異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「てめえ・・・何者だ!」
「あなたの見たとおりのものよ。あえて言うならローズマリー、とでも?
されば一舞い、しましょうか」
アーベルさんを愕然とさせた女性の姿・・・いや、愕然としたのはその直前か?
ともかく変身生物――自称ローズマリーがまたも変化した。
今度こそアルテの姿。薄物をまとった巫女のような姿、手にはナジャラーガの杖。
とん、とステップを踏む。
しゃん、と杖が鈴の音を鳴らす。
破滅を呼ぶ神下ろしの舞いが始まった。
「カオル! キャパシティを上げるぞ! 受け入れい!」
「はい、先生!」
師匠も泰然としてはいられないのか、カオルくんのキャパシティ・・・つまり、一度にサンダースウォードに注げる魔力量の上限を強化している。
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
緊迫の時間が過ぎていく。
緑色の障壁の中、大きな銀盆の舞台の上で神下ろしの舞いを舞うローズマリー=アルテ。
師匠から補助を受けて破魔の雷光を放ち続けるカオルくん。
残る俺達は武器を握り、いつでも突入できるようにして固唾を呑んでそれらを見る。
「・・・うん?」
「あん?」
しばらくして俺とアーベルさんが同時に首をかしげた。
思わず顔を見合わせて、数秒間見つめ合う。
「まあなんだ、お先にどうぞ」
譲って貰ったので疑問をぶつけてみた。
「師匠。結構時間経ってますけど、あいつの周囲の魔力とか全然変化ないですよね。
それとも神様と繋がった瞬間一気に来るんですか?」
「その可能性はあるが・・・何せわしも、じかに見たことはないでのう」
まあそりゃそうか。で、アーベルさんの方は?
「いや、とくに根拠のある話じゃねえんだが・・・あいつ、神下ろしの舞いとやらをちゃんと踊れてんのか?
俺にはかなりぎこちない感じに見えるんだが、あんなんでもいいのかい?」
・・・言われてみれば確かにそんな感じかも知れない。
「悪霊の盆踊り」とは言わないが、お世辞にも見とれるような美しいものではない。
「わしもそこまで舞いに造詣が深いわけではないからな・・・まあ確かに、わしから見てもうまいとは言えんが」
今までとは違った意味でローズマリー=アルテに集中する視線。
ミストヴォルグの強化視覚で、ローズマリーの引きつった口元がくっきりはっきり見える。
それでもしばらく奴は舞い続けていたが、やはり周囲の魔力に全く変化はなかった。
どんどん大きくなる口元の引きつり。
「ええい、この役立たずっ!」
ついにヒステリックな声を上げ、ローズマリーがナジャラーガの杖を床に叩き付けた。
澄んだ金属音を上げて杖が地面に転がる。
「何よこの体! まともに踊れないじゃない! やたら無駄な筋肉ばかりついてて! そのくせぜい肉は一人前にたぷたぷしてて、牛なの? ぶくぶく太った牛なの?!」
「・・・」
その場の全員が恐る恐るアルテの方を振り向いた。
ブチッ! と何かが切れる音を多分全員が幻聴したろう。
「・・・」
ゆらり、と幽鬼のように歩き出すアルテ。ガイガーさんや師匠すら無言で道を譲る。
がしっ、とまた幻聴。
緑色のバリアの表面をアルテの両手がわしづかみにする。
「ちょ、ちょっとアルテ! 今危ないから・・・!」
焦るカオルくんも無視して両手に力が籠もる。
「無駄な・・・」
・・・あれ、目の錯覚かな。
アルテがわしづかみにしたバリアが何か歪んでる気が・・・いやあ、ありえないよな、HAHAHAHA。
「無駄な肉ばかりで悪かったわねえ!」
悲しみの絶叫と共に、アルテが緑色のバリアを真っ二つに引き裂いた。
すげえ! 絶対防御フィールドを素手で引き裂くブランジェリオンみてぇ!
「あ、え・・・!?」
消えたバリアを乗り越えて、ずんずんずん、と迫るアルテ。
引きつった顔で固まるローズマリー。
アルテとローズマリーの距離が3mを切る・・・あ、ローズマリーが一歩下がった。
「歯を食いしばれぇっ!」
「げぶぅっ!?」
アルテ涙の鉄拳がローズマリーの顔面に炸裂する。
顔面どころか頭部が色々見せられないような状態になって、変身生物は吹っ飛んだ。
「く※う! 潰して※る! 貴※らも杖も、まと※て踏みつぶし※やる!」
口が再生しかけのせいか、ところどころ聞き取れない声で何か言ってる。グロイ。
って、おおおおお!?
「どえおわああああああ!?」
前にも言ったけど、女の子がそう言う汚い悲鳴あげるのどうかと思います。
なんて茶々入れてる場合じゃねえ!
銀盆みたいな舞台の後ろの壁ががばっと開いた、その先にあるのは・・・ゆうに高さ10mは越える、白い巨大な肉塊!
まさかこいつの本体か!?
そんなことを考えている間に肉塊から触手が射出され、ローズマリーを吸収して肉塊の中に戻る。
「アルテ! こっちに戻れ!」
「わ、わかった!」
呆然としていたアルテがこちらに振り向いて走り出そうとした瞬間、背筋にツララを突っ込まれたような感覚。
壁の中から肉塊が飛び出す。
正確には身体を変化させて立ち上がったのだが、俺の感覚としてはそんなものだった。
「マシン・オン!」
躊躇なくデモゴディΣを呼び出す。
だが一歩遅い。
俺が呪文を唱えたとき、既に奴は30mほどの銀の人型になって一歩踏み出していた。
部屋の直径は100m弱、部屋の端から中央の銀盆の上に立つアルテまでは三歩の距離。
光り輝く魔力が俺の体を包み、巨大化させる。
奴は飛ぶように走り、三歩の距離を二歩で詰める。
巨大化したデモゴディの姿が地下空間に現れる。
俺が一歩踏み出したその瞬間、巨大ローズマリーはアルテの上にその足を踏み下ろした。
『アルテェェェェェェェッ!』
絶叫が響く。
時間が止まっていた。
師匠。カオルくん。ガイガーさん。アーベルさん。イーサン氏。
俺も含めて片言も発せない。動けない。
視線は銀盆の中央に踏み下ろされた銀色の足。
その下に。その下にアルテが。
『・・・ほほほ』
『!』
銀色の巨人が脚をグリグリと動かす。
アルテを、踏みにじる。
『ああ、すっきりしたわ! このゴミ! 私の崇高な使命を邪魔するなんて許せないわ!』
『てめえ』
ぐつぐつと、怒りがマグマのように煮えたぎる。
たかぶる感情が魔力を荒れ狂わせる。
バチッ、バチバチと、魔力の光と雷光が鋼鉄の肉体から噴出する。
だが、それが奴に向かって叩き付けられることはなかった。
『・・・え?』
『な・・・?』
奴の足が動く。アルテを踏みつけた足が。
待て、待て待て待て待て。
ちょっと思考が追いつかない。
そして俺が呆けている間に。
「うりゃぁぁぁぁあああああ!」
アルテが銀色の巨人の足を持ち上げ、振り回して壁に叩き付けた。
嘘だと言ってよバーニー。