異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第二十話 ドッペルゲンガー

「重ねて言う、大人しく縛につけ! 抵抗するとためにならんぞ!」

 

 衛兵の隊長さんがアルテに指を突きつける。

 余りのことに一瞬フリーズしてた座長が再起動した。

 

「ちょ、ちょっと待ちなよ! この娘がやったって証拠でもあんのかい!」

「私が証人だ! 目の前で大暴れしてくれたのだ、言い逃れは利かんぞ!」

 

 あ、隊長さんの前歯が欠けてる・・・良く見たら兜が拳の形にへこんでるし、確かにこんな事ができるのは俺の知る限りアルテくらいしかいない。

 

「ちょっと、どっちの味方よ!?」

 

 いや別にそういう意味では・・・しかしここで衛兵相手に大暴れするのもどうか?

 やってやれないことはない。五十人近くいるが、腕の立ちそうな人は数人程度。下手すりゃ俺一人でもなんとかなる。

 ガイガーさんにちらりと視線をやるが、彼が動く気配はない。

 そんなことを考えている間に前に出たのはイーサン氏だった。

 

「隊長、ちょっといいかな?」

「む」

 

 興奮してた隊長さんがちょっと冷静になる。

 視線はイーサン氏の胸の、翡翠色の認識票。

 

「緑(等級)・・・!」

 

 兵士がざわついている。やっぱ凄いんだな、緑等級って。

 俺達もイレマーレのダンジョン踏破したときに緑等級の認識票貰ったけど、特例みたいなもんだし。

 

「俺はレミンジャー公爵家の庶子、イーサン・マリオン・フォン・レミンジャー。

 そちらの娘もレミンジャー公爵家当主ウルリヒ・ハンス・フォン・レミンジャーの孫に当たる人間だ。連れて行くにしても、もう少し詳しい話を聞かせて貰えないかな?」

「公爵家ぇっ!?」

 

 今度こそ隊長さんが仰天した。

 まあそうだな。暴れた酔っぱらいを捕まえたら征夷大将軍か水戸のご隠居だった、みたいなもんだ。

 そう考えると総理大臣の息子だろうが日本一の金持ちだろうが、容赦なく逮捕できる日本っていい国だったんだなあ・・・。

 閑話休題(それはさておき)

 

「その、ですね。先ほど申し上げたことがほぼ全てでして・・・グラーベン通りの『グランツ』という宝飾店で店員数名に重傷を負わせ、首飾りを強奪したところに巡回していた私の隊が出くわしまして」

 

 いつの間にか隊長さんが敬語になっている。

 公爵家パワーすごい。

 

「捕縛しようと試みたのですが、十四人いた警邏は全員殴り倒されたり、放り投げられて二階の窓に飛び込んだり・・・私もこのザマです」

 

 そう言って兜を脱いだ頭には包帯、チェインメイルの袖をまくり上げた下にも添え木と包帯がしてあった。

 イーサン氏が難しい顔になる。

 

「それがアルテってのは間違いないんだな?」

「間違いありません。店の者と部下に聞けば、全員この娘だと言うでしょう・・・まあその、誤魔化す手段がないとは言いませんが」

 

 隊長さんの歯切れが少し悪い。

 公爵家パワーのおかげもあるだろうが、変装の幻術とか変身とか、そう言う魔法があるわけだし。

 

「事件が起きたのはいつ頃だ?」

「強奪が午後十二時十分ほど、警邏の衛兵が全滅したのが五分から十分ほど後のことです。宝飾店に時計がありましたのでほぼ正確かと」

 

 この世界、例によってオリジナル冒険者族によって一日は二十四時間になっており、柱時計もあれば懐中時計もある。

 懐中時計は高級品だが、柱時計や置時計くらいなら中産階級でも手を出せる程度。うちの一座にも一つある。

 まあ中産階級もそんなにいないので、大概の庶民は寺院の鐘で時刻を知るのだが、それでも時刻の概念はかなり細かいし正確だ。

 

「アルテ、昨日はハヤトと一緒に出かけてたな。その頃はどこにいた?」

「え、ええと・・・ごはん食べてたころだっけ?」

「劇見る前の腹ごしらえで、劇場の並んでる通りの・・・『レーヴェ』って店でお昼食べてたと思います」

 

 店にも時計があったので、ちらっと時刻を見ていたから大体間違いない。

 

「だよな。オデオ通りだ。グラーベン通りまで、ゆうに三十分はかかる。

 『レーヴェ』で話を聞いて二人のアリバイが証明できるなら、この娘が犯人ではないって事になると思うがどうだ?」

「・・・ですね」

 

 隊長さんは考え込むような顔。公爵家の権力と、実際にそうかも知れないと言う思案とが半々というところかな?

 

「わかりました。それでは確認が取れるまで拘束は致しません。

 その、実際に冤罪が証明されても、場合によってはお話を聞かせて頂けるとありがたいのですが」

「ああ、その場合は可能な限り便宜を図るよ。アルテもそれでいいな?」

「う、うん」

 

 アルテが頷いたのを確認し、隊長さんは敬礼してから衛兵の人達と一緒に帰って行った。

 助かった・・・権力とか貴族の権威って横暴に使われる事もあるが今は感謝だな。

 

 

 

「しかし・・・これ結構まずいことになってない?」

「なってるなあ」

 

 衛兵さんたちが帰る前にちょっと隊長さんの兜を貸して貰ったのだが、手形ならぬ拳型がアルテのそれとピタリ一致した。

 つまり外見も声も、ついでに能力もアルテそっくりの何者かがうろついてるって事だ。

 それも明らかな悪意を持って。

 

「話聞く限り犯行自体は数分。こりゃあ巡回の警邏がすぐそこにいることを知っててやったな」

「宝石を盗んで、私に罪をなすりつけようとしたって事!?」

「むしろなすりつけの方がメインじゃねえかな。

 アルテ並みの怪力があるなら忍び込んで金庫でも扉でも力づくでぶち破ればいい」

「うう・・・後怪力とか言うな」

 

 カイリキー芸(何故か変換できない)を披露するときはしっかり「怪力娘」と紹介されてるのだが、普段のアルテはそう呼ばれるのを嫌がる。

 うーん女心。

 

「ハヤトうるさい!」

 

 いや何も言うてへんやん。

 

「顔がうるさいのよ!」

 

 そんな理不尽な。

 なおそんな理不尽を回りは見てみぬふりである。ハヤト寂しい。

 

「見てみぬふりじゃなくて、単に擁護できないだけだと思うよ、ハヤトくん」

 

 チクショー! 何だかとってもチクショー!

 まあそれはさておき。

 

「これは・・・」

「やっぱりアルテに対する攻撃として、目的はなんだ? 公爵家の後継者レースから排除することか?」

 

 可能性は高いですなあ。

 これまで直接攻撃をやって来てことごとく潰えたから、今度は搦め手でってわけだ。

 まあ正直こんな変人ばかりのイロモノ芸人一座が、一騎当千の猛者揃いとは誰も思うまい。

 

「一番の変人でイロモノはお前さんだと思うがね」

 

 はいそこ(アーベルさん)うるさい。否定はしないが!

 

「というか、公爵家の娘が強盗で捕まったとか、噂だけでも後継者から外される理由になったりします?」

「なくはねえなあ。今のアルテは親父にとっちゃ下々の中で育った得体の知れない娘だ。

 第一印象を大きく下方修正する効果はあるだろう・・・しかし、やっぱりお前さん意外に頭切れるな」

 

 はいどうも、心ない言葉ありがとうございます!

 何で俺を褒めるときはみんな大概「意外にも」とか「見かけの割に」とかつけるんですかね!

 

「おや、理由をはっきり聞きたいかい?」

 

 うるせえな飲んだくれ! ニヤニヤすんな! 自分でもわかってるよ! むかつくだけだよ!

 そこにまあまあと割って入るイーサン氏。あんたも顔が笑ってんぞ。

 

「そいつは失敬。まあともかくだ。こうなったらいっそこのまま公爵家に行って、しばらく預かって貰うってのはどうだ?

 ニセモノが何をしようと、公爵家にいました、って言われたら大概そこでおしまいだ。

 お前さんたちほどじゃないが、護衛も腕の立つのが揃ってるしな」

「むう・・・」

 

 イーサン氏の、突然だが確かに利のある提案。

 全員が一瞬考え込んだ。




>中産階級
ウォーハンマーというTRPGだと、「中産階級」はそれ自体が一つの職業(キャリア)扱いになってたりしますね。
それだけ中世世界では珍しいと言うことなんでしょう。
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