異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「ハヤト! シルヴィアもザナさんも大丈夫!」
アルテ達が洞窟に駆け込んでくる。
さすがにリタとジェニーさんはいないか。
「大丈夫だよ。カオルくんもナイスアシスト」
「どういたしまして」
サムズアップで感謝の気持ちを伝えると、カオルくんもいい笑顔でサムズアップ。
うーん、ナイスコンビネーション。
「しかし、ザナちゃんは大事に至らなくて良かったけど、これじゃ手掛かりは得られそうにないねえ」
周囲を見渡してシルヴィアさんの溜息。
せやなあ。
ゴロツキドワーフどもはたぶん全員死んでるし、三日月頭どもは死ぬと崩れてチリになる。
さすがに師匠でもこの状況で頭クチュクチュはできまい。
「ひ・・・ひいっ!?」
あ、ザレロが目を覚ました。
今更ながらに周囲の状況を理解というか実感したようで腰を抜かしてる。
「ポ、ポデスさん!? 一体どうなってんだよぉ・・・?」
あの中年ヤクザの事かな。
自分をリンチにかけてただろうやつなのに、それでもさん付けすんのか。
「ザレロ!」
「ね、姉ちゃん・・・?」
涙目のザナさんがザレロを抱きしめる。
すすり泣きの声が聞こえてきた。
「え、え・・・?」
助けを求めるように周囲を見渡す。
鬼のような顔のシルヴィアさんに睨まれ、その体が硬直した。
「あんた、状況はわかってるかい? 姉貴を巻き込んで殺すとこだったんだよ」
顔をこわばらせて、それでも頷くザレロ。
「本当にわかってるかい? 半分はあんたのせいなんだ。
わかってないならこの場でブッ殺すよ」
「・・・わかってるっす。姉ちゃん泣かしたの、おれのせいっす」
俯いたザレロに、シルヴィアさんが溜息をついた。
「見ての通り、アンタのお仲間はみんなあの世に行っちまった。
もう仲間に戻る事もできないし、今なら何話しても危険は及ばない。
・・・事情を聴かせてくれるかい?」
しばらく俯いて、ザレロはもう一度頷いた。
ザレロはまあ、第一印象通りのチンピラだった。
まじめに働かず奉公先の鍛冶屋を飛び出して、家も飛び出してあちこちのいかがわしい組織で下っ端として働いてたらしい。
三ヶ月ほど前、あのポデスとか言う死んだヤクザドワーフのグループにいたときに、もうけ話が入ったとグループ全員が集められた。
そこで銀山株の話を聞いて、銀の小粒を貰ってサクラ役を始めたのだという。
・・・軽薄で凄みが無くて、いかにもだらしなく遊んでる風に見えるからだろうなあ。
「何すか、ハヤトさん」
別に何でも?
というか何でいつのまにさんづけしてんだよ。
「ぼんやりとしか覚えてないすけど、ハヤトさんメッチャ強いじゃないすか! リスペクトしてますよ!」
か、軽い奴・・・!
「はいはい、そう言うのいいから続き話しな」
「うっす、姐さん」
シルヴィアさんも姉ちゃんだったのに姐さん呼びか・・・
今朝下宿で寝てたら仲間に叩き起こされ、ここに連れてこられた。
姉がザナさんだということや、ゲティさんとも面識があることを確認され、姉をここに呼び出せと言われてヤバそうだから断ったら、リンチされてあんな風になったと。
服がボロボロになった上、血で真っ赤になってるから相当手ひどくやられたのは確かだ。
・・・これ、少なくともザナさんに対してはちゃんと家族だと思ってたって事だよな。
そこは少し見直した。
まあ悪事の片棒を担いでたんだから慈悲はない、俳句を詠めという気分もないではないが。
「それで、他にはどういう仕事してたんだい、あんたら」
「俺みたいにサクラやってるやつ以外も、なるべく銀山株のこと話して広めろって言われてたっす。
嗅ぎ回ってるかわら版屋をボコったりもしたそうっす。あ、俺は手ぇ出してないっすよ?」
まあ他人の酒で飲んだくれてたんだろうからな。
「闇酒は?」
「扱ってました。っていうか、ここ一年くらいはそれがメインのシノギっすね。
元から安い闇酒を扱ってたんすけど、例のアレが出て来たら、もうそれ一色で。
味は大したもんじゃないっすけど、とにかく強くて安いんでよく売れたっすよ。
その頃から俺達も結構羽振りが良くなりましてね・・・」
泣いていたザナさんがザレロから身を離した。
「な、何だよ姉ちゃん・・・」
姉に睨まれてザレロがたじろぐ。
「ゲティさんとこのベドマちゃん、覚えてるでしょ」
「あ、ああ、そりゃな」
「死んだわよ。闇酒のせいで」
「!?」
愕然とした顔を見るに、本当に知らなかったんだろう。
姉とラファエルさんたちが親しい仲だったんだ。
子供の頃は一緒に遊んでたっておかしくない。
更に言いつのろうとするザナさんをシルヴィアさんが止めた。
「ザナちゃん、そいつは後にしておくれ。今は引き出せるだけ話を聞きたい」
「・・・わかりました」
渋々と引き下がるザナさん。
だがその視線はザレロに注がれており、こいつも居心地悪そうに身じろぎしている。
「岩窟劇場の火事についちゃ、何か知らないかい?」
「え? いえ、そっちは全然。それ関連だったっすか?!」
こっちは無関係か。
まあここにいたのが全員だとして、30人弱の闇酒密売グループに、そう何もかも出来たとは思えない。
親分のポデス含めて、そこまで腕の立つ奴もいなかったからな。
でもそれ関連でゲティさんやラファエル・・・スタロさんが襲われて、ザナさんも危うく死ぬところだったんだからな?
「う・・・」
お姉さんに睨まれて縮こまっていたザレロが更に縮こまる。
「さっき出て来た三日月頭の金属人間は見た事あるかい?」
「め、滅相もねえっす!」
顔を青くしてブンブンと首を横に振る。
「んじゃ親分と取引してた連中についてはわかるかい?」
「えーと・・・闇酒運ぶときに何度かそれっぽい連中を見たことがあるっすけど、話すのはポデスさんと、右腕のカーデさんだけで・・・」
「他に何か、役に立ちそうなことはあるかい?」
「えーと・・・わ、わかんないっす」
役に立たんなー。
まあこれまで聞き出せたことだけでも十分か。
後は師匠とアーベルさんに引き渡せばいいんじゃないですか?
「そうだね。あの二人ならもうちょっと色々引き出せるだろ」
「あ、あの・・・俺どうなるんすか?」
フッフッフ、貴様はこれから頭の中身を全て吸い尽くされて生ける屍となるのだ。
さあ、お前の罪を数えろ!
「ひいいいい!?」
「こらこら、あんまり脅かすんじゃないよ」
ぺしぺしと俺の頭を叩くシルヴィアさん。
へーいへい。
まあザレロはともかくザナさんを不安がらせたくはないしな・・・。
三度目か、シルヴィアさんが溜息をついてしゃがみ込み、ザレロと視線の高さを合わせる。
「月並みだけどさ、家族がいるってのはありがたいことなんだよ。
アンタにとってザナちゃんは大切な姉さんだろうし、アンタみたいな馬鹿でも、ザナちゃんにとっては大切な弟なんだ。
あんたも間に合ううちにウチに帰りな。無くしてからわかっても遅すぎるんだよ」
「・・・」
「・・・」
ザレロが俯く。ザナさんも目を伏せた。
しばらくの沈黙。俺やアルテ達を含めて誰も声を発しない。
「あの・・・シルヴィア姐さん。ひとついいっすか・・・姐さんの言う通りにするっす、だから・・・」
「なんだい」
優しい笑みを浮かべるシルヴィアさん。
「ママと呼ばせて下さい!」
ぴしっ、と空気にひびが入る音がした。
俺も、ザナさんも、アルテもカオルくんも愉快な顔で固まっている。
「俺をそんな風に叱ってくれた人は今までいなかったんす!
姉ちゃんは優しすぎて俺みたいな駄目人間じゃ駄目だったんす!
お願いっすよ、ママ!」
シルヴィアさんが無言でザレロを殴り倒した。
ちなみに第三章のアイデアは古い時代劇「松平長七郎」シリーズからのイタダキです。
内容は余り覚えてないんですが、偽の金山株とまじめな姉、遊び人の弟というシチュだけは共通してます。
ナガリ第七長坑道=松平長七郎長頼なわけですな。