異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第二十七話 ナジャラーガの杖

 神と接触するための道具・・・それってあれか? 出でよ神の龍! そして願いを叶えたまえ! とか、タッカラプト ポッポルンガ プピリットパロ! 出てこいパルンガ! みたいな?

 

「言ってることはわからんが、まあニュアンスは伝わるの。

 これは神とコミュニケーションを取るための魔道具じゃが、神とのリンクを作ると言う事は、即ち神の力が流れ込んでくると言う事でもある。

 その力を使いこなせるなら、まあ大抵の願いは叶うじゃろうな」

 

 すげー・・・。

 

「魔道具なのか? 我が家には神器、神の作った杖と伝わっているのだが・・・」

「古文書によれば元になったのが真なる魔術師コア・ヒムの作り上げた『共感の杖』じゃからの。後に交流神(コア・ヒム)となった男じゃから、神器と言うのも間違いではない。

 ただ、天界に昇った〈百神〉とコンタクトする道具として完成させたのはコア・ヒムの娘ナジャラーガ。

 彼女もまた真なる魔術師ではあったが、昇神するには僅かに力が足りなかったのじゃ」

 

 なるほど、と公爵が頷いた。

 

「博識だな、マスター・ペトロワ。我が家系はそのナジャラーガ様の血を引いているのだ。

 そしてこの杖も代々我が家に受け継がれてきた。

 代々の当主以外にはそのことを伝えず、秘密裏にな。

 マスター・ペトロワならずとも、理由は判るだろう?」

 

 その場の全員が頷く。

 そりゃ神の力を呼び出せるなんて代物、そうホイホイ転がってたら困るわな。

 

「ふーむ。実に興味深い話ですぞ。それで一つ疑問なのですが、この杖が実際に使われたことはあるのですかですぞ?」

 

 ラファエルさんの質問に、公爵が深刻な顔で頷く。

 

「1400年ほど前に一度使われたと伝えられている。

 深刻な干ばつが十年近くも続き、飢饉で人々は死んでいった。

 当時の当主が娘にこの杖を与え、神下ろしの舞を舞わせ天候神(チャクセノーテ)と交神したという」

 

 ・・・それで、どうなったん?

 

「雨は降った。しかしその余波として、ありとあらゆる荒天が国中を蹂躙した。

 竜巻が家を巻き上げ、拳よりも巨大な雹が人や獣を打ち殺し、あらゆる川や湖が凍てついた。

 舞った娘も雷に打たれ、跡形も残らなかった。

 野原に巨大な穴が空き、その中央に傷一つないこの杖だけが残っていたそうだ」

 

 うあ・・・

 

「真なる魔術師であったナジャラーガならともかく、術師の修行もしておらぬ娘では神の力を扱いきれるわけがない。

 当然の結果と言うほかないの」

 

 沈痛な顔で師匠が首を振る。

 でも、それならアルテを狙う連中がこの杖を手に入れても使えないんじゃ?

 師匠くらいなら使えるのかな?

 

「難しいじゃろうな。まずこの杖を見た限り、ナジャラーガの血を引く者にしか使えぬ。ぱっと見の印象じゃが多分間違いなかろう」

 

 見ただけでわかるもんすか。

 

「ちょいと《魔力解析(アナライズ・マジック)》の呪文をの。

 加えて先ほど公爵が神下ろしの舞を舞わせ、と言っておったじゃろう。

 ナジャラーガの母親は伎芸神(コレトゥーラ)、舞と芸事の神じゃ。

 おそらく彼女はこの杖を自分でも使えるようにするにあたり、両親に及ばぬ部分を母譲りの舞を儀式に取り入れることで補ったんじゃ」

「その通り。我が家にはそのための儀式と舞が伝わっている・・・しかしマスター・ペトロワ。あなたはどこでその様なことを?」

「なに、女には秘密が多いものよ」

 

 ふぇっふぇっふぇ、と笑う師匠。

 ホントこの人何者だ?

 

「つまりこの杖を使いこなすためには公爵家の血を引き、舞を踊れ、かなりの魔術の素養があることが条件となる。真なる魔術師(トゥルー・ウィザード)とは言わんまでも、大魔術師(ウィザード)と呼ばれるくらいのな。

 それも出来れば若い娘であることが望ましい」

 

 ああ、若い娘のほうが超自然的存在と感応しやすいからか。かんなぎとか巫女とかシャーマンとか。

 そう言うと俺の方を一斉に視線が向いた。

 

「・・・何で小僧はわしの教える簡単な魔術原理もわからんくせに、そう言う事はスッと理解するんじゃろうなあ」

 

 すいませんね! 向き不向きがあるんですよ! 俺はユニークなんだ!

 

「出来が悪いだけじゃ」

 

 はいすいません、おっしゃるとおりです。

 

「まあ、いつも女の事ばかり考えてるからじゃないかねぇ?」

「ありそう。ハヤトだもんね」

「ハヤトくんだからね」

 

 ニヤニヤする座長、冷たい目のアルテとカオルくん。

 

「まあこいつだってそう捨てたもんじゃないだろ。何なら今夜にでもアタシがもっと女の事を教えて上げてもいいしぃ?」

 

 だから後ろから抱きつくな! 当たってる! 当たってるから!

 

「当ててんのよぉ?」

 

 だから離せ! アルテとカオルくんの目が怖い! そして鍔鳴りの音!

 畜生何だよこの不条理!

 

「おほん」

 

 痛い!

 スラップスティックコメディになりかけた空気を公爵の咳払いと師匠の杖が変える。

 

「いったぁ・・・」

 

 頭を抑えて唸ってる座長はざまあみろだが、何で俺も殴られなきゃならんのでしょう。

 

「小僧が一番の原因じゃろうが」

 

 ひどい!

 これ以上殴られるのも嫌だから口には出さないが!

 

「で、何の話でしたかですぞ」

「杖を使う条件だよ。まあそう言う事なら狙われるのもわかるが、アルテには使えなさそうで安心だな」

「何でよ、アーベル?」

「だってお前さん踊りは下手くそだろ。間違っても綺麗に舞いきるなんて無理無理」

 

 ひひひ、と笑うアーベルさん。アルテの顔が恥ずかしさと怒りで真っ赤になる。

 

「うるさいわね! 自分だって大して踊れるわけでもないでしょう、に・・・」

 

 たたん、たたん。

 アーベルさんの足が軽やかなステップを踏み、ふわりと回転する。

 ひとしきり華麗なステップを踏んだ後、気取って右手を差し出したポーズでぴたりと止まり、ウィンク一つ。

 体格以外はラテン系の色男だから、まー絵になること。

 

「おー」

 

 周囲から起こる拍手。アルテの言葉が尻すぼみで消えた。

 まあ軽業とかする人ってダンスにぴったりの筋肉してるって言うし、ダンスパートナーの足粉砕装置であるアルテが勝てるわけもない。

 

「うるさい!」

 

 泣きながらの右ストレート。やっぱ理不尽じゃねこれ!

 

「まあダンスの業前はともかく、アルテが有資格者なのは間違いないんだろ」

「他にはいないのか? コルドラとか」

「あの年齢では素養があっても神の力を下ろすには少々辛いの」

「私の兄弟は弟が一人しかいないし、弟の子供にも孫にも女はいないから、現状アルテだけと考えていいだろう」

 

 と、これはウルリヒさん。

 でもアルテには使えないんですよね? 素養があっても使おうとは思わないだろうし。

 

「脅迫なり洗脳なりで従わせる事はできるし、舞いや魔術の素養をどうにかする手段もなくもないからのう・・・極論運動能力を上げて魔術的な処理能力とキャパシティを強化すればええわけじゃし」

 

 結局はアルテを守るという一点に落ち着くわけですか。

 

「そうなるのう」

 

 溜息をつく一同。

 光の柱の中で、ナジャラーガの杖がゆっくりと回転していた。

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