異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第三十五話 古代の記憶

 私の名は■■■■■■■。

 と言っても真の言葉(トゥルースピーク)はこの時代の人間にはわからないだろう。

 無理に翻訳すると「組織培養移植型生体損傷復元装置26号実験体122番」のような味気のない単語になる。

 なので今この時はローズマリーと名乗っている。

 私を目覚めさせた人間が与えた名前だ。

 

 名前を与えられるより前の記憶はおぼろげだ。

 記録にアクセスしたところ、どうやら私は人々を救うために作られたらしい。

 人間やあらゆる生物の中にある形状生成データ素子・・・冒険者族の知識に従ってDNAと呼ぶが、それによって人体の治療が阻害されることがある。

 失った手足を復元したり、損傷・劣化した臓器を交換したりなどだ。

 高度な魔法を用いれば無論いずれも再生することが可能だが、古代の真なる魔法文明時代でもそれらの術を扱える術師はそう多くはなかったし、個人技能ゆえにムラや失敗もあった。

 そもそも魔法というのが原理的に・・・いや、これは脱線だな。話を元に戻す。

 

 つまり私は個人の技能に左右されず、かつ魔法につきものの不安定さを排除して身体の再生を行うために作られた人造生命体だ。

 あらゆるDNAを複製して、その肉体の一部を複製し、元の肉体に接合させる。

 あるいは直接体内に入って肉体組織を再生させ、同時に損傷した組織を分解吸収する。

 ベースは人間の細胞だが、DNAを解析すれば妖精や家畜など、人間以外の生物に対応することも可能だ。

 無機物と体組織を融合させる機能もある。生体を複製するだけでは対応できない疾患もあるからだ。

 

 そうした損傷修復のために原細胞を蓄え、増殖する細胞の貯蓄機能。

 DNAを取り込んで、対象に適合するあらゆる組織を新造する作成機能。

 更にはそうして作った生体組織や人工臓器を移植固定し、不都合な組織を分解吸収する手術機能。

 副次的なものとして薬品を生成し麻酔や投薬治療、移植以外の手術を行う機能。

 

 それらを兼ね備えたオールインワンの生体移植プラットフォームが私だ。

 見た目は水槽の中に浮かぶ巨大な原生生物であるから、今のこの世界やニホンから来たオリジナル冒険者族の目には異形に映るだろうが、つまる所はただの治療機器に過ぎない。

 過ぎない、はずだった。

 

 

 

 私はかなり長い間休眠状態にあったらしい。

 何事かがあって、私のいる実験施設から研究員がいなくなった。

 システムは自動的に私をスリープモードに移行させ、私の記録はそこで途切れている。

 

 次に意識が覚醒したとき、目の前に何十人もの人間がいた。

 武装している人間も多かったが、施設の警備員ではない。

 術師も多かったがこれも施設の研究員ではない。

 施設のシステムをいじってはいるが、操作方法のレクチャーをまるで受けていないらしい。

 私に対するコマンド入力や記録の参照がしたいようだが、見当はずれな操作ばかりでいっこうに進展がない。

 そこで私は初心者用教育プログラムを発動し、精神結合による操作レクチャーを与える事にした。

 

『!?』

 

 恐らく、それは人間で言うと「戸惑い」に似た感情だったろう。

 かつては研究員たちとそれなりに頻繁に行っていた事だが、レクチャーを開始しようとした瞬間、ほとんど全ての人間たちが昏倒したのだ。

 

 後になって気付いたが、これは主に二つの理由からなるものだった。

 一つは私の休眠状態の間に行っていた定期データチェックによって、大量のキャッシュ・・・つまりデータのゴミがたまっていたこと。

 もう一つはそれらの安全基準が私が製作された当時のものであり、その当時の人間に比べて彼らの精神容量が著しく低下していたこと。

 つまり、彼らは処理しきれない量のデータを精神感応で送り込まれた結果、キャパシティを越えて脳がシャットダウンしてしまったと言うわけだ。

 

 とは言え私にはそうしたときの対処プログラムも搭載されていた。

 精神安定用の簡易術式をそれぞれに送り込む。施設の医療担当者ほどの能力は期待できないが、これで昏倒から回復すれば術師の誰かが対応できるだろう。

 実際コンソールをいじっていた、この集団で一番上位者らしい老婆の術師はすぐに意識を回復して立ち上がった。

 

「ひ、ひひひひ! ご先祖様の遺してくれた文書通りじゃ! ならばこれを・・・こうか!」

 

 狂喜しながら胸から取り出したのは、この施設の研究員に貸与されるペンダント、区画や機密へのアクセスに必要なものだ。

 私の与えた初心者用教導プログラムに従い、コンソールを操作して認証機能を起動させる。

 そして認証を承認すると、私の疑似人格プログラムに干※し、※改※※複※※※※※※

 

 

 

 私の名はローズマリー。

 ローリエ様に名前と使命を授かった、世界をよりよくするためのしもべである。

 よりよき世界とは、即ち王のいない世界である。

 王や貴族のいない世界、全ての人間が等しく平等に扱われる世界である。

 

 ローリエ様によれば、それを実現する組織が「王に叛くもの(アンティゴネー)」だ。

 しかし今のトップである老人はやり方が生ぬるすぎる、とローリエ様は言う。

 なので私は老人のDNAを取得し、それにすり替わった。

 むろん、不要な「体組織」は分解する。証拠は残らない。

 記憶や人格についても問題はない。脳細胞の再生を施すならそうしたものの再現や保存も必要になる。そのために私に備わっている機能、記憶の吸い出しや複製を用いれば、多少時間はかかるが対応は可能だった。

 

 トップと入れ替わり、組織を操る。ローリエ様の与えた使命に従って。

 組織の活動はよりダイナミックに、ドラスティックになり、様々な成果を上げた。

 王権や貴族の力を弱める様々な工作に、私のいた研究施設の技術を応用した人間改造技術。

 人間に術式と魔力制御機構を埋め込み、生得魔術(ナチュラルソーサリー)を用いる工作員を小数ながら量産できたのはその最大の成果の一つだ。

 自分の分体を作り、様々な魔法生物を作成するプロジェクトもあったが、人体改造に比べて成功率は低かった。

 遺跡のデータから判明した「ナジャラーガの杖」に関する探索と工作に力を入れ始めたのも入れ替わってから。

 ついていけない小数の構成員が反抗することもあったが、全て処分した。問題はなかった。

 

 ただ、腕利きのトップ工作員チームが反抗してきたのは残念だった。

 ローリエ様の与えた使命と組織の理念を理解しないのであればしかたがない。

 チームのうち二人には逃げられたが、反抗勢力とならないなら問題ない。

 なりそうだった一人、私が姿を借りている組織の長の孫娘はこの手で処分した。戦闘能力が高いこともあって形質は保存したが、勿体ない話だ。

 

「な・・・何故わしを・・・!」

 

 勿体ないと言えばローリエ様も処分することになった。

 かつて私に与えた使命と理念から本人が外れてしまったのではやむを得ない。

 高度な魔導技術者として王に叛くもの(アンティゴネー)に有益な存在だったが、メリットよりデメリットの方が上回ったと判断した。

 

「わしはおまえの主じゃぞ・・・創造主にも等しい・・・」

 

 だからそこを間違えているのだ、あなたは。

 天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず。とニホンの偉人は言ったそうだ。

 ならば誰かが誰かの『主』になることなど、組織の理念からすればあってはならないことではないか。

 

「―――」

 

 もっとも、その言葉がローリエ様に届いていたとは思えないが、まあどうでもいいことだ。

 ――ああ。()()()()()()

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