異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
黒いケイと白いフランツ。
ぬう、親戚だったか!
アルテに色目を使う黒白の双子を俺は睨みつける。
ああ、憎しみで人が殺せたら――!
「君ねえ・・・」
脇で溜息をつくカオルくんの姿も、今は俺の目に入っていない。
色男殺すべし慈悲はない! 俳句を詠め!
俺が内なる漆黒の奈落ソウルに体を売り渡そうとしたとき。
「・・・ん?」
何か黒白が言い争ってる。
「俺が先だ! 兄なんだからな!」
「生まれたのは同時だろ! 僕の方が先に声をかけたんだぞ!」
「お前グレーチェンと婚約話が持ち上がってるだろうが! 遠慮しろ!」
「いつも兄貴風吹かせやがって! どうせ政略結婚なんだから家を継ぐ兄貴がすりゃいいだろ! 僕は愛に生きるんだ!」
あ、両手を組んで力比べを始めた。手四つで双方引かない。
審判のロックアップ! 違うか。
なおアルテはその様子を呆れた、というかさめた目で眺めていた。
イケメン二人が自分を巡って争うのは、女性にとってある種垂涎のシチュなんだろうが、残念ながらアルテは「やめて!私のために争わないで!」とか、男から求められることに「カ・イ・カ・ン」となるタイプではない!
女のくせに恋愛脳が発達してないからな! ざまあみろだ!
「君ね、今言ったことアルテの耳に入れてもいいかな?」
すいませんカオル様、ちょっと調子に乗りました。それだけはお許しを。
「いい加減にしろお前ら」
「いてっ!」
「あたっ!」
結局黒白兄弟はイーサン氏からゲンコツを喰らい、アルテのダンスの相手も彼にかっさらわれて、恨みがましそうな目で二人を眺めることになった。
当然だ! 俺が呪ったからな!
「だからさあ・・・」
なおイーサン氏はさすが上流育ち+緑等級だけあって、アルテの骨を砕くストンピングも難なくかわして一曲踊りきった。やっぱすげえなベテラン冒険者――!
でもトチ狂ってアルテを口説くようならデモゴディで踏み殺す。
「おーい、こっち戻ってこーい」
ぺしぺしと俺の頭を叩くカオルくん。
はっ、俺は今何を?
我に返るとちょっと疲れた顔のアルテがこっちに歩いてくるところだった。
「お疲れー」
「つかれたー・・・」
まああれだけ踊り続けたんだし、体力も気力もゴリゴリ削られてるよな。
水分補給にしても、いつもなら手桶一杯の水を一息に飲み干す豪快なアルテなのだが、この場では飲み物を飲むにも一々気を使わないといけない。
そのストレスは想像に難くない。
「で、どうする? 飲み物でも持って来る?」
こう言う時自然にこう言うセリフが出てくるのがカオルくんである。おのれイケメンめ。
「いやその・・・ちょっと会場の外で・・・」
「風に当たるの? それだったら俺達もついていくよ。公爵家の中とは言え、一人じゃ危ない」
そう言ったら何故かアルテが真っ赤になった。
「い、いや、ハヤトはいいの! カオルについてきて貰うから!」
「えー? でもなるべく安全を考えて・・・」
ぽんぽん、と叩かれる肩。
「ここはボクが一緒について行くから」
「そりゃまあカオルくんなら大抵一人でも大丈夫だろうけど、にしたって・・・」
みしり。
何かが強く軋む音がした。
多分幻聴だろうけど、アルテの握った拳からそんな音がした気がする。
「い・い・か・ら。そこにいなさい。わかった?」
「アッハイ」
アルテからは怒りの視線。
カオルくんからは呆れと憐れみ半々くらいのそれ。
解せぬ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あっ!? そうか、そういうことか!?
鈍い俺がようやく二人の言葉の意味を理解したのは、彼女たちが戻ってくる直前だった。
「あー、もうそろそろ終わりか・・・疲れた」
「立ちっぱなしだもんねえ」
喉も渇くし腹も減る。
しかも目の前には美味しそうなごちそうやジュースなどが山と並んでいるのである。
これは拷問! 飢え乾いた囚人の目の前で美味しく飲み食いしてみせるという伝説のメシ・トーチャリング!
いかんな、空腹で脳がおかしな方向に回転しつつある。
「まあもうちょっとだよ、がんばろう。それに、おえらいさんはこういうところでも食べたり飲んだりとかは余りできない物らしいよ」
「そうなの?」
「ああ言う人達にとっては、この手の席は交渉や顔つなぎの場であって、飲み食いしてるヒマはないんだってさ」
「うへえ」
ハイソってのも大変だ。俺庶民で良かったわ。
「ほらあれ」
「うわあ」
現在アルテは近寄ってくる男どもが全滅したので、公爵様に連れられてあちこちに挨拶回りに行っている。
明らかにガチガチで、俺の目には引きつった口元までよく見えた。
「・・・ん?」
それに気付いたのはカオルくんだった。
「どうしたの」
「いや、このパーティ、コルドラさん夫妻やヘルンさんもいたよね」
「イーサン氏もね」
「ヘルンさんがいない」
「!」
ミストヴォルグの強化視覚で周辺を探る。
いない! いつの間に!
最初の挨拶の時にはあの不景気な仏頂面は確かにいたのに!
「どうする?」
「先生に頼んで・・・」
その瞬間、大広間の中心が黄色い煙に包まれた。
「!?」
ピーッ!と俺の脳裏に鳴る電子音。これは・・・!
「カオルくん、近づくな! あれ催眠ガスか何かだ!」
「えっ!?」
踏み込もうとしていたカオルくんの足が止まる。
ミストヴォルグの赤外線センサーに映る、煙の中の人影。
パーティの客がばたばたと倒れていく中で、そいつだけは平気で動き回っていた。
しかもアルテのところに一直線に向かっているんだから、語るに落ちている。
だがこの煙をどうにかしないと・・・オメガデモゴディのオメガタイフーンを始め、強風で敵を吹き飛ばす技はそこそこある。しかしアルテや他の人達に巻き添えを食らわせないようにするには――
「カオルくん、俺から離れて!」
「! わかった!」
飛び離れる彼女を確認もせず、俺は腰の村正を抜く。
「天よ地よ、風よ雷よ。我に力を貸し与えたまえ――天空風雲剣、真空竜巻!」
顔の前に縦に構えた刀。
それを中心に渦巻く空気。
「マシンロイド ガイアの大逆襲」。
主人公の流派に伝わる宝剣・剣龍の力を借り、大自然を操る技の一つ。
直径2mほどのごく細い竜巻を生み出したそれは台風の目にいる俺や、逆に離れた人達には全く影響を及ぼさず、天井を突き抜けて穴を開け、周囲の空気を吸い上げて屋根の上にぶちまける。
広間に充満していた煙は、あっという間に薄れて消えた。
「なっ!」
黄色い煙の中で動いていた男――今まさにアルテに手をかけようとしていた中年貴族が思わずこちらを振り返る。
「はっ!」
すかさず踏み込んでいたカオルくんの一撃。
火花が散り、金属音が響いた。