異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第三十二話 最後の望み

「クソがっ!」

 

 ぎぃんっ、と甲高い音。

 シルヴィアさんの曲刀が、ウルヴァさんの胸を貫くオブジェ人間の腕を叩き斬った音だ。

 

「ロケットパンチ!」

 

 火を吹いて飛んだ鉄拳が金属の胴体を打ち砕く。

 

「シルヴィア嬢! ポーションを!」

 

 顔色を変えたラファエルさんがウルヴァさんに駈け寄る。

 抱き起こされたウルヴァさんが手を上げ、ポーションの瓶を取り出したシルヴィアさんを止めた。

 

「む、無理だ。心臓を・・・貫かれている」

「・・・!」

 

 シルヴィアさんの顔がこわばり、手が止まる。

 ウルヴァさんの手から力が抜けた。

 

「支配人! 諦めてはいけませんぞ支配人!」

「・・・」

 

 もはや声も出せないのだろう、ウルヴァさんが何事かを必死で囁く。

 ラファエルさんに向けてのそれだろう声を、ミストヴォルグの高感度センサーはしっかりと捉えていた。

 

「む、娘には・・・この事を・・・秘密に・・・」

 

 その瞬間、思わず声が出ていた。

 

「ウルヴァさん! 娘さんには、あなたは麻薬を止めようとして殺されたと伝えます! いいですね!」

「・・・!」

 

 ウルヴァさんは一瞬目を見開いた後、笑おうとした。

 そしてそのまま事切れる。

 

「支配人・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 ラファエルさんががっくりとうなだれる。

 俺とシルヴィアさんは僅かに黙祷して、この道を踏み外してしまったドワーフを悼んだ。

 

 

 

 死者を悼む時間が終わり、現実が戻ってくる。

 

「それじゃウルヴァさんを・・・」

「彼は置いていくのですぞ。運が良ければ回収できるでしょうですぞ。

 今は支配人の無念を晴らすために、何が重要かを考えるべきですぞ」

 

 遺体を回収しようとした俺を、ラファエルさんの言葉が止めた。

 シルヴィアさんもそれに頷く。

 

「そうだね。体を持ち帰るより、最後の望みを叶えてやった方がこの人も喜ぶだろうさ」

「・・・わかりました」

 

 ブロイザーになって腹の中に入れて飛んでいけば、とも思うが、恐らくそのまま脱出できる可能性は低い。場合によってはブロイザーへの変身を解除せねばならないだろうし、その状況で遺体にこだわっていたら、脱出できる可能性はぐんと低くなる。

 戦いに巻き込まれた遺体が無事でいられる可能性も低いだろう。

 そう考えれば理解は出来る。それ以上は難しいが。

 それでも納得できない部分をぐっと飲み込んで、俺はブロイザーに変身した。

 

 

 

 (かね)が打ち鳴らされる。

 駆け回るドワーフの警備兵、武装したゴロツキどもの上を俺は通り過ぎる。

 透明になり、腹の中にはシルヴィアさんとラファエルさん。

 このまま三日月頭どもに見つからなければ僥倖だが、そうは行かないだろうなあ。

 しかし、さっきは「娘さんには麻薬を止めようとしたと伝える」なんて勝手な事を言ってしまったけど、良かったのかな。

 

「・・・無責任だったでしょうか」

「いや、ハヤトは間違った事はしてないのですぞ。支配人に代わって感謝しますですぞ」

 

 だといいけど・・・

 ふと思う。確かにウルヴァさんのあの傷では、エリクサーならともかくポーションで助かる望みは低かった。

 

 ポーションは多少の質の良し悪しはあるが、魔力を持った特別な薬草を煎じた汁や、そうした液体に治癒の魔法を封じ込めたもの。効果としては通常の負傷治療の魔法とさほど変わりはない。

 そして普通の負傷治療の魔法というのは、ペトロワ師匠のそれに比べると大きく効果が劣る。異次元の島で俺がやられたように、胸に穴が空いたらまず助からない。

 実際あの時にかけて貰ったのは単なる《治癒(ヒール)》ではなく、失われた肉体を復元する《再生(リジェネレイト)》という上位の治療魔法だ。治療魔法を専門とする医神(クーグリ)の高司祭でも早々習得していないレベルのしろもの。

 あの人は恐らくサイモックでも最高レベルの術師なのだ。

 

 対して霊薬(エリクサー)は薬というより使い捨てのマジックアイテムに近い。

 第五元素、エーテルという物質の原質を加工することにより、失われた肉体や血液、果ては精気や精神的活力と言ったものまで再生できる、文字通り奇跡の薬だ。

 心臓を貫かれたウルヴァさんは、そうしたエリクサーか師匠の術がなければやはり死んでいたろう。

 

 だがそれでもワンチャン賭けてみても良かったはずだ。

 今まさに死のうとする人間が、目の前のチャンスに飛びつかないのはどういう事だろう。

 

 多分ウルヴァさんは死にたかったのだ。

 ラファエルさんやゲティさんを見ているとわかるけど、ドワーフというのは基本的に誇り高い種族だ。麻薬を使っていることを内心恥じていたウルヴァさんは、麻薬組織の片棒を担ぐ事に良心の呵責を感じていたろう。

 

 自分の地位や財産を守りたいという意識がなかったとは言えない。

 でもこれまでは岩窟劇場や娘さんに対する義務感から、死を選ぶ事はできなかった。

 そこから解き放たれるチャンスだと感じたかもしれない。

 ただの仮定、いや妄想にしか過ぎないが、俺はもう一度、心のなかでウルヴァさんの冥福を祈った。

 

 

 

 

『スカイ・トーピドーッ!』

 

 Xブロイザー、つまり俺の両肩から発射されたミサイルがオブジェ人間の頭と胴体を叩きつぶした。

 発射されたミサイルは爆発せず、そのまま洞窟の壁に突き刺さってオブジェ人間を壁にはりつけにする。

 ちゃうねん、不発やないねん。元からそう言う武器やねん。

 

 ブロイザー最強の武器、スカイトーピド―。直訳すれば空中魚雷である。

 もっとも魚雷とはいうものの、爆発する事はほとんど無い。

 敵に命中すると爆発せずにそのまま貫通し、結果として敵爆撃ロボが爆散するのである。

 質量弾なのかよおい!

 

 あの後、程なくして俺達はオブジェ人間に包囲された。

 現在強行突破中。

 多分ウルヴァさんが刺された時点で俺たちの事は把握されてたんだろう。

 何かテレパシーみたいなものでもあるのかね、そう言えば師匠とはまだ繋がらないなっ、と!

 

「げっ!?」

 

 武器を撃ちまくり、時には体当たりでオブジェ人間をはじき飛ばして広い場所に出た瞬間、俺も腹の中の二人も絶句した。

 床の上にゾロゾロとたむろっているオブジェ人間。それだけじゃない、壁にも、それなりに高い天井にも鈴なりにオブジェ人間が岩から生えている。

 その数数百体。

 デモゴディにならなければこれだけの敵を相手取るのは難しいが、変身するには狭すぎる――!

 そう覚悟した瞬間。

 

「大丈夫ですぞ。ここはどうやら吾輩の出番のようですぞ」

 

 並々ならぬ決意をその声にたたえて、ラファエルさんが言った。

 

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