異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第十三話 十六年前

 シェフ・・・ランベルト・ベッカーは最下級の貴族である騎士爵家の次男だった。

 正確に言えば養子縁組で騎士爵を買った商家の息子だ。

 長男は商家を継ぎ、次男であるランベルトは自由に生きられる立場。

 だがランベルトには剣才があった。

 父はそれをことのほか喜び、ランベルトも10代半ば頃には剣で取り立てられ、立身することを夢見るようになっていた。

 

 とは言え金を積みコネをたぐっても、新規召し抱えというのはそう簡単に起きない。

 そこでランベルトは冒険者として地道に名を上げることにした。

 幸運にも恵まれて二十そこそこにして緑等級(第三等級)間近と言われるほどの剣士となった。

 そうなると騎士爵持ちで礼儀もしっかりしている腕利きと言う事で、貴族家からも依頼が舞い込みはじめる。

 そんな依頼の一つ、大貴族レミンジャー公爵家主催の舞踏会の警護任務。

 その日、彼は運命に出会った。

 

「・・・」

「・・・」

 

 お仕着せに身を包んだランベルト。

 栗色の髪のドレスのコルドラ。

 互いに一目で恋に落ちた。

 

 季節を越えるごとに感情は深まっていった。

 それと共に絶望も少しずつ。

 

 コルドラは貴族の最高位である公爵家の娘だった。

 当時から既に弟の出来の悪さは知れ渡っており、場合によっては入り婿を貰って家を継ぐ可能性すらあった。

 ランベルトは貴族の最下級、それも金で爵位を買った家。

 平民から見ればそれでも貴族だが、本物の貴族から見ればまがいものでしかない。

 そもそも正式な爵位と領地を持っている人間からしてみれば、領地を持たぬ騎士爵のごときは貴族ではない。

 そう平然とうそぶくものすらいたし、そうした意見は決して少数派ではなかった。

 

 正式に、周囲に祝福されて結ばれることなど万に一つもない関係。

 互いを諦めきれない二人が駆け落ちを決めるのに、さほど時間はかからなかった。

 

 

 

 一市民としての生活は楽しかった。

 西の隣国に脱出し、冒険者として稼ぐランベルトと、その帰りを待つコルドラ。

 正式な結婚式を挙げた二人は、何はばかることもなく夫婦として暮らしていた。

 緑等級に昇進していたランベルトの稼ぎはよく、それなりに裕福な暮らしも出来ていた。

 

 そのままであれば理想的な家族として、幸せな一生を全うすることも出来ただろう。

 そして妻から懐妊を告げられた幸せの絶頂の日、彼らの幸福な生活は終わりを告げた。

 

「古代遺跡の探索?」

「ああ。例によって腕の立つ護衛が欲しいって事でね」

 

 提示されたのはかなり割の良い金額。

 これまでにも何度か調査の護衛を依頼されていた顔見知りであることもあり、ランベルトは疑問を感じず引き受けた。

 

 調査隊にとっては幸運なことに――ランベルトにとっては不運なことに、その遺跡は「当たり」だった。

 それまで調査したそれらとは違う、「生きた」遺跡。

 防御機構や守備のゴーレム、魔獣等も含めて完全に機能を維持していた遺跡の攻略には、集められた緑等級冒険者をもってしてもかなり苦戦したが、それでも最深層にまでたどり着いた。

 

「なんだこりゃ・・・?」

 

 誰かが呟く。

 液体の満たされた巨大なカプセルの中でうごめく、スライムとも肉の塊ともつかぬもの。

 

「おお、おお・・・!」

 

 リーダーである老婆を始め、調査隊の学者たちがカプセルのコンソールに群がる。

 ランベルトたち護衛が見守る中、いくばくかの時間が流れた。

 

「!」

 

 そろそろ野営の準備をするべきかと思い始めたとき、カプセルの中の肉塊が大きくうねった。

 

「やった! やったぞ!」

 

 流体のように大きくうねって球体になる肉塊。

 水平に裂け目が入り、大きく開いたそれの中から現れたのは巨大な眼球。

 ランベルトの記憶はそこで一度途切れている。

 

 

 

 次に気がついたとき、彼は既にシェフだった。

 組織のために働く殺し屋という役割を与えられ、それに疑問も抱かずに従った。

 今にして思えば同じように動く殺し屋の中に、共に遺跡調査の護衛をした緑等級冒険者の顔もあった気がする。

 

 そして仕事を果たしていく中で知ったことが一つ。

 遺跡調査をする学術団体かと思っていた組織が、実は王国転覆を狙う反政府団体――もっと言うなら、「王制そのものを破壊する」事を目的とする団体だったと言う事だ。

 単に権力を奪取するだけではなく、王制、君主制、封建制――そうしたものからのパラダイムシフトをもくろむ、「ミンシュシュギ」を奉じる集団。

 「王に叛くもの(アンティゴネー)」。

 それが組織の名前だった。

 

 『公爵(デューク)』と(恐らく皮肉を込めて)名乗っていたイーサン・フォン・レミンジャーと『剛力無双の巨人(ガルガンチュワ)』を名乗っていたアーベルと出会ったのもこの頃だ。

 デュークは凄腕の野伏せり(レンジャー)で騎兵、ガルガンチュワは同じく凄腕の間諜(スパイ)にして暗殺者。

 ともに組織の理念に共鳴して参加した人材で、有能で熱心で忠誠心厚く・・・そしておしゃべり。

 もう一人の女と合わせて彼ら四人は組織の最高のエージェントであり、頼りになるのは間違いなかったが、任務を共にするたびに辟易させられたものだ。

 

 だが、そんな彼らとの仲も十年ほど前までだった。

 それまではまだしも人死にを出さず、それなりに「穏健」な活動をしていた組織であったが、ガルガンチュワとデュークの証言によれば、まさしく彼が組織の一員になった頃から先鋭化し始めた。

 誘拐が殺害に。窃盗が強盗殺人に。軍資金の調達は金持ちのみから貧しい人々にまで及ぶようになった。

 

 そしてある時組織が立てた計画、とある王国の王族の大量誘拐。

 既にその時、心は離れかけていたのだろう。ガルガンチュワとデュークは人死にが出ない事を再三再四確認した上で作戦に参加した。

 だがその結果は無惨の一言。

 召使いや王族の子供、赤ん坊までもが冷たくなっているのを見た二人。それ以降再会するまで、シェフは彼らの姿を見なかった。

 

 そしてもう一人、彼らとチームを組んでいた女は指導部に抗議して処刑された。

 組織の頭領――彼女の祖父によって斬られたと聞いている。

 

 最悪なのはそれだけの被害を出して組織が事実上掌握したその国が、大混乱に陥ったことだった。

 組織の手のものだった大商人たちが合議制で治めるはずだった国は、半年も経たないうちに利権争いからの私兵同士の戦いが起こり、あっという間に内乱になった。

 十年間の血みどろの争いの後、数ヶ月前に王家の傍流の貴族が改めて王になり、内乱はようやく終わったと聞いている。

 組織の手のものやシンパは徹底的に狩り出されて殺されたそうだ。

 

 不思議な事に、それだけのことがあっても組織から離脱しようとか、逆らおうとか、そう言う気は湧いてこなかった。

 それでも上層部には危険視されたのか、組織の拠点の一つであるこの町にとどめ置かれ、滅多な事では遠出を許されなくなった。

 そして十年。

 新たな運命が彼のもとにやってきた。

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