異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
全員での話し合いの結果、ともかく一度公爵家に行ってみようと言うことになった。
責任者と言う事で座長、護衛に俺とカオルくん。もちろんイーサン氏も一緒だ。
「ただ、ちっと気にはなるな。この状況」
「・・・公爵家に行くところまで含めて相手の思い通りってことかい?」
「ただのカンだがな」
肩をすくめるアーベルさん。
イーサン氏と座長もちょっと考え込んだが、やがて首を振る。
「この際しょうがない。まあ公爵様の反応次第だね。アーベルは引き続き探っとくれ。ばあさん、明日の興行は悪いけど頼むよ」
「ああ」
「しょうがないの」
それぞれに頷いて、俺達は翌日に備え眠りに就いた。
公爵家・・・でけえ!
向こうの貴族のお屋敷とか宮殿とかテレビでは良く見てたが、実際に目の当たりにするとまた格別だな・・・
イーサン氏が門番のほうに歩いていく。割りと歳が行ってるけどカクシャクした人だ。
「よう、スタンビー。久しぶりだな」
「これはイーサン様、お帰りなさいませ。そちらが・・・はあっ!?」
こっちを、正確にはアルテを見たスタンビーさんが目を丸くする。
漫画なら入れ歯が飛び出してるところだ。
「こ、これは・・・」
「良く似てるだろ?」
「ええ、生き写しで・・・」
「・・・」
アルテは余程お母さんに似ているらしい。
「親父たちは?」
「いらっしゃいます。コルドラ様と、ヘルン様も」
「・・・そうか。ほれ、行くぜ」
「う、うん」
勝手知ったる自分の家、とばかりにずかずか入っていくイーサン氏(いや実際自分の家なんだが)。
それについて行く俺達。
アルテが目の前を通るとき、スタンビーさんが深々と礼をしていた。
「お帰りなさいませ、イーサン様。御当主様方ですか? 談話室におられます」
「おう、ありがとよ」
片手を上げるイーサンに、執事が深々と礼をする。
召使いの人がすれ違うたびに腰を折って礼をするのを見てると圧倒されるわ。
本物のハイソの世界だ。
「めんどくさいだろ? あいつらには悪いが、ああ言うのが嫌でね。それで家を飛び出したようなもんさ」
顔半分振り向いて、イーサン氏が肩をすくめる。
うーん。
まあ確かに四六時中これだと息がつまるかも。
「入るぜ、親父殿」
ノックすると返事も待たず入っていくイーサン氏。
「イーサン?」
「兄さん!」
俺達も恐る恐る後に続くと、談話室には使用人数人と三人の男女がいた。
まずやせ型で上品な三角形の顎髭・・・山羊髭というらしい・・・を整えた厳格そうな老人。これが当主のウルリヒさんだろう。
40くらいの小柄なおっさん。いい服着てるが、傲慢さが顔に出ている。多分ヘルンさんだ。
そして最後に髪を編み上げた上品な貴婦人。全員の顔に驚愕の色がある。
・・・ん? んん? このご婦人どこかで見たような・・・
「あーっ!? あなたたち!?」
「あーっ!? あの時のお姉さん!?」
え、あっ!? 髪型も服装も化粧も全然違うから気付かなかった!
レストランで会ったヤングミセスだこの人!
「・・・」
「・・・」
呆然と見つめ合うアルテと・・・推定コルドラさん。
いやしかしおかしいだろ、どう見ても20代だぞこの人。
どう見てもアルテの母親には見えない。
「なあおい、どういう事だ?」
二人を見比べて困惑顔で尋ねてくるイーサン氏。
まあその、実はかくかくしかじか。
昨日あったこと、レストランで相席して一緒に劇を見てお茶して別れたことを話す。
部屋にうなり声と溜息が満ちた。
「まあ取りあえずだ。妹はいくらなんでも盛りすぎだろう
40近いくせに、まだ乙女気分か?」
「いいじゃないそれくらい! だってお姉さんって言われたんだもの! 姉妹みたいって言われたんだもの! 見栄張ってみたくなるじゃない!
後歳のことは言うな!」
うーむ。げに恐るべきは女の執念。
化粧はお化生とは良くも言ったもんである。
「そこの君、今私を化け物扱いしなかったかしら?」
「いいえ、決してそんなことは」
睨まれてしまった。
その俺を呆れたような目で見た後、イーサン氏が溜息をついた。
「実際若作りだろうがお前は。まあ取りあえず紹介するぞ。
そこのじいさんが俺達の父親で当主のウルリヒ・ハンス・フォン・レミンジャー。
若作りが妹のコルドラ・マルテ・フォン・ミュラー。
老け顔が弟のヘルン・ボウマン・フォン・コロード。こう見えてコルドラより年下だ」
「兄さん!」
「愛情溢れる紹介、感謝いたしますよ兄上」
皮肉げな笑みを浮かべて軽く一礼するヘルンさん。
「で、こちらがコルドラの娘のアルテ。本人確認は・・・いらないよな?」
三人がそれぞれ頷く。ヘルンさんは結構不満そうではあるが。
何度も言ってるが、疑いようもないくらいに若い頃のコルドラさんとそっくりなんだろう。
コルドラさん本人が気付かなかったのは・・・まあ昔の自分の顔なんてそう見ないからなあ。今の自分の顔で常に上書きされちゃうし。俺だって小学生の頃の写真見て「え、これ俺?」ってなったし。
「そちらのレディがシルヴィア・ハスキー。アルテが世話になってた芸人一座の座長さんだ。
コルドラは知ってるそっちの男の方がハヤト・ダン。男装の麗人がカオル・タチバナ。
三人とも緑等級冒険者で、ハヤトとカオルはイレマーレの騎士爵もちでもある」
「む」
「へえ・・・」
俺達の緑等級なんて半分名誉職みたいなもんだが、それでもそう紹介したのは、ウルリヒさんたちが俺達を軽く見ないようにという気遣いだろう。騎士爵にしても、ただの平民と最低限とはいえ貴族では多少扱いが違ってくると言う事じゃないかと思う。
それぞれの反応が返ってくる中で、ウルリヒさんが鋭く眼を細めた。
「それはつまり、イレマーレのダンジョンを踏破したのがその者達と言う事か?」
え。
「へえ、察しが良いじゃないの親父殿」
「茶化すな。イレマーレのダンジョンが攻略されて一ヶ月、それ位は嫌でも耳に入る。ハルギアと金剛石の龍を討伐したのが冒険者族の二人組ということもな」
おどけるイーサン氏をウルリヒさんがじろりと睨む。大貴族と言うだけあって、それなりに情報力も高いらしい。
コルドラさんは純粋に驚いているが、ヘルンさんは渋い顔。アルテにあれこれ文句つける気だったのが、更に難しくなって不機嫌なんだろう。
アルテとコルドラさんがそっくりだからイチャモンをつけられなくてワンナウト。
緑等級冒険者三人(イーサン氏含めれば四人)という、下手な軍隊でも対抗出来ない戦力が傍にいてツーアウトだ。
ん?
「ですがね、父上。この娘、昼日中から宝石店に押し入って首飾りを強奪し、警邏の者に重傷を負わせたそうじゃないですか。
仮に血が繋がってるとしても、こんな娘を公爵家の係累として認めてもよいものでしょうか?」
「何だと!?」
ヘルンさんの言葉に目を剥くウルリヒさん。
コルドラさんも目を見張っている。
「あー、親父殿。その件についちゃもう警邏と話が付いてる。
強盗が起こった時刻には、こいつらコルドラと飯食ってたからな。
コルドラ、一緒に食事してたのは十二時過ぎから一時くらいだろう?
そしてその後は一緒に観劇していた」
「え、ええ」
不安そうにコルドラさんが頷く。
「グラーベン通りの宝石店で強盗事件が起こったのは十二時十分。
お前と飯食いながらパッと行ってパッと帰ってこれる距離じゃねえよ。
だから安心しな」
「そ、そう・・・よかった」
最後の言葉は心底の本音だろう。
ウルリヒさんも頷いてる・・・が、ヘルンさんは渋い顔。
とっておきの情報が空振りに終わってスリーアウト、チェンジってところか。
・・・しかし、それなり以上に耳ざといウルリヒさんが知らなかった情報を知ってたってのは気になるな・・・
ぎこちないながらも立ち上がって抱き合うコルドラさんとアルテを見ながら、俺はそんなことを考えていた。