異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第二十五話 こうもり男

 中年貴族は、いや、中年貴族のような何かはカオルくんの斬り下ろしを左腕で防いでいた。

 《加護》特化の俺と違って白兵能力も緑等級レベルのカオルくんの、しかも伝説級の魔剣サンダースウォードの一撃だぞ!?

 腕が斬られてないこともそうだが、カオルくんの一撃に難なく対処した一点を取っても並の敵じゃない。

 良く見れば剣を防いだ腕が金属色に変色している。

 魔法の服か、それとも変身や幻影変装のたぐいか。

 

「ちっ!」

 

 ともかく、それで向こうもカオルくんの実力を認識したんだろう。

 背中からコウモリのような黒い皮膜の翼を広げて宙に舞う。カオルくんの追撃は空を切った。

 三撃目は跳躍しても難しいと見てとって、カオルくんがサンダースウォードに雷光を溜め始める。

 だが敵も動きが速い。そのままなら雷光を放つ前に窓から脱出していたろう。

 俺がいなければ、だが。

 

「ワイヤードナックル!」

「!?」

 

 村正を投げ捨てた俺の両手が、肘のところから分離して射出される。

 ぱっと見はいつものロケットパンチ。

 しかしちょっと違うのは飛ばした腕と俺の肘を、名前の通りワイヤーが繋いでいるところだ。

 

 「迫撃戦艦大和撫子(やまとなでしこ)」。

 いわゆるリアル系のロボットアニメであるが、リアル系ロボにロケットパンチなんてトンデモ武器を搭載するために、色々工夫している。

 拳をナックルガードで守ったり(当たり前だが大砲並みの速度で精密なマニピュレーターを叩き込んだら普通壊れる。人間だってグローブつけなきゃ簡単に拳が壊れるのに)、指先からロケット噴射して戻ってくるようなフィクション的絵面を回避するためにワイヤーで接続して巻き戻す形にしたり。

 そしてこのワイヤーが今回の肝だった。

 

「なっ!?」

 

 俺の腕が飛んだことに続き、その拳が周囲を回ってワイヤーが絡みついたことに更に驚くコウモリ男。同時に俺の両足、かかとから杭が床に打ち込まれる。本来は砲撃時に体を固定するための物だがこう言う使い方も出来る!

 びん、とワイヤーが張って奴を空中につなぎ止めた。

 コウモリ男はもがくが、悪いな。一応緑等級レベルの身体能力に、足は床に完全固定されてる。

 ガイガーさんやサソリキングでもなきゃ、力づくでは抜けないぜ!

 

「え?」

「お?」

 

 ぴんと張っていたロープの手応えが消失する。

 反動で勢いを増したのか、コウモリ男はあっという間に天窓を通って姿を消してしまった。くそっ、そんな所だけアメコミのコウモリ男並かよ!

 一瞬遅れて雷光が放たれたが、恐らくはかすってもいないだろう。

 がらん、と俺の両腕が床に落ちて音を立てた。

 

 

 

 間を置かず、外に待機していた師匠たちが到着した。

 透明になって侵入するしかなかったのは非常時ということで見逃して貰おう。

 ガイガーさんたちが周囲を警戒する中、師匠が次々に解毒呪文を唱え、大広間にざわめきが戻ってくる。

 それを見ながらカオルくんが俺に話しかけてきた。

 

「ハヤトくん・・・さっきコウモリ男が逃げたのは」

「うん、俺からも見えてた」

 

 ワイヤーは奴の下半身をグルグル巻きにして、ほぼ完全に動きを封じていた。

 しかしあの一瞬、両足が蛇の尻尾のようになってワイヤーの束縛をするりと抜けたのだ。

 

「変身能力、ってことかな」

「剣を防がれたときの感触はどうだった?」

「聞こえただろうけど、金属の鎧を思い切り叩いた感じだったね・・・」

 

 まあそこから先は師匠に聞かないとわからないか。

 こっちに歩いてくるアルテに手を振りながら、俺はそんなことを考えていた。

 

 

 

「まずは礼を言おう。サー・ハヤト。レディ・カオル。マスター・ペトロワ。

 君たちのおかげで大事に至らずに済んだ」

 

 あれこれが一段落した後、俺達は公爵邸の一室でウルリヒさんに礼を言われていた。隣にはイーサン氏。

 一座のみんなもリタとオブライアンさん以外は全員いる。

 コルドラさんはショックがひどく、旦那さんはそっちについている。ヘルンは・・・あれの起こる少し前に帰ってしまったそうだ。とはいえ今は話に集中だな。

 

「使われたのは恐らくベラドンナの種と沼熊の胆汁から作る昏倒の煙じゃ。

 必ずしも殺すための物ではないが毒性が強く、死んだり後遺症が出たりする可能性もあった」

「あれがか・・・喰らったのは二回目だが、まともに食らうとああなるんだな」

 

 首を振りながらイーサン氏。

 公爵とアルテの近くにいた彼も、あの煙にはまともに巻き込まれていた。

 さすが緑等級、昏倒こそしなかったものの、かなり朦朧としていて、多分カオルくんでも煙の中にいたらやばかったろう。俺はロボット状態でいれば無効化出来たかもしれないが・・・

 

「奴の目的がアルテだとしたら、なりふり構わずに確保に来ていることになるの。

 もしくは生きたアルテが目的ではないのかもしれんが・・・」

 

 ちらり、とこちらに視線。

 確かに煙が晴れたとき、奴の手に武器はなかったなあ。根拠はないが誘拐しようとしているように見えた。

 でも今まで襲ってきた奴はアルテの「殺害」を目的にしてるように思えたんだけど、今回身柄確保を狙って来てるなら別の組織なのかな?

 ん、今アーベルさんとイーサン氏が目配せをかわした?

 

「それなんだがね、ご一同。

 どうもこの話の影に『王に叛くもの(アンティゴネー)』って組織がいるくせぇんだよ」

「なんだと!?」

 

 アーベルさんの言葉に目を剥く公爵。

 まあ名前からしてろくなもんじゃないだろうなあ。

 

 

 

 ほんとにろくなもんじゃなかった。

 王様や貴族の権威の否定、民主主義の導入・・・そこまではいいんだが、その手段が暴動とかテロとか暗殺なのは、ほんと頂けない。

 それこそ『魚のほら話(ビッグ・フィッシュ)』の中で出会った『錆び付いた王冠(サン・ディカリ)』と同じだ。

 

「・・・十年ほど前、ここから200キロほど離れた小国の王宮が襲われた。

 王族も、家臣も、召使いたちも、一人残らず毒で皆殺しにされたらしい。

 女子供、赤ん坊に至るまでだ」

 

 ぎりっ、と歯がみするウルリヒさん。

 しかもそこまでして民主制を導入したその国は結局大商人たちに牛耳られ、そこから利権争いで内乱が起きて、王家の親戚だった隣国に侵攻されて、今では属国のようになっているとか。

 

 ハッと気付いて俺は顔を覆って俯く。

 俺のサトラレで、オリジナル冒険者族だってバレたらえらいことになりかねない。

 見ようによっては危険思想をこの世界に持ち込んでくる異物なんだから。

 

「だろうな。気分のいい話とは到底言えん」

 

 幸いウルリヒさんはうまいこと誤解してくれたようで、頷いて話を進める気配。

 知ってか知らずか座長も新しい話を振ってくれる。

 

「場合によっては偽者を仕立ててお家の跡継ぎに潜り込ませるとか考えてたんですかねえ?」

「ないとは言えんだろうな。変身能力を持っていたのだろう?

 今回のことにしても、アルテをさらってその場ですり替わる事が目的だったかもしれん。

 毒の煙の後遺症とかで多少おかしくなっていても気付きづらいのはあるだろう」

 

 あ、座長の気配が変わった。多分目が細まってる。

 

「公爵様」

「何かね、レディ・シルヴィア」

「こいつぁアタシのカンなんですけどね・・・ひょっとしてアルテのこと以外に、今回の一件何か心当たりがあるんじゃあないですか?」

「・・・」

 

 顔を上げる。

 無言とウルリヒさんの厳しい顔が、何より明白に答えを物語っていた。




>アメコミのコウモリ男並
バットマンの特技の一つに「瞬時に姿を消す」というのがあります。
超能力や科学ではなく、技術重点な。

>「迫撃戦艦大和撫子(やまとなでしこ)」
無論機動戦艦ナデシコ。
まあ良くも悪くもひどい作品でしたw
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