異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第二十一話 ヘル・アンド・ヘヴン

 何となくほのぼのした雰囲気の中、アーベルさんが顔色を変えた。

 

「あ、やべ。ハヤト、そいつを担げ! トンズラするぞ!」

「は、はい!」

 

 後で聞いたらヤクザの下っ端がこっちに近づいてくるのに気付いたらしい。

 逃げる途中で殺気だった怒鳴り声がちらっと聞こえたので多分そうだったのだろう。アーベルさんマジパねえ。

 

「俺ら小人妖精(バグシー)は力がない代わりにすばしっこいし、目や耳も鋭いのさ」

 

 走りながらアーベルさん。うんうんとオブライアンさんが頷く。

 

「精霊の力の異常を見つけるために作られた種族とも言われてますね」

 

 妖精はこの世界の管理・・・世界を支える精霊力の循環を管理補助するために《百神》が作った種族だそうだ。エルフとかドワーフとかそれぞれに違った役割があったらしいが、今となってはよくわからない。

 

「エルフなんかは今でもまじめに役割を果たしてるが、俺ら小人妖精(バグシー)は割と早い内にそれを放棄して好き放題やってるからな。

 まあいい加減な種族なのさ」

 

 うん、それはアーベルさんを見てればわかります。

 そんな会話を交わしつつ、俺達は何とか奴らをまいて野営地に逃げ帰った。

 

 

 

「あっ、あっ、あっ、依頼主は商業ギルドの大物で、あっ、あっ、あっ、息のかかった奴を新しく議員にしようとしてて、あっ、あっ、あっ・・・」

 

 ペトロワ師匠の指を額に当てられ、虚ろな目で情報をダダ漏れさせる大男。

 ううっ、トラウマが・・・!

 俺は逃げるようにその場を後にして、時間も迫っていたのでアルテやリタと一緒に奇術ショーの準備を始めた。

 

「切断された美女がハイ元通りー!」

「おおおおおお!」

「これにて午前の部はおしまい、皆さんありがとうございましたー!」

 

 そして一時間ほどの奇術ショーを終えて、お客さんを帰して昼飯に入る。

 話題は当然、俺達が連れ帰ったあの大男のことだった。

 

「大体情報は吐かせたが、こいつどうやら組織の幹部だったらしくての。結構情報を持っておったわい」

 

 まじかい。見るからに脳筋だがまあヤクザだもんな・・・腕っ節が強い奴が上に来るのもおかしな事ではないか。

 

「それで?」

「まあ大体ガイの想像した通りじゃな。商業ギルドの大立て者のフィロバーという男が、ガイの元嫁のカザリーンと結婚したロレントを取り込もうとしておったんじゃが、ロレントがそれをことごとくはねつけての。

 フィロバーの反対派閥がギルド連絡会議の議員にロレントを擁立したんでついに実力行使に出た、というわけじゃ。直接干渉は自分の身も危うくするから、カザリーンというワンクッションを置いて攻撃する事にしたんじゃな」

 

 実際歌の町でトップ歌姫のスキャンダルとなったら、下手するとロレントさん本人のそれ以上にインパクト強いだろうなあ・・・。

 

「選挙の期日は?」

「三日後じゃ。スキャンダル作戦も実際あまり効果は上げていないようでの。今日の夜、ロレント殿が屋敷を留守にするので奥方と娘を誘拐して、直接的に脅迫する事にしておったようじゃ」

 

 なるほど、ぎりぎり間に合ったわけだな。よかったよかった。

 そう言うとシルヴィアさんが首を振った。

 

「確かにこいつによる誘拐は防げたけど、今フィロバーは焦ってるはずだ。

 むしろここから暴発しないかが心配だね」

「万が一こいつが警邏に突き出されて証人になったら、今度は自分の方が危ないしな。まあこう言う連中は警邏や領主にも鼻薬嗅がせてるだろうが」

 

 アーベルさんに加えてラファエルさん、ガイガーさんも頷いた。

 

「じゃあどうするの? あいつらの屋敷を見張るとか?」

「まあそうだね。そのフィロバーと、あのヤクザの屋敷を見張るって事で?」

「それがいいだろうな」

 

 話はそれで終わり、食事を終えた俺達はアーベルさんとオブライアンさんがそれぞれヤクザの屋敷と依頼主のフィロバーの屋敷に。ペトロワ師匠は記憶の吸い出しの続きに。残りの俺達は午後の公演の準備に取りかかった。

 

「~~~~♪」

 

 舞台から座長の歌声が聞こえる。

 この町の人間の耳が肥えているとは言えその歌はさすがで、多くの人が聞き惚れている。

 実際ほんと凄いもん、これ(貧弱な表現力)。

 

「ガイガー! ハヤト! シルヴィア・・・は舞台か、くそ!」

 

 そんなことを考えながら準備をしていたら、舞台袖にペトロワ師匠が走り込んできた。

 珍しく慌てているので何か大ごとか、と思ったら、こっちも珍しいことにガイガーさんが自分から口を開いた。

 

「どうした、ペトロワ」

「ヤクザどもがガイの存在を掴んでおる! 奴を捕まえに手下どもが既に向かっておった!」

「ええ!?」

「どうしてわからなかったんですか?」

「あの馬鹿が素で忘れておったんじゃ! 頭が悪いにも程があるわ!」

 

 頭痛をこらえるような表情で師匠。より正確に言うと女とか、酒とか、バクチとか、そう言う思念で頭の中が一杯で、その中から意味のある記憶を拾い出すのはただでさえ大変とのこと。

 その上件のガイさん襲撃の話は本人もほとんど関心を持たず、忘れていたので記憶の繋がりを辿って拾い上げるのに時間を要したのだそうだ。

 

「どうします? もうすぐシルヴィアさんの出番終わりますよ?」

 

 シルヴィアさんと伴奏のラファエルさんは舞台。アーベルさんとオブライアンさんは見張り。ここにいるのは俺と師匠以外ではアルテ、ガイガーさん、リタだけだ。

 

「・・・」

 

 短く悩んだ後、ペトロワ師匠が矢継ぎ早に指示を下す。

 

「アーベルにはガイの家に走ってもらう。出番を変更して次はリタ。なるべく場をもたせてくれ。オブライアンはこっちに来て水芸をやって貰う。ラファエルにもなるべく場をもたせるように言ってくれ。

 三人はガイの、マデリンの小間物屋に急いでくれ」

「はい!」

 

 声を揃えて返事すると、ペトロワ師匠が俺達に"幻影変装(ディスガイズ)"の術をかける。消費が低いので、この程度なら何とかなるのだそうだ。

 だとしてもオブライアンさんのそれと、アーベルさん、オブライアンさんとの念話の術を同時に維持するとか・・・この人やっぱすげえ魔法使いなんじゃ?

 

 そんなことを考えながらも、俺は忍者ロボ・ミストヴォルグの力を呼び出す。

 今回必要なのは隠密能力ではなく飛行能力だ。

 

「いいですか、しっかり掴まってくださいよ」

「うん!」

「(こくり)」

 

 揃って返事するアルテとガイガーさん。

 かわいい女の子にしがみつかれるのはいいけど、ひげ面のむさいおっさんにしがみつかれるのは精神的に来る・・・! 顔! 顔が近い!

 

「・・・」

 

 アルテの複雑な表情を見るに、多分そんな内心も読み取られているんだろうなあと思いつつ、俺は左手のプロペラを回転させて宙に飛びだした。




美少女とむさいおっさんの天国と地獄――!
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