異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第十五話 水の星へ愛を込めて

 あの後俺達は一度野営地に戻った。

 情報を交換し、明日からの公演の準備を手伝った後、再び酒場にとんぼ返り。

 八時を過ぎてもカブライさんは姿を見せず、岩窟劇場に向かう俺達。

 とはいえラファエルさんは楽観的だった。

 

「公演でトラブルが起こったりして突然仕事が増えるのは良くあることなのですぞ。

 ましてや岩窟劇場ですぞ。我々のような小さな一座とはその辺随分違いますですぞ」

 

 まあそれはわかる。俺だって一年近く一座の仕事を手伝ってきて、そう言う経験は山ほどあるし、大きな劇場なら尚更なんだろうなとその時は思った。

 

「・・・何か焦げ臭くない?」

「そうですかですぞ?」

 

 そんな会話を交わした直後、切羽詰まった誰かの声が聞こえてくる。

 

「おい、岩窟劇場が燃えてるぞ!」

「・・・!?」

 

 俺とラファエルさんは、顔を見合わせるなり走り出した。

 

 

 

 そして今、俺達は炎上する岩窟劇場を前に呆然としていた。

 岩だけに劇場そのものは燃えていないが、窓という窓から炎が吹き出している。

 

「スタロ! ハヤト! 一体これは!?」

 

 後ろからかかった声に、思わず俺達は振り向いた。

 

「カブライ! 無事だったかですぞ!」

 

 ラファエルさんが思わずカブライさんに抱きついた。

 

「お、お使いを頼まれて出てた間に・・・それよりジェニーは! ジェニーは無事なの!?」

「わかんねえよ! 出て来たのは客だけで、劇場の人間は大半逃げられてねえ!」

 

 自分も逃げてきたらしい、火傷を負ったドワーフ。

 それを聞いた瞬間、カブライさんは燃えさかる劇場に向かって駆け出していた。

 

「!?」

 

 あっけにとられる俺とラファエルさん。

 俺はともかく、実戦慣れした彼でさえ止める暇もないほどの早業。

 

「ま、待つのですぞカブライ!」

 

 その声を背中に受けて、カブライさんは炎の中に飛び込んだ・・・

 って、呆然としてる場合じゃねえ!

 

「ラファエルさん! 消火しますよ、いいですね!」

「! そ、そうでしたぞ! お願いするのですぞ! 吾輩はカブライを!」

 

 駆け出すラファエルさん。

 並んで走りながら俺は両手を合わせ、《加護》を発動する。

 

「ウォータービート! アクアプレッシャー!」

 

 合掌した両手の先端から放たれる、水の魔働機士の必殺の水流攻撃。

 意外とあちらこちらで使っているそれをまた活用しながら、俺達は燃えさかる岩窟劇場の中に駆け込んでいった。

 

 

 

 炎と炎に包まれた劇場内の廊下。

 天井にも床にも壁の調度品やタペストリにも火が燃え移って、まるで炎のトンネルだ。

 

「デモゴディ消火液ィっ!」

 

 左側に向けた両手から水流を、頭を右に向けて口から消火液を発射しつつ、俺は走る。

 ええい、こうしないと消火が間に合わないとはいえ、走りにくい!

 多分傍目から見たらかなりまぬけな姿だな!

 

 カブライさんの姿は見えない。

 たまにすれ違う、避難してきた人に水をぶっかけたりしてるのはあるが、一応緑等級の俺と、それと互角以上の身体能力を持つラファエルさんがまだ追いつけない。

 カブライさんは炎のトンネルの中を突っ切っているだろうにだ。

 

「火事場のクソ力かな」

「愛の力かも知れませんぞ」

 

 火傷したドワーフに、応急処置でウォータービートの水をまたぶっかけ、そんな会話を交わしてから俺達はまた走り始めた。

 ウォータービートは癒しの力を持つ魔働機士でもある。

 火傷の痛みを気持ち程度楽にしてくれるだろう。

 

「楽屋はもう少し先だっけ!」

「後100mほど・・・ハヤト!」

「!」

 

 前方、炎のトンネルの中に動く影があった。

 何度も見た避難者の姿。

 体のあちこちを燃やしながら走ってくるのは・・・カブライさんだ!

 

「ウォータープレッシャー!」

 

 威力を調節してカブライさんに水をかける。

 煙で気付かなかったが、この人背中に人間の女性を背負っている。

 ジェニーさんか!

 

「・・・人間ひとり担いでここまで逃げてきたのですぞ。カブライのくせにやるものですぞ」

「ラファエルさんはカブライさんとこの人を。俺は中の火を消します」

「お願いしましたぞ」

 

 頷いてラファエルさんは、ふたりを軽々と担いで入り口の方に走り去る。

 さて、ああは言ったがこのでかい建物の火事を・・・

 と、考えた瞬間に閃いた。

 子供の頃、テレビの洋画劇場でやってた古い映画。

 二百階建ての超高層ビルで起こった大火災を消すのに、ビルの設計者と消防隊のチーフが考え出した作戦。

 

「チェンジ、ジェッターII(ツー)! スイッチ・オンッ!」

 

 ドリルロボ・ジェッターIIに変身して俺は飛び上がった。

 そう、今回ブチ抜くのは地面や壁じゃない。天井だ。

 幸いこの劇場には案内用の石板地図があり、大雑把な作りは俺にも把握できる。

 まずは最上階。

 

 

 

 岩天井を四つばかり突き破り、目的地の最上階。そこまではまだ火が回っていなかった。

 かまへんかまへん、ちょうどいい!

 俺は両手を合わせ、集中。

 体内のヴィラン・コアにも意識を集中させ、更なる魔力を引き出す。

 唸れ、右脇腹の浪漫回路!

 

「ジーク・サラ・ブリーズ! アクアプレッシャー・最大出力っ!」

 

 その瞬間、俺は水中に飛び込んだ。

 プールか何かがあったわけではない。

 全身から噴き出す水で周囲が埋め尽くされ、最上階のそれほど広くない空間を覆い尽くしたのだ。

 

 一階層を丸ごと覆い尽くした水はどこへ行くか?

 当然、重力に従って下へ向かう。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!?」

 

 外から驚愕の声が聞こえてきた。

 まあそりゃそうだろう。

 最上階に突然、恐らく数万リットルか数十万リットルの水が湧きだしたのだ。

 それは階段や穴を伝って下に流れ、あるいは窓から勢いよく吹き出す。

 

 外から見ていた人に後で聞いた話だが、水はまず最上階の窓から勢いよく吹き出し、あっという間に階下に回って四階、三階、二階、一階と続けざまに窓や玄関から吹き出した。

 水と一緒に何人か放り出されたが、さすがにドワーフのこと、三階や四階から落ちた程度では死なないらしい。

 むしろ外の野次馬と一緒に腕を振り上げて歓声上げてたってんだから頑丈なもんだ。

 

 完全に鎮火した後もしばらく水は止まらなかったが、やがてそれも止まる。

 しかし、野次馬の歓声はいつまでもやむことがなかった。

 

 もっとも俺自身は力を使い切って気絶し、最上階で転がってたのだが。

 ま、いっか、ま、いーやね。

 




>意外とあちらこちらで使ってる
水って攻撃力は低いですが、わりかし使い勝手がいい能力だと思います。
それに比べると戦闘以外はキャンプの火起こしか放火くらいでしか使えない火って活用機会が少ないw

>古い映画
1974年の「タワーリング・インフェルノ」。
高層ビルの火災を消すのに、最上階の貯水タンクを爆破して上から水をぶっかけようという、豪快な消火映画。
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