異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「ねだるな、勝ち取れ。さらば与えられん」
――交響詩編エウレカセブン――
「行っちまったか」
「行ってしまったわね・・・」
窓際でイーサンとコルドラ。横にはコルドラの夫のアルベルトもいる。
二階の客間から見えるのはヴィエンヌの華やかな町並み。
そして城壁と、その彼方に続く平原。
今、彼らの娘にして姪である少女は、旅芸人の仲間――いや、家族と共に街道を進んでいるはずだった。
「イーサン、コルドラ。お義父さんはどうしてるんだい?」
「結構がっくり来てるみたいね」
「なんだかんだアルテのことは気に入ってたからなあ」
是非とも跡継ぎにと言う公爵の懇願を丁重に断り、アルテは再び旅立っていった。
申し訳なさそうにしながらも輝く笑顔を浮かべていたのを、三人ははっきり覚えている。
「そうなると跡継ぎはヘルンくんで決まりかな」
「まあ・・・今の奴ならいいんじゃないかね」
「お父様との仲も、少しずつ修復していくみたいなことは言ってたから多分ね」
言いつつ、コルドラの視線は窓の外の風景から離れない。
心なしかその瞳が潤んでいるようにも見えた。
その肩をアルベルトがそっと抱く。
「・・・寂しいかい?」
妻が小さく首を振る。
「止められないわ。
私は自分の心に従ったし、そのことを後悔してない。
なのに娘を縛ったら、都合が良すぎるというものでしょう?」
「そうか・・・」
言葉少なに頷くアルベルト。
兄は優しい目。
「そのうちまた来てくれるって、手紙を出すって言ってくれたわ。
私はそれだけで十分」
「そうか」
もう一度頷いた夫が、少しいたずらっぽい顔になった。
「それじゃあ僕たちも、アルテが今度来てくれたときのために、弟か妹を作っておこうか?」
「どぅえおわぁぁぁ!? ちょっと、何よいきなり!」
響き渡るコルドラの悲鳴。
イーサンが呆れた顔になった。
「お前、その汚い悲鳴まだ直ってなかったのか? まったく、変な所ばかり似てる親子だな」
「うるさいわね! 今のはアルビーが悪いのよ!」
「それはそれとして、この汚い悲鳴の女を受け入れてくれるアルビーさんはえらいと思います」
「それほどでもありませんとも、義兄上」
「あなたたち黙りなさい!」
公爵家の客間はどこまでも賑やかだった。
王都を発って三日。
お城の塔ももう見えない。
例によってロボットアニメを流しながらの街道上である。
ちなみに例のナジャラーガの杖、師匠がしっかり回収して公爵さんに返してた。
いっそ壊しちゃった方がいいんじゃないですかと言ったら、「娘が両親を恋しく思って作り上げた杖じゃからの。壊すには忍びないわい」とのこと。
まあ、公爵家があそこまで厳重に保管してたら、そうそう盗まれることもあるまい。
『ミクロスセブン、トランスフォーメーション!』
『戦艦一つ落とせずに何がダイヤモンドインパルスだ!』
「おー」
アルテ達が目を輝かせている。
巨大戦艦が変形する巨大ロボ。
流麗な軌道で宇宙を駆ける可変ロボ戦闘機。
ばらまかれたミサイルが噴煙をなびかせて乱舞する空戦サーカス。
何故か戦場で歌う変な奴。
え、何かおかしいって? 歌と三角関係はミクロスのお約束なんだよ!
というか元からおかしいシリーズなんだよ! 創造のアーシリオンと同じ監督なんだからな!
「これ面白いんだけどさあ、このいきなり戦場に出て来て歌うの何なの? ただの自己満足じゃない?」
うんまあそうなんだが、後二話くらいすれば普通に役に立つようになるから勘弁したってや。
前半ただの飛ぶ迷惑だった主人公がそこから歌を武装化する装備を貰って、ようやく活躍するようになるのである。
4クールだから3クール目の頭からそうなってるんだろうが、普通なら序盤三話くらいでやることやろ。
「監督は最後までずっと『ただ歌うだけ』で通したかったけど、視聴者――観客からのブーイングがひどくてこんな形になったんじゃないかなあ」
「ラファエルさんも時々やるね。お客さんの反応を見て、話の筋を変えたりするんだって」
なるほど、映像作品とか紙芝居と違って、その場でアレンジできるんだな。職人芸だ。
カオルくんが苦笑しながら肩をすくめる。
「まあそのせいでどんどん話が派手になって、同じ話なのに地域ごとに結末が違うとか、敵は四人しかいなかったのに最終的に一人で三十六人切ったりすることになるんだけど」
荒木又右衛門の鍵屋の辻ですねわかります。
「三十六人? 随分少ないんだね。ミヤモト・ムサシは千人やっつけたんでしょ?」
俺とカオルくんが一斉に吹き出した。
「どっから聞いたのそんなこと!?」
「ラファエルさんだけど? 決闘を挑まれたムサシはイチジョ・アンダマッツで千人に取り囲まれたけど全員倒して有名になったって」
一条寺下り松かよ!
「いくらなんでも盛りすぎだよ! 実際はせいぜい数十人って言われてるのに!」
「そう言えば前にそんなこと聞いた気がするなあ・・・」
魔法剣士柳生十兵衛とか変身ヒーロー真田十勇士みたいなトンデモ話と一緒にだ。
しかしアルテもせっかく会えたお母さんと別れてよかったのだろうか。
余り表には出してないけど・・・
「あ、ひょっとして私のこと気にしてる? 残った方が良かったんじゃないかって」
だから口には出してへん!
「バレバレなのよ」
呪わしきはこのサトラレ体質よ・・・
でもちょっと勿体なくない? 公爵さん、本気でアルテを後継者にする気だったぞ。
「まあね。でも私には無理よ、お姫様とかお貴族様とか」
それはわかる。
「わかるな。
・・・お母さんと一緒にいたいって気持ちもあったけど、そのね、もっと一緒にいたい人もいたから・・・」
顔を赤らめるアルテ。うっ、かわいい。
かわいすぎて思わず目をそらす。
「う、うん、そうだよな。ここ居心地がいいし、みんなと一緒にいたいよな」
「ハヤトくん?」
「お兄ちゃん?」
冷たい声、そして鍔鳴りの音。ガイガーさん、俺何かしましたか!?
「まあ君がわかっててやってるんじゃないかってくらい鈍いのは知ってるけど」
「お兄ちゃんさすがにそれはないと思うの」
そこまで言われる筋合いはねえよ!
実際アルテだってそうだろう? みんなと一緒にいたいんだろう?
「ええ・・・そうね」
やっぱりそうだよな!
『お前にラブハァァァァァトッ!』
ハゲのおっさんが敵の戦艦のエンジンにミサイルをぶっ放して大爆発が起きるのと、アルテの拳が俺の意識を刈り取るのが同時だった。
ストロングなんだ♪ ビッグなんだ♪ ぼくらの デモゴディなんだ~♪
と言うわけで一巻の終わりにございます。
お約束のアルテヒロイン話でありますが、お楽しみ頂けましたでしょうか。
毎度のことですが、ハヤトくんってなんてひどいやつなんだ(棒)
ストーリーのメイン元ネタはごく一部でネタアニメとして有名な「明日のナージャ」。
公爵家の御落胤というポジとかそのままで、実を言うとハスキー一座の面々も結構影響されてます。
特に名前はほぼそのまま。
ゲストキャラのイーサン氏のモデルは西部劇のヒーロー、ジョン・ウェイン。
その中でも「捜索者」という映画をイメージしてます。服装は騎兵隊の制服にサーベル下げてる感じ。行方不明になったアルテを探しに来るのもそこから。
引っかけた女は154人、というのも氏の出演した映画の数からw
ちなみに
「王に叛くもの」の首領の老人=第三話で出て来た「錆びた王冠」の首領アーメッド
アーベル達とコンビを組んでいた褐色の女=同じくアーメッドの孫ラリザニ
です。
アーベルの記憶も魚のホラ話に取り込まれて、それを元にしてお話の世界が構築された、みたいなイメージで一つ。
>ハゲのおっさん
マクロス7の金龍隊長。
後でガッシュのフォルゴレと同じ中の人だと聞いて吹いた。
これがデビュー作の19才に、アラフォーのベテランハゲマッチョ軍人やらせるかぁ?w