異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
第二話 遠きにありて思うもの
「遠回りこそが俺の最短の道だった」
――スティール・ボール・ラン――
「いえいえ、本当にお見苦しいところをお見せいたしまして。
うちの息子がご迷惑をかけてないとよろしいんですが」
「いやいや、息子さんはうちの一座に必要不可欠な人材でね。
何と言っても音楽がなきゃ、歌も芝居も盛上がらない」
にこやかに会談するラファエルさんの御母様と座長。
後ろには青あざとたんこぶを作ったラファエルさんが直立不動で立たされている。
そのゲティさん、顔に巻いた布を取ると、その下はごくごく普通のおばちゃんだった。
おばさんじゃなくておばちゃん。ちなみにヒゲはない。繰り返すがヒゲはない。
ともかくパーマに丸顔の肝っ玉母ちゃんって感じで、身長以外は日本にも普通にいそう。
バーゲンセール争奪戦やったり、スーパーの店先で井戸端会議してても違和感ない。
いやこの人がバーゲンや半額弁当の争奪戦に参加したらストリートファイトになる未来しか見えないけど。
俺達は『狼』だ・・・! ラウンドワン、ファイッ!
「それで
「ですぞ! 吾輩もこの一座を抜ける気は・・・」
「黙ってなスタロ! 今は座長さんと話してんだよ!」
「はいですぞ」
ラファエルさん弱ぇ。
「それなんですけどね、私どもの故郷でちょっとしたいざこざが持ち上がりまして。
どうしてもスタロが必要なんですよ。終わったらお返ししますので、ちょっとお貸し願えませんか」
「どれくらいだい?」
「そうですね、私どもの足で片道三ヶ月というところでしょうか」
「三ヶ月かあ・・・」
頭をくしゃくしゃとかき混ぜる座長。
三ヶ月なら往復最低半年。日本の基準だととんでもない長距離・長期間だが、こっちの世界だとむしろ短い方だろう。
自動車も飛行機もない世界で旅に出るって事は、基本的に今までの人生を捨てるってことなのだ。
というかラファエルさんがここにいるってよくわかったな。魔法か?
「ああ、
なるほど。便利だなこの世界。
「とはいえ近場の失せもの捜しならともかく、マルガムのどこにいるかわからない人一人を捜すなら相応の物いりだったじゃろう。余程のことかの?」
師匠の言葉にゲティさんが頷く。ラファエルさんに振り向いた真剣な顔。
「スタロ。ベドマが死んだよ」
「なっ・・・何故先にそれを言わないのですぞ!?」
「ごめんよ。言い出せなかった」
神妙に頭を下げるゲティさん。
衝撃に目を見開くラファエルさん。
「・・・ベドマってのは誰だい、ラファエル」
「弟ですぞ・・・三兄弟で、吾輩が真ん中、ベドマが末っ子ですぞ。
いったい何があったのですぞ、母上」
「・・・」
ゲティさんはしばらく無言だったが、やがてぽつぽつとしゃべり出した。
前にもちょろっと話したが、ドワーフの人達は人間から大量の酒を輸入している。
ドワーフの人達の武具や細工物が出回るのは大体酒交易の対価としてなのだ。
自分たちで作れと思うかも知れないが、品質や多彩さはどうしても人間のそれに勝てないらしい。
で、彼らの故郷ラゼルスには沢山の人間商人が出入りしていて、それなりに健全な競争が行われていたらしいのだが、最近闇酒が大量に出回り、市場が揺らいでいるとか。
ドワーフの人達はやっぱり酒に強いので、度数が強い、酔っぱらえるというのは人間以上に重要なのだそうだ。
「ドワーフの中でも貧乏人は
「マジですかですぞ!?」
人間の間ではマイナーメジャーな神様だが、ドワーフの間では種族の創造神である
神殿はほとんど酒蔵みたいなもんで、司祭は
魔法で雑に作ってるので風味には欠けるが、とにかく安くて強い酒らしい。
それより強くて安いって・・・日本のツヨイ=ゼロかな? 飲んだことないけど。
これを渡しておこう。苦痛に耐えられぬ時飲むがいい。(グビグビプハー)
「飲むとひどい悪酔いをするのもあって、族長と
「禁酒法時代のマフィアの抗争かな・・・」
「もっと深刻じゃないかな。ドワーフの人達って、酒がないと生きていけないらしいから」
「生きていけないは少し大げさですが、ドワーフが酒無しに生きるのは、人間が塩抜きで料理を作るようなものなのですぞ」
十分死活問題じゃねえか! 塩なかったら人間生きていけねえよ!
まあ極めて重大な問題なのはわかった。
それで、ラファエルさんの弟さんも?
「ああ。息子は氏族の戦士だったけど、密造酒の売り手を捕まえるときに・・・」
「・・・」
うつむくゲティさん。周囲に沈黙。
「だから帰ってきておくれ、スタロ。ザナもアンタを待ってるんだよ」
「・・・」
今度はラファエルさんが押し黙った。
ザナって人のことも気にはなるが、口を挟める雰囲気じゃない。
やがてラファエルさんが決然と顔を上げた。
「シルヴィア嬢。申し訳ありませんが、旅立ちのお許しを頂きたいのですぞ。
故郷の危機、家族の危機。どちらも見過ごしには出来ないのですぞ」
座長は無言で蒸留酒の瓶をあおり、ニヤリと笑った。
「なんだい水くさいねえ。ハスキー一座はみんな家族さ。あんたにとって家族の危機ならあたしらにとっても家族の危機。一緒に行こうじゃないか。反対の奴はいるかい?」
当然、そんな人は一人もいない。一座の全員が僅かに笑みを浮かべている。
ラファエルさんとゲティさんが揃って目を見張り、やがて深々と頭を下げた。
「座長殿のご厚意、まことにかたじけなく・・・スタロ、アンタ本当にいい人に拾われたねえ・・・」
「吾輩自慢の家族ですぞ。みんなと一緒ならば地獄にでも勇み行きますぞ」
座長が頷いて師匠に目を向ける。
「ばあさん、馬車に軽量化の術をかけるとして、どれくらい軽くできる?」
「ん、ああそう言うことか? そうさの、恐らく小僧が運べる程度には。
ただ、準備に半日は欲しいかの」
「オーケイ。お前達、ここでの興行は今日の昼までだ。準備しときな。
ハヤトは余り魔力使うんじゃないよ」
「わかりました」
つまりXブロイザーになって、俺の腹の中に全員詰めて飛んでいく、ということである。
まあえっちらおっちら歩いていくより断然早い。
以前より遥かに魔力量は上がってるし、運ぶこと自体は多分問題ないと思う。
「それでは吾輩は先に出立致しますぞ。ラゼルスでまた会いましょうですぞ」
おいこら、そこの笑うと歯が光るドワーフ。
一瞬前にみんなと一緒なら地獄にでも行くと言ったのはなんだったんだ。
「それとこれとは話が別ですぞ! 自分の足でなら地獄でもどこでも行きますが、ハヤトと飛んだら絶対に落ちるのですぞ! 空のハヤトは不運を呼び込む特異点! 男を破滅に導くファム・ファタール! 絶対に、絶対に、ぜ~~~~~~ったいに乗らんですぞ!」
俺そろそろこの人に怒っても許されると思うんだがどうだろう。
>俺達は狼だ
アニメにもなったベン=トー。あんなアホな設定でよくもまあ続けたもんだw
>ツヨイ=ゼロ
ストロングZERO。
まあこれ自体はアルコール度数9%程度ですので、さすがに蒸留酒(最低20%)とは比較になりませんがw
>
鈴木梅太郎。
脚気の特効薬であるビタミンB1の発見者として有名ですが、合成日本酒を開発した人でもあります。
料理酒なんかは今でも大体これ。