異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第二十四話 おにいちゃんお口くさい

 結局徹夜仕事になった。

 あの野郎夜通し飲んでは酔いつぶれて酒場で寝やがって、その間ずっと透明になって酒場の隅でひっそりするハメになったのだ。俺はザシキワラシか?

 

 ともかく夜が明けると、奴は店員に起こされてやっと家に帰って行った。朝帰りとかいいご身分だな!

 なお洞窟なので当然日の光は差し込まないが、人間の町同様鐘で時間がわかる。

 それにドワーフは極めて正確な時間感覚と方向感覚を持っているらしい。地下で生きるように体ができてんだな。さすが大地の妖精。

 閑話休題(それはさておき)

 

「いよう、朝帰りか! いいご身分だな!」

「お兄ちゃんお酒臭い」

 

 仕事です! 仕事でずっと酒場にいたんです!

 アーベルさんの軽口はいつものことだからいいけど、リタにしかめ面されるのは精神的ダメージがでかい。

 

「カオルくん、消臭が出来る魔剣とかない?」

「お風呂入って服を洗濯したほうが早いんじゃないかな・・・実際お酒臭いよ」

 

 カオルくんには苦笑されつつも顔をしかめられてしまった。

 一滴も飲んでないんだけどなあ。酒場の空気中にアルコール粒子が漂ってでもいるのか。

 いそうだな。ドワーフだし。

 

 結局師匠に消臭の呪文をかけて貰い、俺は布団に潜り込んだ。

 せめてちょっと仮眠しないともたん・・・

 

 

 

「はいお帰りはあちらー・・・ふわああ」

 

 思わずあくびが出た。

 何とか午前の部をこなし終えて、お客さんを帰してるところである。

 メシ食った後もうちょっと寝かせて貰おうかなあ。

 でもアルテやリタが「食べた後寝ると牛になるよ!」とか言ってくるんだよなあ。

 アルテは自分が牛なんだけどなHAHAHA。

 さて、これで全部かな。

 

「おい、ここがハスキー一座の公演地か?」

「はい、そうですけど」

 

 と、そこにかかった声。

 何かチンピラっぽくてやだなあ・・・げっ! ザレロ!?

 

「あん? お前、どこかで会ったっけ?」

 

 うん大丈夫だ落ち着け落ち着け。

 こいつを探ってることはばれてないはず。

 見張って後をつけたときはずっと透明化してたし、その後探ってたのはアーベルさんだ。

 あの人が早々ボロを出すはずもない。

 

「あーほら、ウチの座長とどっかの酒場で随分飲んでたじゃないですか」

「・・・ああ、シルヴィアねーさんのお供の兄ちゃんか! 奇遇だなあ!」

 

 はっはっは、とチンピラっぽい態度から一転して友好的になるザレロ。いや友好的になってもチンピラだけど。

 なんかこー、不良とか半グレみたいであんまり仲良くはしたくない。

 この辺が俺の人間力の低さなんだろうな。

 閑話休題(それはさておき)

 

「何か御用ですか? 公演は午前の部がちょうど終わった所ですけど」

「ああ、ここに姉ちゃんが世話になってるって聞いてさ。いるだろ? ザナってんだけど」

 

 ほわっつ!?

 あのマジメで真っ当で大人しそうな、というか本当にいい人なザナさんの弟がこれ!?

 

「あ、疑ってんな? マジだよ、マージマジ。まあ姉ちゃん美人だから疑うのもわかるけどさあ、取りあえず呼ぶだけでも呼んできてくんねえ?」

 

 うーむ。

 いやまあ、暴れても多分俺ひとりで鎮圧できるだろうし、呼ぶだけは呼んでくるか・・・

 

 

 

「ザレロ!?」

「よっ、ねーちゃん久しぶり。痩せた?」

 

 本当に姉弟だった。

 まあそんな気はしてたけど、ちょっとショック。

 

「なに? ハヤトってザナさんにまで色目使うわけ? そう言えばオブの妹さんとも仲良くなってたよね」

「まあハヤトくんだし。ヴァナラの森では通訳の人もなんかそう言う目で見てたし」

「おにいちゃん、ザナさんはラファエルさんのお嫁さんだよ」

 

 ちげーって! そういう意味じゃねーって!

 ただザナさんみたいな良妻賢母タイプの人にあんなチンピラの弟がいたのがショックだってだけだよ!

 

「まあそれは・・・」

「家族でもまあ、そう言う事はあると思うけど・・・」

「でもやっぱりザナさんがかわいそう」

 

 俺達の視線の先で二人が話している。

 

「へへ、家に帰ったらいないからビビッたぜ!

 ほら見ろよ! 銀だぜ! いつかでっかく稼いでやるって言ったろ!」

 

 差し出したのは銀の小粒が一杯つまった、野球のボールがすっぽり入るほどの袋。

 こっちの世界の金銭感覚は未だによくわからないが、多分かなりの大金だ。

 それこそしばらく遊んで暮らせるとか家を買えるとかそう言うくらい。

 

「ザレロ。このお金、どうやって稼いだの?」

「・・・まじめに働いてだよ」

「嘘おっしゃい! まじめに働いてこんなお金が貰えるものですか!

 悪い事したのね! それで手に入れたんでしょう!」

「どうだっていいだろ! 悪い事はしてねーよ! ほら! 姉ちゃんのために持ってきたんだ! 受け取れよ」

「いるものですか、こんなもの!」

 

 ザナさんが平手を払う。

 袋が転がって、銀の粒が地面にこぼれた。

 

「・・・ああそうかい! そんなら勝手にしろよ!」

 

 身を翻してザレロが駆け出す。

 

「待ちなさい! 待ちなさいザレロ!」

 

 お姉さんの声を背中に受けて、それでもザレロは振り向かない。

 そのまま雑踏に紛れて姿を消してしまった。

 

「・・・ああ・・・」

 

 崩れ落ちてザナさんが泣き出す。

 どうしようかと顔を見合わせたとき、座長が歩み寄っていくのが見えた。

 膝をついて、後ろから肩に手を置く。

 

「大丈夫かい?」

「本当は優しい子なんです・・・それなのに・・・」

 

 それだけ言って、言葉が続かない。

 座長が背中をポンポンと、優しく叩いた。

 

「取りあえずこの金はアタシが預かっておくよ。

 貰っていい金なら貰っちまえばいいし、少なくともアンタのためにって持ってきたものなんだ。

 落ち着いてからよく考えな。ね?」

「はい・・・」

 

 頷くザナさんの背中をもう一度優しく叩くと、座長はこぼれた銀を袋に戻して口を締めた。

 袋を右手で弄びつつ、そのままこっちに歩いてくる。

 

「アルテ、カオル、リタ。かわりばんこでいいからザナの傍についててやんな。

 ただでさえ不安定なところにアレはきつい」

「わかった」

 

 揃って頷くアルテ達。俺は座長の右手の袋に目をやる。

 それザナさんのお金ですからね? 飲んだりバクチですったりしちゃだめですよ?

 そう言うと座長が心底情けなさそうな顔になった。おや、珍しい。

 大体こういうときは言葉より先に手が出るのに。

 

「あのねえ、アタシだってそこまでちゃらんぽらんじゃないよ? それ位信じてくれたっていいじゃないかさあ」

 

 日頃の行いでは?

 

「うるさい!」

 

 そう言うと座長はふくれっ面のままでテントに入っていってしまった。

 さすがにちょっと言い過ぎたかな・・・

 

 

 

「あのー・・・え?」

 

 一言謝ろうと思ってテントに入ったら、座長は片膝を抱えて黄昏れてた。

 視線の先にはザレロが持ってきた銀の小粒の袋。

 いつも不敵な態度を崩さない人が、今はしぼんだ風船みたいにしおれて見える。

 そのまま立ちつくしていると、座長がこっちに気付いた。

 

「何だ、ハヤトかい。さっきのことならいいよ。気にしてないからさ」

 

 手をひらひらさせる座長。

 いやでもそんな顔して言われても放置できないんですが。

 

「お節介だねえ」

 

 そんな顔してる座長が悪いです。

 

「・・・アンタやっぱり女を口説くのがうまいんだねえ」

 

 どういう意味ですか。

 

「まあいいさ。大した事じゃない。

 アタシが子供の頃からこう言う旅の一座で育ったって話はしたっけ?」

 

 前に聞いたと思います。

 

「弟がいてさ。天涯孤独だったから、互いに唯一の肉親だった。

 小さい頃は姉ちゃん、姉ちゃん、って、どこへ行くにもアタシの後をついてきてさ・・・」

 

 それが年頃になったら悪い仲間とつるみ始めて、二十歳になる前に腹を刺されて死んだそうだ。

 この世界だと良くある話・・・って言ったらいけないんだろうなあ。

 

「いや、実際良くある話さ。その辺にいくらでも転がってる、つまんない話だ。

 けどまあね。だからザナちゃんたちのことも他人事には思えないって、それだけのことなのさ」

 

 そう言ってシルヴィアさんは寂しそうに笑った。




ちなみにハヤトくんの金銭感覚が雑なのは、手品で無茶苦茶稼いでるのと、本人的には買い食いくらいしか使い道がないからです。
この世界、飲む打つ買うが娯楽の基本な上に、なまじっか世話になってるのが上位の芸人一座で目が肥えてるから、お金を使える娯楽がない。せいぜい本くらいだけど、ハヤトくんの趣味に合う本ってこっちの世界には余りなさそう。
でも何かこちらで出来る趣味持ったら多分ズブズブはまるw
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