異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第十八話 帰ってこなければ良かった男

「えーと・・・あ、ひょっとしてあんたたち、ガイを助けてくれたって言う芸人一座の人?」

 

 その女性はマデリンと名乗った。ガイさんのいとこで幼馴染みだという。

 気の強そうな感じの黒髪の女性で、アルテが十歳くらい歳取ったらこんな感じだろうか。

 

「一体何があったんだい?」

 

 シルヴィアさんが俺達を代表して尋ねると、マデリンさんはちょっと迷った後に頷いた。

 

 

 

 完全に酔いつぶれてしまったガイさんをそのままに、取りあえず酒瓶を片付け注文をして、テーブルの回りに座る。

 

「こいつは・・・ガイは、結婚して奥さんが身ごもってすぐに兵隊に取られたんだ。そんで、三ヶ月くらいして戦死したって知らせが来て・・・」

「え」

 

 思わず声が出た。

 あちゃあ、とシルヴィアさんが天を仰ぐ。

 

「うん、大体見当が付いた。ひどい話だ」

「多分想像してるよりもっとひどいと思うよ?」

 

 暗い顔でマデリンさんが笑う。

 実際、本当にひどい話だった。

 

 戦死の知らせが来た時、ガイさんの奥さんのカザリーンさんは娘のイェニファちゃんを生んだばかりだったという。

 実家のご両親とガイさんの両親、マデリンやガイさんの叔母でもあるその母親が何とか力づけようとしたが、どんどん衰弱していって、一時は命も危ぶまれたのだという。

 

 そこで登場するのが、銀細工の職人だったカザリーンさんの実家と取引していた宝石商人のロラントさんだ。

 たまたまカザリーンさんを目にした彼はその場で結婚を申し込む。もちろんイェニファちゃんも自分の娘として育てるという条件でだ。

 

 最初は拒否したカザリーンさんも彼の真摯な態度と人柄に触れて、ついには結婚を承諾。

 ガイさんの両親や叔母、マデリンさんも祝福して二人は結ばれた。

 ロラントさんは順調に商売を大きくし、カザリーンさんも町で一二を争う大劇場の第一歌手に登りつめた。

 イェニファちゃんもロラントさんになついていると言う。

 

「何度か会ったけど、相手の男が本当にいいやつでさ。ガイへの未練もイェニファもまとめて私が引き受けます、って真顔で言ってイヤミにならない、そんなやつなんだよ。

 あたしたちも、あの時はカザリーンに新しい人生が開けたって純粋に喜んでた」

 

 そこで一息ついて、ガイさんが飲み残していた蒸留酒のカップを一息に飲み干す。

 

「・・・」

 

 俺達の視線に気付くと、苦笑して手を振る。

 

「シラフじゃできない話さ。大丈夫、これくらいじゃ潰れないよ」

 

 そうしてマデリンさんは話を続ける。

 

「ガイのオヤジさんはお貴族様向けの傘を作る職人だったんだけどね。

 ある日火が出て家と店は全焼。二人も焼け死んだ。

 土地も人手に渡って、今じゃ別の店が出来てる。

 で、こいつが自分の家に帰って、何もかも無くなってて呆然としたところに出くわしたのが、知らない男と幸せそうに歩いている自分の妻と娘だったのさ。

 ガイは相手がカザリーンだってすぐにわかったけど、あっちは気付かずに通り過ぎていったって」

「・・・」

 

 余りのことに絶句する。

 そうするしかなかった。

 

「まあね、あいつが転がり込んできたときは、あたしも目を疑ったよ・・・」

 

 快活な青年だったかつてのガイさんと、戦争と長旅でボロボロになった浮浪者じみた男。

 幼馴染みのマデリンさんでも、一瞬過去と今の彼が結びつかなかったという。

 

「で、帰る家もなし、家族もいない。だからウチで面倒見てるわけですよ」

 

 幸いと言うべきか、ガイさんの実家の焼け残った財産や土地の代金は「お世話になった」という理由で全てマデリンさんたちに譲られていた。

 母親のエリーゼさんも女手一つながら小間物屋をやっていて生活には困っていなかったから、そのお金でガイさんも当分生活には困らないだろうと言う事。

 そこまで語り終えると、マデリンさんは蒸留酒をもう一杯、ぐいっと飲み干した。

 

「本当にひどい話だったねえ」

 

 こちらはコップどころか蒸留酒の瓶をらっぱにしながら座長。心なしかいつもよりペースが速い。

 俺達も運ばれてきた料理をつついていたが、かなり上物であろう料理を楽しむ心の余裕がなかった。

 リタなどはぽろぽろ涙を流していて、ガイガーさんがハンカチで涙をぬぐってやっている。

 おしゃべりのラファエルさんとオブライアンさんですら一言もない。

 結局何を話すこともなく、俺達は食事を終えた。

 

 

 

「すみませんね、本当に世話になっちまって」

「気にしなさんな、こうなったらついでだよ」

 

 その後意識のないガイさんを、マデリンさんの家まで肩を貸して送り届けた。

 俺とオブライアンさんが二人がかりで。

 意識のない人間運んで歩くのって想像以上にきつい・・・!

 

 アルテと座長は力はあるけど女性だから酔った男を担げとは言えないし、ガイガーさんは泣き疲れて眠ってしまったリタを抱き上げてるし、ラファエルさんとアーベルさんは力はあるけど背丈が足りない。ペトロワ師匠は当然論外である。

 それはわかるんだけど、何か理不尽だなあ! 外見だけだけど今の俺は女だし!

 

 マデリンさんの家につくと、見るからに人の良さそうなおばさんが出て来た。これが彼女の母親のエリーゼさんなのだろう。

 オブライアンさんと二人がかりでベッドに寝かせる。

 エリーゼさんがお茶を御馳走すると言ってくれたが、流石に大人数だし夜も遅いので丁重に辞して帰途につく。

 その途中、アルテが「あ」と口を開けて立ち止まる。

 

「どうしたの?」

「・・・今気付いたんだけどさ、力持ちの"ろぼっと"に変身してガイさん担げば良かったんじゃないの?」

「ああー!?」

 

 もうちょっと早く言って欲しかったなあ、それ!

 ドッと疲れが出てきた、早く帰って寝よう・・・。

 

 

 

 翌日も我がハスキー一座の興行は盛況だった。

 普段なら主戦力であるシルヴィアさんが苦戦しているので、助っ人として再びガイガーさんがコマ回し芸を披露する。

 いや何度見てもすげえわあれ。

 

「アカフク、ペパーミント、キナコ、シロアン、クロアン、ズンダ、サクラ、ゲッペイ、ダイダイ、ムラサキイモ!」

 

 一方でかわいらしいステージ衣装に身を包んだリタの号令に従い、名前通りの色とりどりのハムリスが舞台上に並ぶ。

 

「チュー♪」

「チュー♪」

「チュー♪」

「チューチュー♪」

 

「これなるは天下の大泥棒五人組、ゲッペイザエモン、キナココゾウ、ムラサキイモヘイ、アカフクジュウザブロウ、ミントリキマル!」

「チュー」

「チュチュチュチュー?」

 

 鳴き声で輪唱したり、ラファエルさんの伴奏に合わせてカブーキのまねごとを演じさせたりと、カブーキの町チェルブルクにふさわしい演目に、観客も笑いながら手を叩いている。

 無論俺の魔術ショーやアルテの怪力芸もお客さんに受け、今日も大盛況のうちに興行は幕を閉じた。

 このまま何事も無く眠りにつく・・・かと思ったのだが、今日はちょっと違った。

 夕方になり、お客さんもゾロゾロ帰り出す時間帯。

 

「え?」

「たびたびすまない。座長さんに会わせてくれないかな」

 

 思い詰めた顔をしたガイさんと複雑な顔のマデリンさんがいた。 




カザリーンは最初カテリーナという名前だったのですが、ボルテスレガシーの日本語版上映/放送のニュースを聞いてカザリーンに。CVは多分小原乃梨子(ぉ
あー、ボルテスレガシー楽しみなんじゃ~~~

追記:七月十二日、カザリーンの声優である小原乃梨子さんが逝去されました。慎んでご冥福をお祈り申し上げます。
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