異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「まさか、シェフがアルテの父親だったたぁね・・・」
話し終えると、アーベルが溜息をついた。
長話をして頭痛がぶり返したのか、シェフは無言で額に手を当てている。
「世間は狭いもんだ。まさか若気の至りで飛び込んだ組織の同僚が義弟とは・・・」
「確かにコルドラに冒険者になった兄がいるとは聞いていたが・・・」
互いに面識のなかった義兄と義弟が遠い目になる。
「ほれ」
「すまん」
アーベルのついでくれた水を、ゆっくりとシェフが飲み干した。
再びベッドに横たわるシェフ。
しばし、無言の時が流れた。
「・・・コルドラはどうしてるのか、聞いてもいいか」
「あいつは実家に連れ戻された後娘が死産だと聞かされて、しばらく独り身を通していたが知り合いの伯爵のところに嫁に行った。
子供はいないが、俺の目から見ても仲の良い夫婦だよ。
今回アルテの生存がわかったんで、俺がこうしてあちこち飛び回って探し出したわけさ」
「そうか」
言葉少なに頷く。イーサンは何も言わない。
シェフの頭が横を向いた。
「ガルガンチュワ・・・いや、アーベルか?」
「好きに呼ぶさ。なんだい」
「娘は・・・アルテはどうなんだ。今は幸せなのか?」
「まあそれなりに楽しく人生やってると思うぜ。明るくていい子だよ。
最近は男も出来たしな」
「なにっ!?」
自分でも意外なほど大きな声が出た。
起き上がろうとして、頭痛がぶり返す。
「ぐうっ・・・」
「馬鹿、無理すんな・・・おい、アーベル」
「すまん」
苦笑しながらの謝罪を手を振ってスルーする。
「さすがに気になるか」
深い溜息。
「そうだな・・・正直混乱している。
自分に娘がいることすら、ついさっきまでは忘れていたのにな。
何と言えばいいのか、そもそも何か言う資格があるのか・・・頭の中がごちゃごちゃだ」
「だろうな」
何とも言いがたい顔でイーサン。
「まあそこまで気にする事はない。アーベルはああ言ったが、どっからどう見ても子供のおままごとレベルだからな。
せいぜい手を繋ぐか、ほっぺたにキスくらいが関の山だ。
アルテの方はかなり本気なんだが、相手の男が何と言うか・・・悪い奴じゃないんだがヘタレでな」
「・・・」
思い出したのか、盛大に苦笑するイーサン。
アーベルも似たような表情だ。
「まあハヤトはいい奴だよ。ちょいと臆病だがいざって時は腹が据わるし、考えなしのようで存外切れる。
これは秘密で頼むが、何しろオリジナル冒険者族だからお坊ちゃん育ちで学もある。お人好しで女にも優しくて礼儀正しい。
《加護》も恐ろしく強力だから、その気になれば英雄にも大金持ちにもなれるだろう。
嫁にやるならこれ以上の良物件はそうそうないと思うぜ」
男を狙うライバルが二人(ひょっとしたら三人)いることはあえて触れないアーベルである。
これ以上シェフを混乱させないと言う事もあるし、この世界では一夫多妻がさほど珍しくも不道徳でもないので「どうせそのうち収まるところに収まるだろう、ガイガーの旦那以外は」的に一座全員高をくくっているところもある。
「オリジナル冒険者族ということは・・・200人を一度に片付けた術師というのがそいつか」
「ああ、正直とんでもねえ。ムラッ気があるのが玉に瑕だが、本気出したら国一つ潰せるよ、あいつは」
「・・・そうか。ほどほどで良かったんだがな」
「ほどほど?」
天井を見上げる遠い目。
「ほどほどに名を上げて、ほどほどの嫁を貰って、ほどほどの財産を残して、ほどほどの男に娘を嫁入りさせる。それがベストだったのかも知れないと思ってな。
今にして思えば、騎士爵を買った商人の息子程度が正式な騎士になりたいなどと、随分と大それた事を望んだ。
仕官を望んで、公爵の娘と恋に落ちて、分不相応のものを望んだばかりに俺は今何もかも失ってここにいる」
「・・・そうでもねえだろ。少なくともコルドラはお前と恋に落ちたことを後悔はしてないし、そうでなければアルテだって生まれなかったんだ。
騎士の夢だってそうだ。王様ならともかく騎士くらいかわいいもんじゃねえか。
あんまり自分を責めてやんな」
息をつく。
「ありがとう、デューク・・・イーサン」
「よせって」
イーサンが照れたように顔を背けた。
「で、どうするよ」
「どう、とは」
「決まってんだろ。この後の身の振り方だよ。アルテに会うのかどうか、それだけでも決めて欲しくはあるね」
ゆっくりとシェフが首を横に振った。
「今更、か?
コルドラもアルテも、幸せに暮らしているならそれでいい」
イーサンが肩をすくめた。
「・・・お前がそう言うなら、それについては何も言わんがね。
「潰す」
断定だった。
はっきりと、聞き間違えようのない言葉、誤解の余地のない口調。
「少なくともこの町の組織の戦力についてはある程度調べてある。
本部や諜報員、戦闘員の居場所についてもだ。
今なら、お前達の助力があれば潰せる」
ヒュウッ、とアーベルが口笛を吹いた。
イーサンが満面の笑みを浮かべる。
「なんだ、組織に忠実な殺し屋をやってるかと思ったら、中々どうして用意周到じゃないか」
「その組織が信用できなかったからな。当然の用心だ」
淡々と述べるシェフ。
イーサンとアーベルが、ほとんど双子かと思うような、人の悪い笑みを浮かべた。
「マジかよ」
案内されたのは領主の城だった。
堀があり、高さ9mの石壁があり、その上を兵士達がきびきびと見回っている。
「俺の記憶だと家臣の何人かに組織の息がかかってた程度だったが・・・」
襲撃されてこのライサムの町にたどり着いたとき、警邏に届け出ないことを主張したのもそのためだ。
「今は領主が組織の協力者だ・・・もっとも、組織の本当の目的は知らないがな」
「用心しといて良かったぜ」
場合によっては衛兵に囲まれて一網打尽にされていただろう。
無論現在でもその危険が去ったわけではない。
「俺とイーサンは一度うちの野営地に戻る。場所は知ってるな? 夜になったら忍び込む。
その辺の酒場でいいか?」
「なら、『泥ブタ亭』でいいだろう。そこの路地の奥だ。ブタの看板を出している」
「オーケイ」