異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第十五話 泥の中で転げ回るブタみたいに

「はーい、ご観覧ありがとうございましたー! おかえりはこちらー!」

 

 今日も一日興行して、俺の手品も座長の歌もガイガーさんのコマの刃渡りも大受けした。アルテの怪力芸もリタの動物芸も中々の喝采を頂いて大喜びである。

 そして何より、何も起きなかったことにほっとする。

 帰るお客さんを誘導しながらそんなことを考えていると、肩を叩かれた。

 

「もし、君」

「え、はい」

 

 40から50くらいの、柔和な小金持ちのおじさんと言った感じの人だ。

 裕福な商人か、知的な顔をしてるから学者さんかも知れない。

 若い頃はさぞかしシュッとしたハンサムだったんだろうなと思わせる整った顔立ちである。

 

「君、手品をやっていた人だよね。アシスタントに女の子を連れて」

「あ、はい、そうです」

 

 まあステージ衣装のままなので見ればわかることだ。

 

「それで何か?」

「うむ。あの女の子、君の奥さんかね?」

 

 ぶっふぉぉぉぉぉ!?

 

「きたねえな、おい!」

「す、すいません!」

 

 思わず吹いてしまった俺のしぶきブレスをマトモに浴びた人から文句が飛んでくる。

 うん、これは俺が悪い。平謝り。

 いやでもこれは吹くだろ! 確かにこの世界なら夫婦でもおかしくない年だし、男女のコンビ芸人ってそう言うのが多いらしいけどさあ!

 

「あれ? どうも違ったみたいだね。失敬失敬」

「いきなり変な事言わないで下さいよ!」

 

 人の良さげな笑みを浮かべるおじさんに小声で抗議。

 あ、笑みがちょっと意地悪な感じになった。

 

「なに、あの娘さんと君が随分と仲むつまじく見えたものでね。

 ・・・本当に彼女とは何もないのかね?」

 

 うぐぅ。

 いや、あるといえばあるんですけど今はまだ何もないというか・・・

 ちょっと、何なの、そのなんか見透かしてそうな笑み。

 

「うんうん、そうかそうか。大体わかった。初々しいなあ。若い頃を思い出すよ」

 

 両肩をポンポンと叩かれる。

 なんかこういう、「うんうん何もかもわかってるから」みたいなのやめて欲しいな!

 初対面のおじさんにすら看破されるって、俺ってどれだけサトラレなの!

 

「それでは仕事の邪魔になってるようだし、これで失敬。

 まあ彼女を大事にしてやりたまえよ」

 

 おじさんはそう言って、後ろ手に手を振りつつ雑踏に消えていった。

 なんなんだ・・・

 

 

 

 お客さんを帰して楽屋に戻ると、アーベルさんとイーサン氏が戻ってきていた。

 中間報告しに来ただけで、今日は夜っぴて調べ物をするらしい。

 まあ調べ物って言ってもこの二人のことだから、図書館で本を調べるとかそういうのではないよな・・・

 

「大丈夫ですか?」

「馬鹿言え、俺がしくじるかよ。そっちこそ何かないとは言い切れねえんだ。警戒を怠るなよ」

「うす」

 

 頷く俺の肩を、ぽんぽんと叩いて姿を消す二人。

 なんか妙に微笑ましいものを見る目で見られたんだが・・・ほんとなんなんだ、もう。

 

 

 

「おたくとの仕事はこれが最後だ」

「・・・」

 

 無言でシェフは頷いた。

 いつもの占いの館、変装屋の老け顔の術師。

 

「・・・」

 

 いつものように魔法陣の中央に置かれた椅子に座り、施術を受ける。

 注文通り、どこか不潔な感じを与える無精髭の中年の顔。

 それを確かめてから、普段より多いコインを渡す。今までの礼のつもりだ。

 

「今日はサービスしといたよ。二日間は解けないはずだ」

「・・・感謝する」

 

 少し驚いて頭を下げる。

 相手の方が一枚上手だったらしい。

 見透かされていたことに奇妙な喜びを感じながらも、これが最後と惜しむこともなく、シェフは店の裏口を出た。

 

 

 

 深夜の泥ブタ亭。

 路地裏に似つかわしい、土の床にテーブルとベンチを並べただけの、粗末な深夜営業の酒場。

 

「シェフか?」

「ああ」

 

 無精髭の中年男が、背中を向けたまま頷いた。

 アーベルの後ろのテーブルに腰を下ろした見知らぬ男。

 顔も服装も声も似ても似つかないが、彼らなら身のこなしや体格で察しが付く。

 (動きに違和感が出てくるため、「幻影変装」の呪文は体格を余り大きく変えられない)

 

「じゃあ行くか?」

「いや・・・もう少し待とう」

 

 イーサンとアーベルが頷く。

 城の住人もベッドに入っている時刻だが、完全に寝入ってしまうまで待とうと言う事だ。

 

「どれくらい?」

「ジョッキを一杯カラにするくらいだな」

 

 そう言ってシェフはエールを一杯注文した。

 

 

 

 注文したエールを、飲むふりをして大半は床にこぼした後、シェフは店を出た。

 少し時間をあけてアーベルとイーサンも続く。こちらは本当に飲んでいるが、双方鍛え上げている上にアーベルは妖精だ。元の耐久力が違う。

 シェフも似たようなものだが、仕事前にアルコールを摂取するような習慣はない。

 アーベルたちに一々何か言おうとも思わないが。

 ぶらぶらと歩きながら周辺に目を配る。

 

「そう言えばこの辺だったか?」

「ああ」

 

 なんの変哲もない堀端とそこに立つ柳の木。

 三人は――その時は四人だったが――この城で仕事をしたことがある。

 その時に使ったルートは組織にも知られてないはずだ。

 

「ここで?」

「ああ。アーベル?」

「周囲には人はいねえ。壁の上にもな」

 

 感覚の鋭い小人妖精(バグシー)に確認をとると、コートの隠しポケットから細く、頑丈なフック付きのロープを取り出す。

 投げたフックは一発で城壁の矢狭間(でこぼこ)にひっかかり、柳の木にもう一方の端を結びつける。

 黒く塗られたロープは闇の中に消えて、常人にはまず気付かれない。

 アーベルが気取ってお辞儀をする。

 

「それではお先にどうぞ」

「思いやりのあることだ」

 

 無表情のまま軽口を返し、シェフはロープを伝って堀を渡り始めた。

 

 

 

 夜半、いきなり目が覚めた。

 でかい岩が砕けるような音がして、ラファエルさんやオブライアンさんと一緒にテントの外に飛び出す。

 既にガイガーさんや座長やカオルくんは武器を片手に臨戦態勢。

 師匠は何やら呪文を唱えている。

 

 また音が響いた。

 町の中央が明るく光っているが、建物が邪魔になって直接は見えない。

 

「ぬっ!」

 

 術を発動したらしき師匠が、顔をこわばらせる。

 

「何があったんですか、先生!」

「それが・・・いや、見た方が早かろうわい」

 

 師匠が杖を振ると、映像が空中に浮かび上がった。

 ・・・これ、お城? 瓦礫になって炎上してない?

 

「!?」

 

 ちょっと待て、今瓦礫が動いたぞ! 多分10m以上の範囲で!

 ってことは・・・

 

『VROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO・・・・・・・・・・』

 

 遠吠え。

 「それ」が立ち上がる。

 周囲の瓦礫を吸収し、融合して。

 

「うおっ・・・」

「なんだいありゃ・・・」

 

 それが町の中央に立ったのがここからでも見えた。

 

『VROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO・・・・・・・・・・』

 

 城の炎にライトアップされ、瓦礫をコールタールで固めたような岩と黒い粘体の巨人がもう一度吠えた。

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