 

 悲鳴のような私兵の訴えに、チャールズが舌なめずりする。

 

「すぐ終わる。さあオードリー、このクソアマを片付けて、僕達の愛を完結させるんだ!」

 

 踏み込み。

 その速度は俺には反応できないレベルだ。

 振り下ろされる剣が俺の肩口から入り、胴体を存分に切り裂くだろう。

 そんな情景を幻視する。

 だがそれは現実のものにはならなかった。

 

「ジェットシャックル!」

「ぐえっ!?」

 

 俺が叫ぶと同時に後ろから鉄の首輪が奴の喉に食い込んだ。

 ぴんと張ったチェーンに引っ張られて、奴が潰れたカエルのような声を出す。

 

「ダブルクレッセント!」

 

 その瞬間、俺が踏み込んだ。

 両手の三日月を振るっての連続攻撃。

 画面の中のミストヴォルグには及ばなくても、棒立ちになった奴を倒すには十分だった。

 

 ジェットシャックル。

 ミストヴォルグの数多い特殊兵装の一つ。

 チェーンワイヤーにつながれた、ジェットエンジン付きの手錠。

 相手の動きを封じるためのものだが、今回はそれを奴の後ろから発射し、鉄の輪を首にかけると同時にチェーンを地面に固定して、奴の動きを封じたのだ。

 

(とは言え、一瞬遅れたら死んでた・・・!)

 

 今更のようにダラダラ流れる冷や汗。

 

「坊ちゃんっ!」

「!」

 

 チャールズが倒されたのを見た私兵が振り返って剣を抜く。

 まさにその瞬間、アルテの圧倒的暴力に耐えきれなくなった鉄の扉がついに吹っ飛び、バリケードや私兵のおっさん達を巻き込んで盛大に石壁に突き刺さった。

 振り向いた私兵もそれに巻き込まれて気絶する。

 

「ハヤト! ・・・大丈夫みたいね」

 

 まあなんとか。声を出すのがおっくうだったので、疲れた笑顔で頷いておく。

 ペトロワ師匠とガイガーさんも顔だけ出して僅かに頷いている。

 そして扉のあった空間の正面に立つ、気弱そうな男性一人。

 

「~~~」

 

 ペトロワ師匠が短く呪文を唱えると、その姿が元のオブライアンさん・・・魚人妖精(オアンネス)のグルパーゴさんに変わる。

 

「タウハウシン!」

「兄さん!」

 

 二人が部屋の中央で抱き合う。

 

「妹よ・・・良かった・・・」

 

 涙ぐんだオブライアンさんの声が、静かに響いた。

 

 

 

 その後屋敷が騒がしくなり、タウさんにペトロワさんが《透明化(インビジビリティ)》の呪文をかけ、同じく光学迷彩で透明化した俺と一緒に脱出した。

 ペトロワさんたちが心配だけど、あの面子が揃ってるんだ、どうにかなるだろう。

 

「勇者カオル・タチバナである! 奴隷売買の証拠は挙がっている! 大人しく縛につけ!」

 

 途中カオルくんの声が聞こえてちょっと振り向いたが、押っ取り刀で駆けつけてきた五十人以上の私兵、それも遠目に見ても結構強そうな連中をほとんど一人で片付けてた。

 わあすごい。

 

「・・・なんて現実逃避している場合じゃないな! タウさん、捕まって!」

「は、はいっ! ・・・きゃあっ!?」

 

 俺の左手でプロペラが回り、しっかりしがみついてくるタウさんと共に俺は宙に舞った。

 実はミストヴォルグはヘリコプターやパトカー、その他全部で六種類の姿に変形できる。

 ヘリコプターのプロペラはロボット形態でも展開でき、それを使って空を飛べるのだ。

 

 テイルローターがないと空中でくるくる回っちゃうだろうって? そもそも片腕くらいの大きさのプロペラで飛べるのかって? 知らん、そんなことは俺の管轄外だ。

 ともかく夜の闇の中、俺達は南の海を目指して空を飛んでいった。

 

 

 

「ありがとうございました・・・これからも兄をよろしくお願いしますね? ぼんやりしてますが、悪い人ではないので」

「ははは、こっちの方がお世話になってる気もしますけど、はい、わかりました」

 

 夜の海辺。

 町から南に40kmほどの、無人の海岸である。

 

「ここからなら大丈夫・・・ですか? あなたたちの住んでるところからは随分遠いと思いますけど」

「そこは魚人妖精(オアンネス)ですから。少し時間はかかるでしょうが、海岸沿いに行けば帰れると思います。ほんとうにありがとうございました」

 

 いえいえ。

 そう言おうとしたらタウさんの顔がすぐ近くにあって、ほっぺたに未知の感覚。

 あれ? これキスされたの?

 固まってる俺を見てタウさんはくすりと笑い、最後にもう一度一礼してから海に身を投じる。

 疲労と困惑もあり、俺はしばらくそこから動けなかった。

 

 

 

 なお野営地に帰れたのは夜が明ける頃だったが、アルテにはもの凄く不機嫌な顔で、その他の面々にはニヤニヤした笑みで迎えられた。俺ってそんなに顔に出るかなあ?

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