異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「・・・?」
オブジェ人間たちが戸惑っているように見える。
俺は広間に入って少しのところで高度を下げ、腹からラファエルさんを下ろした。
周囲のオブジェ人間たちもこちらの様子を窺い、攻撃はしてこない。
だがその数は数百。
大広間を埋め尽くす、圧倒的な数の錆銅、ところどころに青銀。
それが床の上だけではなく、壁や天井もびっしりと覆い尽くしている。
何するつもりですか? ここはやっぱり俺が・・・
「まあ見ているのですぞ。ハヤトが優れたエンターテイナーなのは認めますが、だからと言って人の出番を取るのは芸人の仁義にも
考えがあるんだとは思いますけど、この数を相手に?
「なに、芸人としてはこの程度の観客を相手に怯む訳にはいかないのですぞ。
いずれは数千、いや万の客を相手にするだろう大芸人、マガモット・スタロですからな」
・・・。
「実のところ、ウルヴァ支配人には駆け出しの頃から目をかけて頂きましたですぞ。
吾輩が《加護》のことで悩んでいたころにも叱咤やアドバイスを頂きましたですぞ。
『芸人にとって一番大事なのはお客様に喜んで頂くことだ。それを念頭に置けば、自ずから答えは出る』と。
その通りだったのですぞ」
俺は何か言おうとしてそれをやめた。
ラファエルさんの体が僅かに震えていることに気付いたからだ。
「ハヤト」
腹の中のシルヴィアさんが短く俺の名を呼んだ。
わかってますよ。
多分、俺もこう言う時があった。そのたびにまわりのみんなにフォローして貰ってた。
なら、今度は俺がフォローに回る番だってことだ。
ラファエルさんから距離を置き、僅かに高度を上げる。
俺の動きに呼応して錆銅の草原がさざめいた。だがまだ襲っては来ない。
ともかく彼が何をするにせよ、これなら邪魔になることはないだろう。
「ハヤトは耳をふさいでいるのですぞ・・・いや、その姿では難しいやもしれませんが、とにかく吾輩が事を起こしたら、一目散にここを出るのですぞ。
大丈夫、この程度の観客のあしらいなら慣れたものですぞ」
にかっと笑って親指を立てる。
俺は無言で頷き、力を溜めた。
さあ、何をしてくれるんだラファエルさん。
すうっ、とラファエルさんが深呼吸する。
周囲のオブジェ人間の林がざわめく。
風に揺れる木々のような無秩序な動きではない。
一斉に腰を落とし、両手を構える、統率された軍隊の動き。
奴らが動く!
・・・その一瞬前。
「魚屋の、おっさんが! 驚いた!
頭が真っ白になった。
「ぶっ、ぶはははははははは!」
え、何!? もの凄くおかしい! 《加護》を使う精神集中が阻害されるくらいに面白い!
ヘタすると俺が生まれる前のギャグなのに?!
俺の腹の中では、シルヴィアさんが腹を抱えて、文字通り笑い転げている。
「※※※※※※※※※※※※※※!」
「%%%%%%%%%!」
「#######wwwww」
そして、大広間を一杯にする数百のオブジェ人間たちも一斉に大爆笑していた。
俺にはわからないが恐らく笑い声だろう、金属のきしるような音を上げて、身体を震わせ、狂ったようにジタバタしている。
笑いすぎて天井から落ちてくる奴も沢山いた。
何でやねん。
「シェー」
「'&$%&##$%&(&)(&'$%&'$'!」
「}*+}`?{`%&$!?」
ラファエルさんが珍妙なポーズを取ると、再び大爆笑が起こった。
いやありえへんやろ!
ワイのおとんの世代ですら既に懐かしギャグやぞそれ!
昭和ゴジラがやって物議をかもしたレベルやぞ!
こっちの世界とは時間の速さが違うのはわかってるが!
むしろこっちの世界だと500年くらい前のギャグにならない!?
「く、ぷぷっ・・・いや、これが《笑いの加護》さね。
あいつが入ってきたときにいっぺんだけやらせてみたけど・・・やっぱ強烈だわこれ」
笑いを必死でかみ殺すシルヴィアさんが解説してくれた。
な、なるほど・・・こりゃ大ヒット芸人にもなるわ・・・
「まあこれは強すぎるってのもわかるね。芸を腐らせると感じたのも間違いじゃないと思うよ」
強すぎる《加護》に頼り切って、芸そのものをおろそかにすることを恐れたんだな・・・今ならラファエルさんが悩み苦しんだ気持ちもわかるかもしれない。
生まれ持った才能が自分の進むべき道を阻む・・・重い、そして悲しい話だ。
「案ずるより立山やすし!」
「&%$&’}*?`{&%$L+JP!」
このオヤジギャグで色々台無しだけどな!
というか異世界でも知られてるのかよ、立山やすし!
「スタロです・・・売れてた時に『一生スタロのファンです!』と言ってた子を今見ません、死んだんでしょうか?スタロです・・・」
「***********~~~~!」
「¶¶¶¶¶¶¶¶¶wwwww」
「≠≠≠≠≠≠’(&%#「っっっっっっっw」
狂気の宴は続く。
もはやオブジェ人間たちで立ってる奴はおらず、全員死にかけの虫のようにヒクヒク痙攣している。
腹の中のシルヴィアさんも割とヤバい。
俺が何とか正気を保っていられるのは、師匠に施された精神修養の結果か。
だとしたら嫌な意味で役に立ったもんだが。
それとも日本のネタだからだろうか。だとしたら意図的に選んでるんだな。
ちらり、とラファエルさんがこちらを見た。
そうだった、これ俺達を逃がすための時間稼ぎだったんだ!
思い出した俺は足裏のロケットを噴射し、一目散に、大広間の出口の一つを目指して飛んだ。
お呼びでない、お呼びでないねえ・・・こりゃまた失礼致しました!
いかん、俺も汚染されかけてる。
「ガチョーン」
「◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆!!!!!!」
「‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡wwwwwww」
聞こえてくるオヤジギャグと金属音を背中に、俺達はダジャレの国から逃げ出した。
ここは狂ってるんだ、みんなおかしいんだ・・・笑ってよりとも!
>「魚屋の、おっさんが! 驚いた!
志村けんの持ちネタのイメージが強かったのですが、「あのねのね」というグループの歌が元ネタなんですね。
知りませんでした。
>シェー
>案ずるより横山やすし!
>ヒロシです・・・
>こりゃまた失礼致しました!
>ガチョーン
それぞれ赤塚不二雄のイヤミ、デーブ・スペクター、ヒロシ、クレージーキャッツの植木等、同じく谷啓のネタ。
>ダジャレの国
>笑ってよりとも
アーケードゲーム「源平討魔伝」より。
シリアスなゲーム世界のなかでいきなり出てきたダジャレ空間は、当時のゲーマー達に強烈なインパクトを残した。
「かねがね金がねえ」は何気に傑作だと思います(ぉ