異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第十八話 ドワめきメモリアル・ガールズサイド

 聞いた話は、大体想像していた通りだった。

 アダインさん、ラファエル(スタロ)さん、ベドマさんの三人兄弟は昔からザナさんと仲が良く、年頃になると三人ともザナさんに好意を持ち始めた。

 ザナさんが選んだのはラファエルさんで、ベドマさんは苦しみながらも二人を祝福し、アダインさんもそうした――はずだった。

 

「でも諦めきれてなかったみたいでしてねえ。一時期は酒浸りになって、とても苦しんでました。

 私たちの前では何でもないように装っていましたけど、母親に隠せるものですか」

 

 今のアダインさんはドワーフ基準ではとっくに結婚してるはずの年齢で、評議員としても未婚はまずいはずなのだが、未だに独り身を通しているとのこと。

 

「やっぱりまだ引きずってるんでしょうねえ」

 

 それでもラファエルさんとザナさんが結婚して幸せな家庭を築いてれば、何とか折り合いはつけられたのかもしれない。

 しかし芸人として着実に評価を受け、結婚も間近と思われていたところで突然ラファエルさんが出奔。結局ザナさんはそのまま宙ぶらりんで10年近く待たされる。

 別れを告げに来たラファエルさんを、アダインさんは殴った。

 ラファエルさんの出奔を認めた母親とベドマさんにも絶縁状を叩き付け、それ以来没交渉だったとのこと。

 

「・・・これ、つまりラファエルさんが全部悪いってコトでファイナルアンサー?」

「そ、それは・・・はい、その、そうですぞ・・・」

 

 うなだれるラファエルさん。ザナさんが顔色を変えた。

 

「それは! でもしょうがないわけがあったんです!」

 

 やめて! この人は悪くないの!

 どこの世界でも同じやなあ・・・

 というかこんないい人を結婚間際で放り出して修行の旅に出るとか、あんた何考えてんです。

 

「その、ですな」

 

 はい。

 

「一言で言うと自分の芸に自信が持てなくなったからなのですぞ」

 

 うーん・・・?

 俺から見るとバイオリンの演奏も話芸も大したもんだと思うけど。

 玄人から見るとそうでもないのか?

 

「少なくともお客さんには受けてましたよ。わが息子ながら顔はいいですし」

「私も、岩窟劇場全体で見ても稼ぎ頭の一人だったと、友人から聞いたことがあります」

 

 やっぱりドワーフの間でもイケメン扱いなのか・・・

 しかし岩窟劇場って、ここのトップの演芸場だよな?

 普通に凄いよな?

 

「凄いですね」

「そうなんですけど・・・」

 

 二人がちらりと視線。

 俺含めて三人から見られたラファエルさんは、溜息をついて首を横に振った。

 

「・・・あの頃の吾輩の芸は偽物だったのですぞ。詐欺のようなものですぞ。

 前に少し話したことがありましたが、ハヤトは吾輩の《加護》がなんだったか覚えていますかですぞ?」

 

 ええと・・・確か《笑いの加護》だっけ?

 霊猿(ヴァナラ)の森でそんな話をしたような。

 

「吾輩の芸がそこまで受けていたのは、《加護》あってのことなのですぞ。

 《加護》でお客さんを無理矢理笑わせていたのでは、それは受けて当然なのですぞ。

 魔法で笑いを強制するのと何ら違いはありませんぞ」

 

 客からすると《加護》でも何でも笑えればいいと思わないではないが、そう言うものかな。

 

「まあ、わからなくはないんです。私も同じような事で悩みましたからね」

 

 と、これはゲティさん。そうなんです?

 

「私の《加護》は、体を硬化させることです。

 《鉄身の加護》とか《鉄拳の加護》とか呼び方は色々ありますが・・・」

 

 彼女の場合は《岩拳の加護》と呼ばれてたらしい。

 《岩骨(がんこつ)》という二つ名もそれ由来で、「岩」と「拳骨」をかけたネーミングだそうだ。

 で、《岩拳の加護》を使っている自分の実力は、本当に自分の力なのか?と一時期悩んでいたそうで。

 

「もちろんモンスターや危険な獣相手にそんなことを言っている場合ではありませんから、使ってはいましたが・・・この《加護》ゆえに私の技の錬磨が阻害されているのではないか?という疑念は頭から離れませんでした。

 もうお亡くなりになってしまいましたが、師匠筋には私のような《加護》無しで素手で岩を砕けるような達人もいらっしゃいましたし」

「うわぉ」

 

 思わずうめき声が出る。

 鍛えたらどこまで行けるんだこの世界の人類。

 まあ海を割ったとか1kmの大怪獣を斬り殺したとか、多少誇張はあるにしてもそう言う人が実在したわけではあるが・・・

 閑話休題(それはさておき)

 

「それ、結局はどうなったんですか?」

「《加護》も結局は自分の一部です。それを含めて私の技なのだと結局は悟りましたわ」

 

 穏やかに笑うゲティさん。

 その言葉には気負いもてらいもなく、ごく自然にそう思っているのがわかる。

 それまでに随分悩みもしたんだろうなあ・・・。

 

「しかし、それは息子さんに言ったんですか?」

「言いましたとも。ですがこれはあくまで私の結論。参考までにと教えはしましたが、たとえ息子とは言え他人に押しつけるものではありません。

 《加護》を受け入れてそれも自らの一部とするか、《加護》に頼らず純粋に一芸を磨くか、それは本人の選ぶことでしょう」

 

 うーむ。

 

「母上はそうして《加護》を自分の一部と受け入れられましたが、吾輩は納得できなかったのですぞ。

 他人を楽しませるのは、技術と心であるべきですぞ。

 《加護》や魔法で無理矢理笑わせてもそれは本当の笑いではないのですぞ」

 

 そこでラファエルさんは息をついてコケ抹茶を口にした。

 

「無論母上のおっしゃるとおり、母上は母上、吾輩は吾輩ですぞ。

 どちらが正しいと言う事ではなく、吾輩が納得できんという話ですぞ」

 

 それで、修行の旅に?

 

「そう言う事ですぞ。

 《加護》を使わぬ吾輩の芸ではろくにお客さんを笑わせることはできなかったのですぞ。

 なれば、もっと広い世界に出て経験を積み、芸を磨くしかないのですぞ」

 

 そう言えばゲティさんがラファエルさんの舞台見て暗い顔してたがそういうことか。

 岩窟劇場で会った人がスランプと言ってたのも。

 なるほど・・・理由は判った。

 

「わかっていただけましたかですぞ」

 

 結婚寸前の婚約者を十年も放置する理由になるかどうかと言うと、かなり微妙ですが。

 

「ぐふっ!?」

 

 ラファエルさんが死んだ! この人でなし!

 

「人でなしなのはこの場合ハヤトなのですぞ!?」

「わ、私は納得した上でこの人を送り出しましたから・・・!

 人間の方なら長く感じるでしょうけど、ドワーフにとって十年はそれほどの歳月ではありませんし!」

 

 必死にラファエルさんの擁護をするザナさん。

 ええ娘さんやなあ。

 これを放り出して旅に出るとかやっぱり許されざるよ。処す? 処す?

 

「処されるならハヤトの方なのですぞ! その鈍さはもはや犯罪なのですぞ!」

 

 しょっちゅう処されとるわ! あんたは手が出ないだけどれだけ恵まれてることか!

 

「はっきり言って自業自得なのですぞ。せめてポーカーフェイスを身につけることですぞ」

「言っておくけどスタロ。あんたが修行の旅に出るのは許したけど、ザナを悲しませてることについてはまったくもって許してはいないからね?」

「ぐっ!?」

 

 叱られてやんの。やーいやーい。

 

「ぐぬぬぬ・・・!」

 

 悔しそうな顔で俺を見上げるラファエルさん。ふっ、勝った・・・!

 ザナさんは俺達の低レベルな争いに苦笑してる。

 

「やれやれ・・・っ!」

 

 同様に苦笑していたゲティさんの表情が、一瞬にして厳しく引き締まった。

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