異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「知らない天井だ」
自分で言っておいて何だが、これまでに何度使われたんだろうなあ、このフレーズ。
世界中で虐殺されたマーフィくんの幽霊とどっちが多いだろうか。
間もなく顔に刺青をしたドワーフの呪術医らしき人がやってきて、いくらかの質問と診察を受けた。
どうもここはドワーフの施療院で、火事の怪我人と一緒に担ぎ込まれたらしい。
まあ火事場で気絶して転がってたらそう思われるだろうな。
「俺のところに誰か尋ねてきませんでした?」
「《
あなたゲティ様のお知り合いですか」
「ええまあそんなとこで。
そうだ、岩窟劇場のジェニーさんとカブライさんという人はこっちにいますか?」
「私の担当にはおらんですな。多分この施療院に来たとは思いますが、幸いなことにあの火事で重傷者はそれほどおりませんでしたからな。もうお帰りになってることも十分有り得ます」
なるほど。まあ後でラファエルさんたちに聞けばいいか。
俺は魔力使いすぎてぶっ倒れてただけなんで、もうここで寝てる必要もないし。
そんなことを考えていたら、いつの間にかお医者さんが凄く真剣な顔になっていた。
居住まいを正して、言葉遣いも変えて。
俺も思わず背筋を伸ばす。
「それでですね」
「はい」
「"
「"大穴"?」
「ああ、これではわかりませんね。族長の洞穴・・・あなた方人間の言い方で言えば王宮です」
・・・はい?
この時俺は結構まぬけな顔をしていたと思うが、刺青の呪術医さんの顔は真剣なままだった。
「あの時、岩窟劇場の火を消してくれたのはあなたですよね」
ええまあ。
「岩窟劇場が我らラゼルスのドワーフの誇りというのもあります。
ですが、それ以上に洞窟という閉所に住む我々にとって、火事と、それによる濁った空気というのはとても恐ろしいものなのです。
こればかりは人間の方にはおわかり頂けないかも知れませんが」
ああ・・・確かに実感はないが想像は付く。
火事で怖いのは火と同じくらいに煙と、それによる酸欠だ。
地下洞窟に住むドワーフとしては、想像したくもない恐ろしい死に方であるに違いない。
「ですから」
と、お医者さんは続けた。
「それを防ぎ、多くの同胞を救ってくれたあなたには誰もが感謝しているのです。
火傷や
全てはあなたのおかげです。
ラゼルスに住むドワーフの一人として、私からもお礼を言わせて下さい」
「あ、はい・・・」
重々しく頭を下げるお医者さんに、俺はしどろもどろに返事を返すことしかできなかった。
「それはそれとして、王宮とかえらい人って苦手なのでパスできません?」
「いやダメでしょそれは」
お医者さんに断って野営地に帰ると、ゲティさんとザナさんが来ていた。消火の件についてはお二人とラファエルさんからも手厚く礼を言われたが、どうにも面はゆい。
カブライさんとジェニーさんもそこそこ火傷が重いそうで、今治療中だが生命に別状はないと聞いてほっとする。
「それで王宮からお呼びがかかってるらしいんですが・・・どうしましょう。出来ればパスしたいんですが」
そう言うとやっぱり妙な顔をされた。
「まあ、純粋に感謝の気持ちでしょうから・・・恐らくは晩餐に招かれて、お褒めの言葉を頂戴して終わりでしょうし、それほど肩肘張ることもないと思いますよ」
着て行く服とかはどうすればいいんでしょうねえ。
晩餐会に着て行く服を買いに行くための服がない!
「あー・・・人間のそれと違ってさほど堅苦しい席でもありませんし、どうしてもというなら王宮の方で用意するでしょうが、ハヤトは人間ですからなあ」
結局、手品の時に使ってる燕尾服もどきを着て行くことになった。
まああれ本来執事が着る服じゃなくて礼服だしな。
見栄えが良いから着せてるだけだ。
執事。それはお家の平和を守るために戦う神秘の家僕たちのことである!
少なくとも日本のフィクションではそうなのだ!
それからしばらくして族長さんの使者が来て俺と、ゲティさんも一緒にお呼ばれすることになった。
ゲティさんも特におめかしをする訳じゃなくて、いっぺん家に戻ってこざっぱりした服に着替えた程度なので、肩肘張らない席というのは本当らしい。
「お前さんがダン・ハヤトか。
ま、今日は楽しくやってくれ。俺からのせめてもの礼だ!」
肩肘張らないどころじゃなかった。
いや、別に族長さん(俺から見たら豪快なおっさんだったが、ドワーフとしてはまだ若いらしい)の挨拶が砕けまくってたからって訳じゃない。
この
あのバイキングの角付き兜も創作って話だがそれはさておき。
思わず固まってしまった俺だが、族長だけじゃなくて、出席者の半分くらいはそんな格好だった。
男性に限るなら7:3くらいでチェインメイルの人の方が多い。ドでかい戦斧を無造作に椅子に立てかけてる人すらいた。
というか礼服っぽいもの着てるのマジで俺だけで、それ以外のドワーフの人はほぼ小綺麗な普段着レベルだわ。
女の人は全般的に身だしなみが整ってるが、それでもちょっとお出かけするレベルで、決して結婚式とか王宮の宴とか、そう言う所に出てくる格好じゃない。
中には男同様武装して参加してる人までいる。
こ、これがドワーフの宴・・・!
「まあ甲冑と兜はドワーフの正装みたいなものですからね。
結婚式や葬式でも、女性は礼装に身を包みますけど、男は基本武装姿です」
ゲティさんがこっそり教えてくれた。
パねぇな、ドワーフ・・・!
驚きはしたものの、ドワーフの人達は全般的に礼儀にうるさくなくて助かった。
火災救助の立役者と言う事で、族長さん筆頭にフレンドリーに接してくれたのもありがたい。
まあ次々と俺のところにやってきては乾杯してジョッキを飲み干していくのは参ったけど。
これがアルハラってやつか・・・!
とは言え何せドワーフが相手だ、このような状況は予測していた!
酒に弱い俺が耐えられないであろう事もな!
なので秘策を用意していたのである!
・・・とは言ってもあれだ、《加護》を発動させてデモゴディの力を下ろしただけだ。
吸血鬼ルイスの死の波動を退けたように、加護を使ってるときの俺は半ばロボットになる。
酒飲んで酔うロボットは普通いない(稀にはいる)。
ただ、デモゴディのヴィジョンが出ないように注意しないとな。
「いやあ、人間なのに強いなあ! ドワーフでもこれだけ杯を交わせば、ぶっ倒れる奴もいるもんだが!」
「はははは・・・いやあ、そう言う体質で・・・」
へべれけのドワーフに肩を叩かれて愛想笑いするしかない俺。というかそのレベルで飲まされてたンかい。
さて、次は・・・と考えたところで、目の前にアダインさん。
ゲティさんの息子、ラファエルさんのお兄さんの顔があった。
>執事。それはお家の平和を守るために戦う神秘の家僕たちのことである!
星獣戦隊ギンガマンのナレーションが元ネタ。でも事実だと思うw
>ウチのモン=俺の家族
ドワーフの氏族は丸ごと大家族という形なので、族長というのは氏族全員の父親という認識があります。
>角付き兜
歴史をさかのぼっていくと、どうやらワーグナーの歌劇「ニーベルンゲンの指輪」の衣裳が定着してしまったようです。
>酔っぱらうロボット
トランスフォーマーのメガトロン様(ガルバトロン様だったかも)とか、たまにいる。
>というかそのレベルで飲まされてたンかい。
「ん」を「ン」と変換するのは大体小池一夫信者。