異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
都市の隅っこ。芸人一座がたむろする空き地一帯から、アルテの手を引っ張って歩み出る。
「ちょ、ちょっと! どこ行くつもりなの!? どうせ何も考えてないんでしょ!?」
ようやく我に返ったアルテが何かひどいことを言っている。
ふっふっふ、しかし! 今回に限っては抜かりはないのだ!
「あ、今回に限っては大丈夫って顔」
「今回」はつけんでよろしい! 俺は常に準備周到な男なのだ!(自称)
ヴィエンヌ育ちのイーサン氏にあれこれ聞いておいたんだよ! 庶民でも入れる程度のちょっとお高いデートコースとか!
ちなみにご本人は何回くらいご利用したので?と聞いてみたら、「154人くらいかな?」とかさらっと言いやがった。ちくしょうめ。
他人のモテ話を聞くと俺は悶え苦しむのだ、嫉妬でな! まあ取りあえずは腹ごしらえと行こう。
教えて貰った劇場の並ぶ通り。
地球風に言えばヴィエンヌ・ピカデリーとかか。
そう言う所にはやっぱり食い物屋も軒を連ねてるもので、取りあえずイーサン氏お勧めの洒落たレストランに入る。
二年以上前の情報だからちょっと不安だったが、幸いレストランは今日も元気に営業中だった。聞いた話だとこのへんで数百年続いてる老舗なのだとか。
「申し訳ありませんが、相席になります。よろしいでしょうか」
「ありゃ」
さすが人気店。しかも昼飯時となると待たされなかっただけ有情か。
アルテが頷くのを確認すると俺は了承の意を伝え、席に案内して貰った。
テーブルには上品なヤングミセスって感じのお姉さんが座っており、互いに一礼してから席に着く。
「どうも、相席失礼します」
「かわいらしいカップルさんね。ひょっとしてデートかしら?」
「ぶはっ!?」
メニューを取ろうとしていたアルテが吹き出した。
「そそそそそっそそんなわけが」
「少なくともこっちはそのつもりです」
「ああああああああああああんたねえっ!?」
「苦しい苦しい」
アルテが俺ののど首をわしづかみしてブンブン揺らす。
やめて、ただでさえ少ない味噌がこぼれちゃう!
というかこいつ動揺するとてきめんに言語能力が低下するな・・・等と思っていた所でお姉さんのカットが入った。
「あら、ごめんなさい。私が変なことを言ったものだから。
お詫びにここは御馳走するから、彼を放して上げてくれない?」
「・・・」
ニコニコ笑顔で言われてむっつりと手を止めるアルテ。
手を止めた理由のどのくらいが食欲なのだろうか。
「おうふっ」
見えないところで足を踏んできた。
「顔に出てんのよ!」
相も変わらず俺に責任のないことで責められる日々。解せぬ。
「うめっ!?」
「美味しい!? 何これ!」
運ばれてくる山盛りの料理。
一口食べて、俺達は言葉を失った。
子牛肉の揚げ物にフライドポテト、ぴりっと来る麺料理、平べったいパンにチーズやトマトソースをかけて焼いたもの。焼きソーセージに粉チーズをかけたサラダ。
普通のパンとバターすら、いつも食ってる奴とは比べものにならぬ。特にバターがすげえ。ひょっとしてあれか、焼きたてのパンに作りたてのバターという奴か?
「あら、意外と
なるほど、と頷きながらひたすらむさぼり食う俺達。
ちなみにアルテの方が多い。
普段ならこんな事を考えたら最低でもじろりと睨まれそうだが、幸い今は目の前の料理に夢中である。ひまわりの種をむさぼり食うハムスターみたいでかわいい。とっとこアルテ郎!
まあ目の前のヤングミセスにはくすくす笑われてるので例によってバレバレのようではあるが!
食後にはクリーム山盛りのコーヒー。
この世界緑茶や紅茶はないけどコーヒーはあるのね。似たような何かかも知れないけど。
デザートはチョコレートケーキに細かく刻んだパンケーキと色とりどりのフルーツを和えたもの。
これまたうまいっ!
気がつくと、山ほどあった料理は全部腹の中に消えていた。
「あー・・・おいしかった・・・」
多幸感にひたっているのか、言語能力を低下させてるアルテ。
いやほんと美味しかったが・・・これひょっとして地球・・・ごほんごほん、冒険者族の料理か?
今にして思えば仔牛のカツレツにスパゲッティペペロンチーノ、ピザ・マルゲリータにシーザーサラダ、ウィンナーコーヒーにザッハトルテ。パンケーキとフルーツを和えたやつも、欧州スイーツでそんなのがあった気がする。
フライドポテトにかかってたのも、ちょっと違うが多分タルタルソースだ。
後ウィンナーコーヒーって「ウィーン風コーヒー」って意味だからな? ウィンナーソーセージ(これもウィーン風ソーセージという意味である)が入ってる訳じゃないからな!?
「本当に食通なのね。ここ冒険者族の店なのよ。ニホン直伝の味ってことね」
ああそれで。ホントに日本人、こっちの世界に大きな足跡を残してるな・・・ん?
今気付いたが、このお姉さんとアルテって結構似てるな。
髪も栗色だし、並べたら姉妹で通るかも。それを言ったらお姉さんが嬉しそうに頬を赤らめた。
「やだ、姉妹ですって! お上手ね!」
「私もこんなお姉さん欲しかったなあ」
キャアキャア喜ぶお姉さんと、しみじみ言うアルテ。
そうか、こいつ孤児院育ちだからな・・・はしゃいでたお姉さんが、ふっと表情を暗くした。
「どうしたの?」
「うん。実はね、私にもあなたと同じくらいの・・・妹がいるの。
もうすぐヴィエンヌに帰ってくるんだけど、どんな顔して会えばいいのか」
「お姉さんだったらきっとうまくやれるわよ」
笑顔のアルテ。お姉さんは暗い顔のまま。
「でも・・・妹とは随分疎遠なのよ。私のことを恨んでるかもしれない・・・え」
アルテが身を乗り出して、お姉さんの手を握った。
「大丈夫。しっかり気持ちを伝えれば、きっと妹さんも仲直りしてくれる。
お姉さんいい人だもの」
「・・・ありがと」
アルテを引き寄せてほっぺたにキス。あ、アルテがちょっと嬉しそう。
「そう言えばこの後は? やっぱり劇?」
「はい、仕事のお休みなので見に来たんですけど、いいのないかなって」
「旅人さんみたいだけど、ここの劇はそれほど見慣れてないのよね?
それならディテクオパーで『こうもり男』やってるからお勧めよ。私も見に行くところだったから、何なら一緒に・・・あら、でもお邪魔しちゃ悪いわね」
くすくす笑うおねえさん。ぼんっ、と顔に血を集めて水蒸気爆発を起こすアルテ。
「ででで、デートじゃありませんから! だからお姉さんと一緒に是非カンカンガクガクしたいです!」
観劇したいですと言いたいのかなアレは。
俺が肩をすくめて見せるとお姉さんはくすりと笑い、アルテの手を取って立ち上がった。
「で、どうだったんだい? どこまで行った? 二人でご休憩とかして来ちゃった?」
なんでそんなに楽しそうなんだ、
二人きりのデートではなかったけどアルテが随分明るくなったし、まあ結果オーライ! そう言えばあのお姉さん、互いに名前も知らないまま別れちゃったな。
ともかく俺がそれに答える前に、野営地に衛兵がドヤドヤと踏み入ってきた。
「そいつだ! 捕まえろ!」
「え? 私?」
衛兵の一人が指さすのはアルテ。
「昼日中から強盗を働いた挙句、衛兵多数に重傷を負わせた凶悪犯! 大人しく縄につけ!」
「どぅええええあおわああああ!?」
名状しがたいアルテの悲鳴が野営地に響き渡った。
驚くのはともかく、その汚い悲鳴は女の子としてどうかとハヤト思います。
「うるさいわね!?」
「ディテクオパー」はウィーンの庶民向け劇場「フォルクスオパー(民衆のオペラ、の意)」のもじり。
上演してるのが「こうもり」ならぬ「コウモリ男(バットマン)」なのでディテクティブ・コミックス・オペラ(ぉ
多分東のディテクから来た人が作ったとかそう言うエピソードがあるw