異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「歯を食いしばりなっ!」
「ほげぇっ!?」
ラファエルさんのほお桁に強烈な左フック。
歯の光るドワーフが景気よく吹っ飛んでゴロゴロと転がる。
どういう事かというと、泣き叫ぶラファエルさんに御母様が事情を聴いたのだ。
で、聞き終わるなりこれである。よくやった! 感動した!
いやまあ遠因が高度100mの空中にみんなをばらまいたせいだからあんま言えた義理でもないんだけど・・・
「そうですぞ! 悪いのはハヤトですぞ! 山のてっぺんから突き落とされるとわかっていて山に登る馬鹿はいないのですぞ!」
ばらまいたのは最初だけでしょうが! しかもあの時はいっぱいいっぱいだったし!
「悪意でやったわけじゃないし、ケジメもつけたんだろ! 親切で運んでくれるってのにケチつける奴がどこにいるんだい!」
「
「それはヴァナラの人達の術だったでしょ!」
「ハヤトにはそう言う運命がついて回るのですぞ! 何でしたら吾輩が乗った時だけ発動するのですぞ!」
今のところ落ちた/落としたのは二回だけなんだけどなあ。
いやまあどっちもラファエルさんが乗ってたから、この人からしたらそう言う事になるんだろうけど・・・。
「三回目は落ちなかったでしょ!」
「吾輩が気絶してたからですぞ!」
ええい、ああ言えばこう言う・・・!
「歯を食いしばりなっ!」
「ほげぇっ!?」
それでも最後はゲティさんの熱烈な説得によってラファエルさんも納得してくれた。
嗚呼、偉大なり母の愛。
左右から強烈なフックを食らったラファエルさんの顔が餡パン男みたいになってたが、まあ些細な問題だ。
吾輩の顔を食べて元気になってよ!
ともかくそんなことをしながら、俺たちはこの町での最後の公演を続けていた。
アーベルさんの道化芸と軽業に始まってアルテの怪力芸。リタの動物芸。座長の歌。
ロンドを離れた今ではオブライアンさんも何はばかる事なく水芸を披露できる。
そしてトリは俺の手品・・・と言いたいところだが、最近は劇が締めに来ることが多い。
例のイレマーレでの事件をネタにした「隣り合わせの風と竜、君の灰色の青春に届いているか」である。
この世界の文明レベルだと演劇とか吟遊詩人の歌というのは、ニュースみたいな役割を果たすことも多い。
遠くであった出来事を娯楽として伝えるわけだな。
地球でも中世ではそうだったし、テレビが普及する前は映画館でニュース映画ってのもよくやってたらしい。
そういう意味で時事ネタであるこの劇は、イレマーレ周辺の国では結構受けているのだ。
せっかくだからと言うことで、ゲティさんには客席で見物して貰ってる。
ラファエルさんにとっては大人になったのに授業参観されてる気分だろう――親が職場に来るとかご愁傷様である。
まあゲティさんが楽しそうにしてるのでこっちとしては微笑ましいが。
出番の合間にちょっと話しかけてみる。
「どうです? 楽しんで頂けてますか?」
「あ、これはどうもハヤトさん。ええ、楽しいですよ。やっぱりドワーフの洞窟は山奥にありますからね、人間の芸人の方々は滅多にいらっしゃらないんですよ。
戸惑うこともありますが、色々と新鮮でいいですね。特にリタちゃんのハムリス芸は可愛かったです」
何だかんだ数は力だからね。戦いだけじゃなくて学問でも芸事でも。
三人寄れば文殊の知恵とはいうが、ひとりの天才が考えるよりも、一万人の凡人が考えるほうが進歩はすごいのだ。
もちろん量より質という場面もあるが、文明が進めば進むほど天才の果たす役割は少なくなっていく。
そんなことを話すとゲティさんが目を見開いていた。
「・・・そう、冒険者族だと思ってはいたけど・・・あなた。オリジナルなのね」
あれ? またオレ何かやっちゃいました?
ゲティさんがくすりと笑った。
「ああ、大丈夫です。口外しませんよ。スタロのお友達ですものね」
・・・あざっす。
しかしこれだけでよくわかりましたね・・・サトラレとはしょっちゅう言われてるが。
「前にもオリジナルの方と会ったことがありまして。
そんな話を出来る方なんて、この世界では余程の大賢者くらいですよ。
それに話の内容もそうですが、雰囲気がどこか似てました」
そういうもんかー。
やっぱりよその世界から来てるとそのへん違うんだろうなあ。
というか、この人せいぜい40くらいに見えるが、人間じゃなくてドワーフだ。
百年二百年生きててもおかしくないよな。
「まあそんな所です。ああそれと」
なんでしょう?
「ドワーフでもおばちゃんでも、年齢の話をされて気分のいい女はいないから、注意しなさいね?」
「アッハイ」
にこやかに圧迫してくるゲティさんを前にして、俺はそう答えるしかなかった。
舞台は進んで行く。
座長の歌が観客の拍手で締められた後はいよいよラファエルさんの出番だ。
今までも伴奏はほぼこの人が一手にまかなっていたが、ここはラファエルさんがメインで弾き語りである。
「・・・」
うん?
最初はにこやかに語りを聞いて、時々笑ったり手を打ったりしていたゲティさんの顔が次第に曇っていく。
「ハヤトさん」
・・・なんでしょう?
「あの子は、ここの一座ではいつもこんな感じなんですか?」
「まあ・・・大体あんな感じですね。小話と、後物語の弾き語りを」
「そうですか・・・」
ゲティさんが曇る理由がわからないまま、俺は出番の準備でそこを離れた。
いつも通り俺の手品は大受け、トリの劇も喝采を浴びて公演は終わった。
ちなみに劇は俺も出演してる。《加護》の幻影を利用したモンスターの役だけどな!
「機獣世紀ゾアロイド」とか動物・昆虫型ロボが山ほど出てくるし、何なら各作品の敵メカもガワだけなら再現できる。ロボットアニメも山ほどあるから、ドラゴンもキメラやワイバーンも自由自在だ。メカメカしいのは目をつぶってくれ。
しかし観客に大受けしてるのはいいんだけど・・・俺もまともな役をやりたいなあ。今のままじゃハリボテ馬の足だドンドコドーン!
なおまわりの反応。
「何でも顔に出るあんたが役者? 無理無理」
「まあ最低でもポーカーフェイスが出来るようにならねえとなあ・・・」
「ハヤトくん、人間できることとできない事があるよ」
ちくしょう!
早く人間になりたい!
「何をぶーたれておるんじゃ。準備が終わったぞ。幕やテントを片付けて、さっさと撤収じゃ」
「うへーい」
師匠にケツを蹴り上げられ、二時間くらいかけて片付けを終えると、俺はXブロイザーを起動させ、みんなと馬車を腹の中に収めて飛び立った。
ちなみに劇のラスボスの、ネフェルくん巨神は3メートルくらいのジャアントロボ(相当のロボ)のイメージ。